■そのほか自動車関連/ネタなど

フェラーリ、ポルシェ、アストンマーティン、トヨタ、テスラ、フォード、GM、BYD、NIO・・・。自動車メーカーの株価はこの1年でどういった理由でどう推移したのか?

フェラーリ

| ハッキリ言えば、この1年では「フェラーリの一人勝ち」、そしてポテンシャルを感じさせるのはテスラである |

一方、フォードやトヨタ、フォルクスワーゲンなど「既存」自動車メーカーの未来は明るくない

さて、現在自動車メーカー各車は「この激動の時代」において様々な戦略を採用していますが、その戦略の相違そして結果は企業の業績、ひいては「株価」といった形に現れます。

そこで今回、いくつかの自動車メーカーの株価(この1年)を見てみたいと思いますが、まずは「フェラーリ」。

見ての通りこの1年で大きく株価を上げており(65.07%)、これは「製品の魅力と希少性を向上させ、かつ単価を上げていること」、「オプション(テーラーメイド)装着率を引き上げることで車両1台あたりの利益を増加させていること」、「販売台数は増加しているものの、販売台数を増やさなくても利益を増加させることができるようになったこと」、「車種あたりの生産台数を抑えることで希少性を担保できるようになったこと」など、様々な要因が考えられます。

そしてその要因は「フェラーリの計画通り」でもあり、経営が順調であることを株価が示しているのだとも考えられます。

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フェラーリ
フェラーリが2024年第2四半期の業績を発表、販売台数2.7%増に加え主要な数値は2桁増。なおSF90ストラダーレと812GTSの生産終了、ローマが生産終了間際であることにも言及

| フェラーリの「1台あたり利益」は大幅に上昇、デイトナSP3や499Pモデイフィカータの販売が利益を押し上げる | さらには1台あたりのオプション装着金額の向上もフェラーリの好調な決算を支えることに ...

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そのほかの自動車メーカーの株価はこんな動きを見せている

そして次はテスラ。

EV販売においては世界中でそのシェアを失っているものの、「AI」「ロボット(オプティマス)」「ロボタクシー」「自律運転」へと収益の柱を移行させつつあり、新しい事業での収益獲得、そしてすでに販売したクルマへの自動運転ソフトのオプション販売といった可能性、さらに中国での自律運転機能解禁といった明るい材料が揃っていて、世間で広く報じられる「テスラはもう終わり」といった論調とは一致しない動きを見せています(多くの人はテスラに反感を抱き、よって破滅してほしいという願望を抱いている)。

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そしてこちらはフォード。

一時期は利益率の高いトラック/SUVの好調、EVの展開計画が交換され大きく株価が上昇したものの、「EV重視戦略の誤り」を発表した後に株価が大きく下落することに(市場は修正戦略と対策を評価しておらず、この動きを見るに、テスラにかける期待のほうがはるかに大きい、加えてフォードは品質問題にも直面している)。

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フォード「EVの販売1台あたりの赤字はさらに大きくなっている」。そのためフォードはEV製造を縮小しEV関連投資を縮小すると発表
フォードの2024年第2四半期は膨大な数のリコールに悩まされ利益が下がる。投資家からは「期待外れの業績」と判断されて売りが殺到、株価が11%も下落

フォード | フォードはEVの販売不振に加えてブロンコはじめ主力モデルのリコールに悩まされる | 品質問題は一過性のものではなく、管理体制を改めねばこのまま尾を引くことになるだろう さて、先日はフォー ...

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一方でGMは比較的堅調でもあり、こちらはフォードとは逆に「方針の転換」が評価されたのかもしれませんね。

こうやって見ると、(米株式市場では)明確な戦略の表示、そしてそれを実行する推進力、もちろん計画通りの結果を出すという要素が重視されているように思います。

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「当初立てたEVの販売計画達成は無理」と正直に発表したGM。ガソリンエンジンへの継続投資に言及し「EVを買ってください」から「ガソリンもあって選択肢が豊富ですよ」へ
「当初立てたEVの販売計画達成は無理」と正直に発表したGM。ガソリンエンジンへの継続投資に言及し「EVを買ってください」から「ガソリンもあって選択肢が豊富ですよ」へ

Image:Chevrolet | ほかの自動車メーカー同様、「EVを買ってください」から「消費者が自由に選べる選択肢を揃える」方向へ | 結局のところ、お金を支払って製品を購入するのは消費者であり、 ...

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そしてこちらは最近何かと不調が報じられるステランティス。

現在の不調を解決するための策はなく、「取引高の増加とともに株価が下がっている」ところを見ると、投資家は「絶望売り」を行っていることが想像できます。

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トヨタは今年春に「一人勝ち」が報じられ大きく株価が上昇するも、中国市場でのシェア減少、そして同市場での有効な対策が見つからず、現在は「低迷」状態にあると言えそうですね。※品質問題も大きく影響しているものと思われる

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トヨタ
日本の自動車メーカーは現在の「EV販売減速」を見越していた?トヨタ、日産、ホンダ、スバル、マツダともに「電動化の波に乗れなかったのではなく、波を見極めていた」

| 様々な事情を総合するに、日本の自動車メーカーは実際に現在の自動車市場の動向を予想していたと考えていいだろう | 日本の経営者は「バブル崩壊」の教訓をしっかり経営に活かしているのかもしれない さて、 ...

