| こればっかりは各社の戦略に依存するものであり、どの手法が良い悪いという問題ではない |
ただしBMWの言い分もよく理解はできる
さて、BMWとメルセデス・ベンツ、アウディの3社は「ジャーマンスリー」と称されますが、その中でもとくにメルセデス・ベンツとBMWは(デザイン、パフォーマンス、ラグジュアリー性などの)性質が近く、よって競合する場面も多かったかと思います。
ただ、これから両者が電動化への道を進むに際してはちょっと方向性に差が出ていて、というのもメルセデス・ベンツはピュアエレクトリックカーを「EQ」ブランドにて展開しており、ここから発売するクルマはガソリン車とは根本的に異なるデザインを採用しているためで、たとえばガソリンエンジン版のEクラスと、そのエレクトリック版のEQEとでは完全にデザインが異なるわけですね(プラットフォームそのものも異なる)。
ただしBMWは「ガソリンとディーゼルを分けることはしない」
一方、BMWはというとガソリン車とEVとのデザインを分けておらず、たとえば4シリーズとi4、7シリーズとi7、5シリーズとi5は基本的に(多少の相違はあれど)同じデザインを採用しています。
そして今回、これについてBMWのデザイン責任者であるドマゴイ・デュケック氏が(コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステのメディア・ラウンドテーブルで)「なぜ電気自動車だからといって見た目が変わらなければならないのでしょう?私は同じ人間です。同じ経験をしたい。同じ人生を歩んでいく。すべてがまったく違うものになるのは嫌なんだ。もし違うものになるなら、それはみんなにとって意味があるから違うものになる。ディーゼルエンジン搭載車とガソリン車とを違うデザインにする会社はないのに、なぜEVになると特別なデザインにしたがるんでしょうね」とコメント。
参考までに、BMWは電気自動車専用サブブランドとして「i」を持っており、ここからはi3、i8(PHEV)、iXを発売しており、これらはいずれも専用のデザインが与えられるものの、この3モデルに対応するガソリン車は存在しておらず、よってこれらは「例外でありながらも例外ではない」とも考えられます。
ちなみにアルファロメオのデザイナーも「EVだからといって特別なデザインを採用する必要はない」ともコメントしていて、BMW寄りの考えを示しています(ただしその意図は少し異なる)。
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持続可能性をスタイル的な妥協とする必要はない
そしてドマゴイ・デュケック氏は「電動化はデザインの自由度に実質的な影響を与えない」と述べており、つまり電動化車両だからといって無理に専用デザインを採用する必要はないと考えて居ると見え、メルセデス・ベンツの方法だと「顧客に対し、ガソリンエンジン搭載のSクラスか、EVのEQSかの選択を迫っている」とも指摘。
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一方でBMWだと「5シリーズ」がまず存在し、顧客はパワートレーンについてガソリンエンジンか、それともPHEVか、はたまたEVかを選択できるようになっていて、つまりは顧客の選択肢を広げている、とも述べています。
このあたりの考え方は見る角度によって全く異なる意味を持つことになり、たとえばメルセデス。ベンツEQSやEQEは「EVのメリットをフルに活かしている」と考えることができ、つまりEVはガソリンエンジン、トランスミッション、トルクチューブやエキゾーストシステムを持つ必要がなく、よって(EV専用設計とする場合)車体の構成をかなり自由に組めることが可能です。
最たる例としては「Aピラーの付け根」を挙げることができ、これはガソリンエンジンだとフロントバルクヘッドの位置に左右されることになるのですが、ガソリン車だとフロントバルクヘッドの位置が(エンジン搭載位置の関係で)おおよそ決まってしまうものの、EVだとフロントバルクヘッドを(エンジンがないので)ガソリン車よりもずっと前に設定することが可能です。
これによって(EV専用設計だと)室内空間をガソリン車よりも広く取ることが可能となっていて、EQEやEQSはそのメリットを最大限に生かしており、これは(同じくEV専用設計となる)アウディQ4 e-tornでも同じこと。
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その一方でBMWではガソリン車と車体を共有することで「EVにしかできないこと」を実現する機会を失っているとも考えられ、逆にメルセデス・ベンツやアウディからBMWを見ると「なぜEVなのにガソリン車とプラットフォームを共有し、みすみすチャンスを見逃すのか」と考えているのかもしれません。
ただ、BMWとてフロントをムダにしているわけではなく、冷却に必要なユニットやインバーターなどをそこへ詰め込むことで他の空間を広く使えるようにしているといい、よってEVと内燃機関車とで「プラットフォームを分ける、分けない」はそれぞれの戦略次第ということになるのかもしれません(もちろんコスト的な問題もある)。※BMWもじきEV専用プラットフォームを採用した「ノイエクラッセ」をデビューさせることになる
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参照:InsideEVs