| やはり性急すぎるEVシフトは数々の歪みを生み出したようだ |
ポルシェは今回の問題にて政治家と深く関わっているだけにその予想は正しいものと考えられる
さて、ポルシェCFO、ルッツ・メシュケ氏が「内燃機関(ガソリン / ディーゼルエンジン)の将来は主張されているほど暗くないかもしれない。内燃機関の廃止について現在多くの議論が行われており、これが遅れる可能性がある」とコメント。
これは先日シンガポールで行われた新型マカンの発表イベントの際にカーメディアに対して語った内容だとされています。
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実際のところ、「2035年の内燃機関禁止」は延長もしくは撤廃される可能性が高いだろう
なお、ぼくは実際にルッツ・メシュケ氏の言う通りになる可能性が高いだろうと考えており、現実的にユーロ7の導入内容がすでに「緩和」ずみ。
これに関しては様々な背景があるかと思いますが、「ユーロ7に対応するためには多大なコストがかかり、となると自動車が高額になってしまい、となると自動車が売れずに自動車メーカーの業績が悪化し、裾野の広いこの分野にて大量の失業者が出る」こと、そしてそれを覚悟で(本来予定されていた)ユーロ7の基準を導入してもリスク分のリターンが得られないということが大きな理由ではないかと考えています。
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EUが「ユーロ7導入内容を緩和」。事実上は自動車メーカーの要求を聞き入れた形となるものの、現在の自動車メーカーは頻繁に行われる規制変更に翻弄されることに
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そしてこれは今回話題となった「2035年の内燃機関禁止」についても同様で、すでに「カーボンニュートラルな燃料で走行することを条件に、内燃機関を搭載した車両の販売を許可する」といった草案も提出済み。
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EUの「2035年以降は内燃機関販売禁止」が覆りそうだ!合成燃料の使用を前提として内燃機関の販売を許可する草案が提出、審議に入りガソリン車販売延長容認か
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つまり、もともとの案では「ハイブリッドでもPHEVでもレンジエクステンダーでも水素でも合成燃料(Eフューエル)でもなんでも”燃やす”機関を積んでいればアウト」であったものが、「水素や合成燃料については継続販売を認める」方針へと動いているわけですね。
こういった動きについては各自動車メーカーの働きかけがあるといいますが、(EU加盟国ではないものの)英国だと内燃機関搭載車の販売を禁止することで(高価なEVを購入せざるを得なくなり)国民の家計が圧迫されることを避けるべくこの禁止措置を延期したことも記憶に新しく、全体的な流れとしては「ガソリンエンジン存続」に向かっているように思います。
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英国が「ガソリン車の新車販売禁止」期限を2035年へと延期。インフレによる家計圧迫を考慮するも自動車業界からは「せっかく準備してきたのに・・・」と不満噴出
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内燃機関存続については「想定外の要素」も
ただ、内燃機関の販売期間延長については別の理由もあるものと思われ、それは「中国製EVの欧州進出」。
現在欧州は世界中でも「最もEVの普及が進みつつある地域」であり、そのため多くの人々がEVを買い求めており、つまり「EVは一部の人達だけの乗り物ではなく、普通の人々が普通に乗るクルマ」。
そのためプジョーやシトロエン、フィアットもEVを発売し「日常の足」として人々に提供を行っているわけですが、それでもこれらEVの価格は非常に高く、そこで「クルマは単なる移動手段(走ればそれでいい)」として捉える人々が選ぶのが「中国製の安価なEV」。
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中国が長らく首位であった日本を抜き「自動車輸出国No.1」に。しかも欧州市場では拡大し始めたばかり、北米は手つかずでもあり「さらなる伸びしろ」も
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そしてこういった選択肢が登場したこと、さらにこれらを選ぶ人が少なくないことはまさに「想定外」であったのだと思われ、EUが進めてきたEV転換政策は「欧州の自動車メーカーを潤すどころか、他国に利益を与えてしまい地元自動車メーカーの収益を圧迫してしまう」こととなり、となれば地元から不満が噴出することは間違いなく、よって政治家としては内燃機関搭載車の販売延長によって「入手しやすい選択肢」を国民に対して与え、「EVへの転換を強制しないことで」自動車メーカーに対して過剰な投資を行わくてもすむように、そして競争力を維持できるように配慮するというのが「ベターな選択」であろうと考えています。※中国製EVに対する関税を設けても良いが、となると中国との摩擦が起きる
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参照:Automotive News Europe