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ホンダもトヨタ同様の動きとなっていて、しかしちょっと「マイルド」。※ホンダは「売り」「買い」ともに材料に乏しい

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スバルの動きも同様ですが、スバルは「(積極的に進めていなかったので)電動化戦略の失敗」「(中国への依存度が低いので)中国市場での存在感喪失」といったマイナス材料がないはずですが、直近の「下げ」はトヨタのとばっちりなのかもしれません。

なお、こうやって見ると日本の自動車メーカーは「業績」「戦略」に関係なく同じ動きをしていることがわかると思いますが、これは日本の株式市場が「ダウ」「為替」に左右されやすいということを同時に示唆しており、つまり「NYが上がれば次の日に日経平均も上がり」「NYが下がれば次の日に日経平均が下がり」「日本の金利が上がれば(円高になるので)日経平均が下がり」「日本の金利が下がれば(円安になるので)日経平均が上がる」というセオリー通りの動きを見せていること、そして「個別銘柄を見て評価するのではなく、市場の流れによって企業の株価が左右される(企業の主体性があまり評価されない)」ということをも意味していて、これが「ぼくが日本株に手を出さない(個別銘柄の業績が株価に大きく反映される米国市場に比べて面白くないと考える)」理由となっています。

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そしてこちらはポルシェ(AG)。

直近で「電動化戦略が思うように機能していないこと」「中国市場での失速」が報じられ、それによる株価の低迷が顕著ですが、現在の株価は株式公開(IPO)時よりも低く、これは「上場以来8倍くらいにまで株価が上がった」フェラーリとは対照的です。※直近で大きく跳ねている理由は不明

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ポルシェが2024年第2四半期の業績を発表。「サプライチェーンの問題によって見通しを下方修正」「このまま中国の不振が続けば中国向けに内燃機関搭載モデルを投入」
ポルシェが2024年第2四半期の業績を発表。「サプライチェーンの問題によって見通しを下方修正」「このまま中国の不振が続けば中国向けに内燃機関搭載モデルを投入」

Image:Porsche | ポルシェはなんとか明るい面を見せようと務めているが、実際のところは「まだまだ暗闇の中」だと思われる | これまでの成長を牽引してきた中国市場の失速、そしてポルシェの未来 ...

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こちらは親会社のフォルクスワーゲンAG。

やはり業績不振が報じられていますが、そこまで株価が(意外なことに)下がっていないという印象です(直近での取引がかなり活発)。

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どうしてこんなことに・・・。VWの販売が「工場2つ分」落ち込み、幹部が「回復するには1年、あるいは2年が必要」と語る。さらには「EVの需要がまったくない」とも
どうしてこんなことに・・・。VWの販売が「工場2つ分」落ち込み、幹部が「回復するには1年、あるいは2年が必要」と語る。さらには「EVの需要がまったくない」とも

| 現代ほど「戦略」が販売を左右する時代はなく、VWはその戦略を誤ったと考えていい | すでにガソリン車の開発をほぼ停止していただけに、直近で販売を回復させることが可能な「持ち駒」も存在しない さて、 ...

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こちらはアストンマーティン。

F1での好調、それを受けての販売伸長、積極的なニューモデル投入など「明るい材料」がかなりあるものの、意外と伸びないという印象ですね。

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アストンマーティンは急速にモータースポーツ寄りの姿勢を強め、市販車との関連性も深める。ある意味では「もっともフェラーリに近い」存在に
アストンマーティンは急速にモータースポーツ寄りの姿勢を強め、市販車との関連性も深める。ある意味では「もっともフェラーリに近い」存在に

Astonmartin | モータースポーツ活動を通じてより優れたクルマを作り、モータースポーツでの成果を最大のプロモーションとするところもフェラーリとよく似ている | ここまで急速に回復し、かつイメ ...

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中国の自動車メーカーはこういった株価の動きを見せている

そして中国の自動車メーカーの株価を見てみると、こちらはジーカー。

上場からずっと株価が下がり続け、しかし直近では取引が活発化するとともに株価が上がっています(投入モデルの増加、市場拡大が好感されたものと思われる)。

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中国Zeekr(ジーカー)が人気サルーン「007」の発売から1年も経たないうちに大型アップグレード実施、「世界で最も速く充電できるEV」へ。これぞチャイナスピード
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NIOも直近では株価が上昇しており、様々な市場において存在感を強めつつあることが好感されたものだと思われますが、中国政府が国策として「さらに」EVの生産と販売を強化するのではという報道が(この2週間ほど)ウォールストリートを活気づけており、「勝ち組」に入るであろう中国の自動車メーカーへの注目が集まっています。

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まさに悪夢の連鎖?アウディが中国NIOに工場売却を検討との報道。「中国車進出でEV売れず→収支改善のため工場売却→中国メーカーが購入→さらに中国メーカーが欧州で存在感強化」
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| 「現金が必要」であることは理解できるが、アウディとしてはこの判断によって自分の首を絞める事になるかもしれない | それでも「他に道がない」のが現在の状況である さて、現在自動車業界は激動の時代を迎 ...

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直近で大きく株価が上がっているのはBYDも同様ですが、BYDは他とは異なって「継続して」上昇傾向にあり、やはり中国の自動車メーカーの中では頭一つ抜けた存在だと考えて良いかと思います(そう考えると、いちはやくBYDに目をつけたウォーレン・バフェットはさすがである)。

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