| ポルシェはEV偏重戦略を転換し、マルチパワートレーン戦略を展開するようだ |
V8ツインターボエンジンは環境規制に対応すべく今後も進化してゆくことに
さて、ポルシェは先に行った決算発表にて「ガソリン、ハイブリッド、ピュアエレクトリック」という3つのパワートレーンに分散し注力してゆくというコメントを発していますが、それは「思ったほどEVの需要が強くないから」、そして何より「EV販売のメイン市場であった中国市場で(ポルシェの)EVが売れなくなったから」。
そして今回報じられているのが「カイエンにおいては2030年まで、そしてそれ以降もV8エンジンが継続される」という正式発表で、これは多くの人にとっての朗報かと思います。
なお、ポルシェは今年後半にも第四世代となる新型カイエンを発表する見込みですが、こちらは既報の通り「ピュアエレクトリック」となり、しかしV8エンジンが継続されるのは既存の第三世代のカイエンであり、つまりポルシェは「第三世代のガソリン版カイエンと、第四世代のエレクトリック版カイエンを併売する」ということに。
現在のポルシェは「リスクヘッジ」を考えている
この手法はマカン、そして718ボクスター / ケイマンにおいても採用されるはずであった手法ですが、マカンと718ケイマン / ボクスターはサイバーセキュリティ法に対応できずに欧州市場では販売が終了しています(他の市場においても2025年には販売が終了の見込み)。
ガソリンエンジン搭載版マカンはカイエンと1、2を争う人気モデルであったものの、これの(欧州での)廃止が決まったのは「サイバーセキュリティ法に対応させるには(プラットフォームが古いので)コストが掛かりすぎる」という理由から。
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一方のカイエンであればマカンよりも基本設計年次が新しく、このサイバーセキュリティ法に対応が可能なうえ、2024年はポルシェが「フルモデルチェンジに匹敵する、ポルシェ史上最大規模」というほどの大幅改良を施しているために今後数年間は問題なく販売できるものと思われ、さらにポルシェはこう語ります。
「現在のカイエンはさらに開発が継続され、それは特にツッフェンハウゼンで製造されるV8を中心にパワートレインに重点が置かれることになりますが、広範囲にわたる技術的対策により、ツインターボ エンジンは将来の法的要件に準拠できるようになります。カイエンは常にこのセグメントのスポーツカーを定義してきました。2020年代年半ばには、第4世代のカイエンが電動SUVとしてこのセグメントの新しい標準を確立します。同時に、次の10年間も、お客様は強力で効率的な内燃機関およびハイブリッドモデルという、幅広い選択肢から自身のカイエン選ぶことができます。」
ポルシェ AG CEO、オリバー・ブルーメ
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上述の通り、ポルシェは「ガソリン、ハイブリッド、ピュアエレクトリック」というマルチパワートレーン戦略を推し進めてゆくこととなり、現時点、そして将来にわたり”世界の立法者が何を投げかけても対応できる準備ができている”とコメント。
新型カイエンの基盤となる800ボルトアーキテクチャは、2024年型マカンEV(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック、略してPPE)の基盤となるものと同じではありますが、ポルシェの研究開発を率いるマイケル・シュタイナー氏によると、さらに開発が進められ、「最新技術を統合し、カイエンをさまざまな点でまったく新しいレベルに引き上げる」。
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さらにポルシェは、EVを開発している他のすべての自動車メーカーと同様に、運転体験だけでなく、「大容量で安定した充電、高効率、高レベルの快適性と日常的な使いやすさ」にも特に重点を置くことを約束しています。
そしてもちろん、内燃機関においても高い環境性能をクリアすることでユーロ7が定める規制を満たし、今後暫くの間はぼくらを楽しませてくれることになりそうですね。
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