>ジャガー

ジャガー「これからは大胆不敵なデザインにて、富裕層のみを狙う」。なぜジャガーは英国有数の高級車ブランドであったのに輝きを失うことになってしまったのか

2023/07/28

ジャガー

| 最大の原因はフォードに買収された後、コモディティ化してしまったからだと考える |

フォードは「ジャガーのブランド価値を単に利用し、ジャガーらしくないクルマ」を作ってしまった

さて、名門でありながらもその輝きを失ってしまったと言われる現代のジャガー。

今回、投資家に向けて行った説明が一般にも報じられており、その内容に注目が集まっています。

そして注目を集めた理由というのは”大胆なブランドシフト”を打ち出したからで、その新しい方向性とは「排他性を持つデザインをもって、主にアメリカの富裕層をターゲットにする」。

なぜ現代のジャガーはここまで存在感を失ったのか?

ジャガーは1922年に設立された老舗自動車メーカーであり(つまり昨年は100周年だった)、設立者のひとりであるウィリアム・ライオンズは「いかに高価であっても、美しい製品であれば必ず消費者は買い求める」という信念を持っていたと言われます。

実際のところ、その美しいスタイリングと高性能を融合させたことで大きな人気を博しますが、1967年のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)との合併によって(BMCに引っ張られる形で)品質が大きく下がってしまい、さらにはオイルショックの影響もあって販売が大きく減ってしまうことに。

jaguar10

その後もなんとか立て直しを図りつつ、XJSなどヒット商品を飛ばすものの、1989年にはフォードに買収されることになり、ここで大きな転機を迎えます。

なお、アメリカの自動車メーカーは(欧州では専業メーカーが多いのに対し)多角的なブランド展開、そしてフルラインアップ化を行う傾向が強く、欧州の自動車メーカーとは明確な差異があるというのがぼくの認識(現在は自動車メーカーもグローバル化し、そういった地域特性は見られなくなっているが)。

そして当時のアメリカの自動車メーカーが行っていたのが「歴史のある欧州の自動車メーカーを買収し、そのブランドバリューをもって”ブランドビジネス”を行う」こと。

つまり買収したブランドの”価値”のみを利用することを目的とし、フォードやGM、クライスラーの既存モデルとの共通性を高めてコストを下げ、しかし高いブランド価値を背景とした高額なプライス設定によって利益を最大化するわけですが、このあたりは「技術の移転や獲得を目的に買収を行っていた当時の欧州の自動車メーカー」とも少し性質が異なるところですね(もちろん、すべての欧州の自動車メーカーがそうではない)。

ランボルギーニの黒歴史!クライスラー時代に「ランボルギーニの名を使用した、カウンタックっぽいカラーリングのOEM小型車」が企画されていた

| どうやら前クライスラーCEO、リー・アイアコッカが本気で考えていたらしい | 自動車史に残るカーガイの一人、前GM副会長のボブ・ラッツ氏。同氏はBMW、フォード、クライスラー、GMと渡り歩いていま ...

続きを見る

かくしてフォード傘下となったジャガー、ボルボ、アストンマーティンはフォードとのパーツ共通化が進められ(当時のアストンマーティンのキーはボルボと共通であり、表面のシートを剥がすとボルボのエンブレムが露出した)、ジャガーに関しては極端なコモディティ化が進みます。

その後2008年には現在の親会社であるインドのタタへと売却され、しかしコモディティ化してしまったイメージを払拭することは難しく、設立当初の「いかに高価であっても、美しい製品であれば必ず消費者は買い求める」という信念を失ってしまったフォード時代から凋落が始まっていたのかもしれません。

jaguar19

現在のジャガーは状況を正しく認識

そして現在のジャガーはランドローバーともども大きく変革する計画を持っており、そこで上述の「排他的デザインをもって富裕層をターゲットする」という方針が打ち出されることになりますが、これは創業当初の初心に立ち返ったコンセプトだと言えるかもしれません。

ジャガー・ランドローバーが社名を変更し「ディフェンダー」「ディスカバリー」「レンジローバー」「ジャガー」を独立したブランドへ!順電動レンジローバーは今年にも受注開始
ジャガー・ランドローバーが社名を変更し「ディフェンダー」「ディスカバリー」「レンジローバー」「ジャガー」を独立したブランドへ!純電動レンジローバーは今年にも受注開始

| これまではその方向性が揺れ動いていたジャガー・ランドローバーだったが | ここへ来てようやくその明確な方向性が固まったようだ ジャガー・ランドローバー(JLR)が、今後数年間にわたる中期計画「Re ...

