| アストンマーティンは幾度ものCEO交代を経て「ようやく」成長路線に |
そしてアストンマーティンにしかできない方法によって成功を目指している
さて、「V12エンジンの未来はあとわずか」と語ったアストンマーティンですが、V12エンジンの(環境規制に対応させるための)改良を行う一方、今後数年間でハイブリッドモデルの拡充と車種ラインアップの拡大を進めるという新しい基本方針を示すことに。
これは同社CEO、エイドリアン・ホールマーク氏が語ったもので、2030年までに同社初の電気自動車(EV)を投入する計画も明らかにしています。※エイドリアン・ホールマーク氏はベントレーを辞し、2023年9月にアストンマーティンのCEOに就任した人物である
「アストンマーティンは大きな可能性を秘めている」
エイドリアン・ホールマーク氏は、アストンマーティンのCEOを受け持つこととなった理由について「素晴らしいブランドであり、大きな可能性を秘めているからだ」と語っていますが、同社が近年展開した製品攻勢については「これほどのラインアップを過去に持ったことはなかったし、夢にも思わなかった」とコメントしています。
そしてこれだけのラインアップの展開が可能となったのは「近年のラグジュアリーカーマーケットの拡大」、それによる(ラグジュアリーブランドである)アストンマーティンの市場機会が飛躍的に増大したため」だと語り、しかし「(今後の)計画は安定的かつ着実なものでなければならない」とも。
つまりは市場の動向を無視した強引な計画、ライバルを正確に捉えたポジショニングなくしては(いかに拡大する市場であっても)成長は難しいということに言及しているのだと思われますが、現在「市場が求める選択肢」としてもっとも支持されている車種のひとつがプラグインハイブリッド(PHEV)。
アストンマーティンはすでに「ヴァルハラ」にてプラグインハイブリッド(PHEV)」の導入を進めていて、さらには他の(メルセデスAMG製のPHEV技術を採用した)PHEVモデルも開発中なのだそう。
こういった流れにつき、エイドリアン・ホールマーク氏は「電動化の道筋は3~5年前ほど明確ではなくなっているが、方向性は確実に電動化に向かっている」と語り、しかしEVへの完全移行には慎重な姿勢を見せ、「2030年までにEVを投入するが、それまではハイブリッドのバリエーションを増やす」と述べていて、あくまでも市場の反応を見ながら電動化を進めてゆくということなのかもしれません(当初の予定だと、2027年に初のEVを投入する予定であったが、それが今回”2030年”へと延期されている)。
このほか、エイドリアン・ホールマーク氏はミドシップスポーツについても言及し、すでに納車が進んでいる「ヴァルキリー」のようなハイパーカーについては「こうしたプロジェクトは7~10年に一度のペースで行うもの」と慎重な姿勢を示し、もしかすると今後「アストンマーティンの新型ミドシップ」を見ることが当分できないであろうことも予想させますが、ヴァルキリー、そしてヴァルハラ、さらには(キャンセルされた)ミドシップ版ヴァンキッシュは前々CEOであるアンディ・パーマー氏の時代に企画されたものなので、今は社内におけるミドシップの捉え方が変わってきているのだろうと思われます(かつてのアストンマーティンは「フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンに対抗しよう」としていたが、現在のアストンマーティンは「自社にしかない美点と強みを活かして独自の方向性を強化する」方針である)。
そしてアストンマーティン初のSUV、「DBX」については「まず認知度を向上させるべき」とし、今後数年間で積極的な商品改良を行うことを示しつつ「ラグジュアリー市場の52%はSUVであり、アストンマーティンもこの市場で成功する必要がある」と述べることに。
加えて今回語られたのは「少ない販売台数でも利益を出せること」。
現在、アストンマーティンの年間販売台数は6,000台程度で、フェラーリ(約1万3000台)やランボルギーニ(約1万台)に大きく遅れを取っていますが、しかしエイドリアン・ホールマークCEOは「販売台数ではなく、利益率の向上が重要である」と強調し、「フェラーリはかつて7000台の販売で高い収益を上げていた。アストンマーティンもそのレベルに到達する必要があるが、1万3000台までを販売する必要はない」と語り、今後は、車両のバリエーションやオプションの拡充を進め、利益率の向上を目指す計画についても触れています。
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参照:Autocar