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EUでの「2035年ガソリン禁止」採決がドイツの棄権によって延期!「雇用喪失」「合成燃料(Eフューエル)普及の可能性」について協議が持たれるようだ

2023/03/06

ポルシェ

| ただしボクは予定通り2035年にはガソリン車の販売が禁止され、しかし例外措置としてEフューエルが認可されると考えている |

すべての人を満足させる法案を通すことはできないだろうが、妥協点を見出すことは可能である

さて、EUが「2035年にはガソリンエンジンを搭載するクルマ(正確に言えばディーゼルも含め内燃機関搭載車)の販売を全面的に禁止する」という採決を延期したとの報道。

その理由としてはドイツがEUの掲げるカーボンニュートラルへと向けたグリーンプランに対して懸念を示したからだと報じられ、そしてドイツの抱く懸念とは「(ハイブリッド、PHEV含め)ガソリンエンジン搭載車の禁止が自動車業界に与える影響」と「代替燃料(合成燃料/Eフューエル)の可能性」だとされています。

なお、この「2035年までにガソリン車の販売を禁止する」という採決については、この10年間で温室効果ガスを55%削減し、2050年までに気候変動による中立を達成するという目標「Fit for 55」の”重要な”部分となっており、今後の動向には注目が集まります。

EU議会が「2035年にガソリン禁止」という最終合意に至る。年産1万台以下のメーカーでも2036年にはガソリン禁止、1,000台以下だと当面は無罪放免
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ガソリン車の販売禁止は自動車業界にどういった影響をおよぼすのか

まず「ガソリン車の禁止が自動車業界に与える影響」についてですが、これは簡単に言えば「雇用が失われる」ということ。

ガソリンエンジンが不要になれば、ガソリンエンジンに使用するパーツ、補機類、エキゾースト、さらにはトランスミッションなどを作っていたメーカーの仕事がなくなります。

その代わり、エレクトリックモーターやそれに関連するパーツ、バッテリー関連などの新しい産業が伸びることにはなりますが、それらに転換できなかった企業、対応できなかった人材は「あぶれてしまう」ことになるわけですね。

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さらに、電気自動車はガソリン車に比較して構造がシンプルであり、構成点数が30%~40%ほど少ないと言われ、となると組み立てについてもガソリン車よりも簡素になるため、工場で作業を行う人々もそのぶん「不要」になってしまいます。

加えて自動車メーカー本社でも、内燃機関の開発にかかわる人々が職を干されることになり(すでにフェラーリやランボルギーニ、ヒョンデでは整理が開始されている)、これまで自動車業界を支えてきたトップからボトムに至るまでが影響を受けるということに。

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現時点でどれくらいの人数が影響を受けるのか正確な算出を行ったレポートは存在しないようですが、フォードは先日ヨーロッパ全域で約3,800人の雇用を削減すると発表し、(主要工場が存在する)ドイツとイギリスの労働者が最も大きな打撃を受けると言われており、今回のドイツの「棄権」はこれを考慮に入れての結果なのかもしれません。

「代替燃料(合成燃料/Eフューエル)の可能性」とは

そしてもうひとつの「代替燃料(合成燃料/Eフューエル)の可能性」についてですが、この代替燃料とは現在ポルシェやランボルギーニ他いくつかの自動車メーカーが開発と実用化を進めているもの。

ガソリンエンジンにそのまま使用できることを意図しているといい、現存するガソリン車にもこれを注入することで「カーボンフリー」を実現できるため、むしろガソリン車の新車販売を禁止してEVに置き換えるよりも(販売済みのクルマのエミッションもクリーンになるので)、こちらのほうが環境改善効果は大きいかもしれません。

ちなみにこのEフューエルについては、この燃料を使用すれば排ガスがクリーンになる」わけではなく、実際のところ排ガスには(もちろん燃焼するので)CO2が含まれるわけですね。

それでも「クリーン」とされているのは、製造段階で予め(排出を想定した、もしくはそれ以上の)CO2を吸着するという精製方法が取られているからで、いわば「燃焼によって排出するCO2をはじめに回収しているので、結果的にチャラになる」という考え方。※ここでいう合成燃料とは、植物からつくるバイオ燃料とは別である

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そう聞くとすごくいい燃料のように感じるのですが、一つ大きな問題があって、それは「コストが高い」ということ。

CO2の回収と精製には新しい設備、そして運用開始後も多大なコストがかかるので(基本的にエコなものはなんでも高い)合成燃料(Eフューエル)の価格は「普及したという前提でも」ガソリンの2倍くらいとなってきます。

ただ、日本の場合、ガソリンの小売価格への課税割合が高いので、Eフューエルを導入する場合にどれくらい課税するかによって末端のEフューエル価格、そしてガソリンとの価格差が他の国とは異なってくるかもしれません。

しかしながら、ガソリンへの課税によって得られる国の収入は2兆円くらいあるとされ、ただでさえ今後EVの普及でこの税収が減るとなると、Eフューエルの課税がガソリンよりも軽くなるとは思えず、ぼくら消費者としては、このEフューエルが導入されたとしても「現実的に利用できる燃料の価格」になるとは考えられないかも(むしろEフューエルを強制されると困る)。

よって、日常の移動手段として自動車に乗ることを考えるとEフューエルは現実的ではなく(これはほかの国でも同じだと思う)、そしてEフューエルの代わりにガソリンを入れて走っても外からそれを判別する方法はないということもあって、Eフューエルをカーボンフリーへの手段として用いることは今の段階では難しいだろう、とも認識しています。

実際のところ、欧州においてもEフューエルが「脱炭素のための包括的な輸送戦略の一部となる」とは見られておらず、現在妥協点を探っているところだそうですが、おそらくはこのEフューエルが「2035年のガソリン車販売禁止」の例外として認められることとなり、つまり「2035年には予定通りガソリン(含む内燃機関搭載)車の販売が禁止されるが、(すでに決まっている、年間1,000台以下の生産規模にとどまる自動車メーカーの除外に加え)Eフューエルでしか走行できないクルマについては販売を許可する」というところに落ち着きそう。

そして「Eフューエルでしか走行できないクルマ(ガソリンの使用ができないようにする必要がある)」とは、日常的に使用されるクルマではなく、休日のみに乗られるような趣味性の高いクルマで、かつ(Eフューエルの価格を気にしない)富裕層が購入するクルマに限定されるものと見られ、つまりはポルシェ911のような高級スポーツカー(とくにGT3に代表されるサーキット志向のピュアなモデル)、そしてフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなどの発売するスーパーカーがこれに該当するであろうと考えています。※これが最大限の人々を満足させることができるラインなのだと思う

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参照:Automotive News

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