| どうやら前クライスラーCEO、リー・アイアコッカが本気で考えていたらしい |
自動車史に残るカーガイの一人、前GM副会長のボブ・ラッツ氏。
同氏はBMW、フォード、クライスラー、GMと渡り歩いていますが、ダッジ・ヴァイパー、プリマス・プロウラーを世に送り出し、さらにはカマロを「レトロ」路線にスイッチさせてヒットさせたという実績を持つ人物。
コンパクトカーやセダン、SUVといった「数が出るクルマ」よりも、マニア受けするスポーツカーの開発に長けており、それらをもって話題をつくり、ブランド価値を向上させることを得意とした人物でもあります。
最近だと、シボレー・コルベットについて「ミドシップよりもSUVにしたほうがいい」と発言し世間を驚かせましたが、実際のところアメリカンマッスルやスポーツカーのオーナーが続々「ハイパフォーマンスSUVに乗り換えている」という事実が明らかになり、この発言は的を射たものであったことも判明しています。
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ランボルギーニはクライスラーの傘下にあったことも
そんな独特の視点を持つボブ・ラッツ氏ですが、今回はRoad & Trackに対して業界裏話を披露。
そしてこの裏話とは、「あやうくランボルギーニが大衆セダンやコンパクトカーになりそうだった」というものです。
ランボルギーニは現在アウディ傘下にあるものの、そこに至るまでは頻繁に親会社が変わり、(設立社のフェルッチョ・ランボルギーニ以降)6つの経営元を転々としています。
そしてその4番目がクライスラーで、1987年~1993年までクライスラーによって運営されることに。
クライスラーはランボルギーニに対して強い影響力を持っていた
クライスラー時代に発売した唯一のランボルギーニが「ディアブロ」ですが、このディアブロは当初のデザイン(マルチェロ・ガンディーニ案)からクライスラーの意向を反映して大きく変更されたと言われています。
加えて、ダッジ・バイパーの設計にあたっては、そのV10エンジンはランボルギーニが再設計を行い、足回りもランボルギーニがセッティングを手掛けたもの。
つまり、クライスラーとランボルギーニはかなり密接な関係にあったというか、クライスラーがランボルギーニに対して大きな影響力を持っていた、と言えますね。
そして、所有期間内に発売されたのが1車種のみで、ほかのクルマは企画されていなかったところを見ると、クライスラーはランボルギーニを再建するよりも、ランボルギーニのネームバリューを利用したビジネス、そしてランボルギーニの開発リソース(の吸収)に魅力を感じていたのかもしれません。
クライスラーはランボルギーニブランドの小型車を発売しようと計画していた
そこで登場するのがクライスラー会長、リー・アイアコッカ氏。
同氏はフォードを電撃解雇された後にクライスラーへと1978年に社長として移籍し、翌1979年には会長に。
同氏の功績としては、「大きなクルマ」ばかりを開発していたそれまでの方向性から(景気後退、原油価格高騰によってクルマが売れにくくなっていた)、「比較的コンパクトなFF車」へとシフトチェンジし、大きな成功を収めたこと。
これらのコンパクトカーは「Kカー」と呼ばれますが、もちろん軽自動車のことではなく、コンパクトカー用に新開発した「Kプラットフォーム」「Kエンジン」を搭載した一連のクルマの名称。※クライスラーによる解説はこちら
プリムス・リライアント、ダッジ・アリエス、ダッジ400、はてはミニバンのプリウス・ボイジャー、スポーツクーペのクライスラー・レーザーといったところがKカーの系譜となります。
そしてRoad & Trackによれば、アイアコッカ氏は、1990年代はじめにクライスラー・インペリアルを「ランボルギーニ」ブランドから発売しようと考えていたようで、明るいレッドにペイントされて車高が落とされ、ゴールドのホイール、タンレザー内装を持つ”カウンタックっぽい”プロトタイプが作成された、とのこと(まさに一番上の画像のクルマそのもの。リボルバー=ブラボーホイールまで装着されている)。
幸いにしてこの計画は成し遂げられず、そのまま1993年にランボルギーニは売却されることになりますが、もしこの「ランボルギーニ・インペリアル」が実現していたとしたら、ランボルギーニのブランド価値は暴落し、その後の買い手がつかなかったかもしれませんね。
誰もが一度は高いブランド価値を利用したビジネスを考える
なお、アイアコッカ氏のこういったアイデアを責めることはできず、というのも前フェラーリ会長、セルジオ・マルキオンネ氏も、フェラーリ会長に就任する前にこう語っているから。
「自分がフェラーリの経営者だったら、フェラーリブランドを活用して小型車を売るね。そうだ、ブランド名は”フェラリーナ”あたりはどうだろう」。
VIA: Road & Track