続きを見る

ジャガー・ランドローバーの新CEOであるエイドリアン・マーデル氏、そしてチーフデザイナーのジェリー・マクガバン氏は投資家向けの説明会にて「名門でありながら苦境に立たされているジャガーが直面する問題、そして大きな挑戦」について語り合ったといい、「問題」についてはフォード、さらにはタタのもとでの過去20年間、ジャガーが台数を追い求める戦略をとってきたため(しかし結果的にはブランド価値を損ない、他社との差別化ができなくなって販売台数を失ってしまった)、富裕層との接点を失ってきたことを挙げています。

jaguar9

そしてエイドリアン・マーデルCEOが語ったのが「アメリカだけでも2000万人の億万長者がいる。だから、より少ない台数でより高い価格のポジショニングを狙うことは、今日のジャガーにとって絶対に正しいポジションなのです。ブランド・エクイティを構築するために多くのやるべき仕事が待っています」と述べ、ジェリー・マクガバン氏は「富裕層に衝撃を与え、再び関心を持たせるために考案された大胆不敵なデザインが必要になるだろう」ともコメント。

現時点ではジャガーがどう変わるのかはわかりませんが(ぼくとしては過去の丸目4灯デザインを復活させてほしい)、今年後半には(すでに開発を進めていた)3種類の新型電気自動車のうち最初の1台を発表する予定だといい、これは最大航続距離700kmという実用性を持つドアGTとなるもよう。

さらにはこれに2台のEVが続き、いずれも同じ新しいJEA(ジャガー・エレクトリック・アーキテクチャー)プラットフォームをベースとして製造され、少なくともそのうちの1台はベントレーの顧客を獲得するだけの高級さを持つ、と見られています。

あわせて読みたい、ジャガー関連投稿

関西初公開!新型ランドローバー・ディフェンダー「90」を見てきた
ジャガー・ランドローバーが「解雇されたツイッターの社員を雇う」べく専用求人サイトを開設!「大手テック企業から解雇された人々は我々に必要なスキルを持っている」

| たしかに、これは優秀な人材を雇い入れるいいチャンスかもしれない | もしかすると他の自動車メーカーもこの流れに追従しそう さて、イーロン・マスク氏はツイッターを買収した後に従業員の大量解雇を行って ...

続きを見る

no image
ジャガーが「J-Type」の商標を出願!F-Type後継と見られるがパワートレインやスペック、パッケージングは一切不明。なお社内コードネームは「ジェニファー」

| もしもガソリンエンジン搭載ならば、EUにおける販売禁止までのタイムリミットが刻々と近づいている | なにもしなければこのままジャガーは衰退してしまうことになりそうだ さて、ジャガー・ランドローバー ...

続きを見る

新しく生まれ変わることになるジャガー。まずは純電動4ドアGTを発売し、その後に2台のEVを追加すると発表。ラグジュアリーブランドとしての再生に向け動き始める
新しく生まれ変わることになるジャガー。まずは純電動4ドアGTを発売し、その後に2台のEVを追加すると発表。ラグジュアリーブランドとしての再生に向け動き始める

| 英国の名門ブランドだけに、このまま「消え去る」ことだけは絶対に避けてほしい | 親会社のタタの豊富な資金力に期待、高級ブランドとしての再生に期待 さて、ジャガー・ランドローバーは新しい戦略「リイマ ...

続きを見る

参照:Auto News Europe

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->ジャガー
-, , , , ,