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ベンツマークが付くのに「ベンツではない」イズデラ・インペレーター108iが競売に。元メルセデス / ポルシェのエンジニアが製造したためボディカラーはポルシェ純正

2023/08/07

ベンツマークが付くのに「ベンツではない」イズデラ・インペレーター108iが競売に。元メルセデス / ポルシェのエンジニアが製造したためボディカラーはポルシェ純正

| 自動車史上、これほど数奇な運命をたどったブランドも少ないかも |

ボクの大好きなウェッジシェイプを持つ魅力的なスーパーカー、それがイズデラ・インペレーター108i

さて自動車史上には数々のデザイナー、エンジニア、実業家など、大胆で進取の気性に富んだビジョンを持ち、独自の道を切り開いて自らの夢を実現しようとした人たちが存在します。

かつてはロータスのコーリン・チャップマン、現代だとオラチオ・パガーニやクリスチャン・フォン・ケーニグセグといった人物がこれに相当するかと思いますが、1980年代に「イズデラ」を興したドイツの企業家エバーハルト・シュルツもその一人に加えていいかもしれません。※「イズデラ(ISDERA)」の社名は「Ingenieurbüro für Styling, DEsign und Racing(エンジニアリング、スタイリング、デザイン、レーシング)」の頭文字をとって命名されたもの

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イズデラ・コメンダトーレ112i
はじめて見た!あのイズデラが1台のみ製造したコメンダトーレ112iが競売に。メルセデス、そしてポルシェのパーツを流用した「当時のハイパーカー」

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イズデラを設立したのはポルシェ、そしてメルセデス・ベンツを渡り歩いたエンジニア

まず、エバーハルト・シュルツは1960年代に自身が製作したコンセプトカー「イレータGTE(ガルウイングドアを採用したスポーツカーだった)」をもってポルシェとメルセデス・ベンツを訪れ、これが評価されることでポルシェのスタイリング・コンセプト部門に職を確保することに成功します。

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その後同氏はメルセデス・ベンツへと移って300SLクーペを現代風にアレンジしたコンセプトカー、CW311を発表することになりますが、このクルマはメルセデス・ベンツ製V8エンジンを搭載し、スリーポインテッド・スターを付けることを同社から承認されていものの、メルセデス・ベンツはこのクルマの市販化にゴーサインを出さなかったためにエバーハルト・シュルツはメルセデス・ベンツを辞し、このCW311を自分の力で市販化しようと奔走することとなるわけですね。

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はたしてエバーハルト・シュルツは「イズデラ・インペレーター108i」としてこれを発売することに成功しますが、1987年、フォルクスワーゲンのエハラ・レッセン・テストコースで開催された「Road & Track」誌のロードテストにおいてはランボルギーニ・カウンタック5000QVやルーフCTR(イエローバード)と対等に渡り合ってジャーナリストを驚かせることに。

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ただ、このイズデラ・インペレーター108iは当時1億2000万円という尋常ならざるプライスタグを掲げており、よって(さすがにこの価格では受注を広く集めることができず)生産わずか30台に終わってしまったという悲運のクルマです。

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基本構造は「スチール製のスペースフレームにグラスファイバー製のボディ」となり、これはメルセデス・ベンツ時代のCW311と変更はないものの、細部だとポップアップ式ヘッドランプの廃止とメルセデス・ベンツ製テールライトの採用といった細かい変更も。

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メルセデス・ベンツからは正当に権利を引き継ぎ、車両を構成するパーツにメルセデス・ベンツ製品を使用すること、そしてフロントに大きなスリーポインテッドスターを掲げることについても許可を得ていますが、「メルセデス・ベンツのエンブレムを掲げつつもメルセデス・ベンツのクルマではない」という非常に珍しいモデルです。

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なお、リヤミドシップレイアウトを採用し、車体後部にはメルセデス・ベンツ製V8ユニット(M117)を搭載したうえでZF製5速トランスミッションを介し後輪を駆動しますが・・・。

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リアサイドウインドウには誇らしげに「パワード・バイ・メルセデス・ベンツ V8」の文字。

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なお、30台のうちの13台が(今回オークションに出品される)初期モデルとなっており、1992年にはポップアップ式ヘッドランプの復活、サイドベントが追加された後期モデルへ。※前期/後期モデル生産中であっても、細かい部分が多々変更されている

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イズデラ・インペレーター
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1年あたり1〜2台しか生産されなかったとも言われていますが、この個体は1990年にオーダーされた「前期型としては最後の個体」だと紹介されています。

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新車当時、日本の顧客へと引き渡される予定であったと言われるが

この個体につき、イズデラへの注文主はイギリスのサンポート・ロンドン社、そして完成度には「イスデラ・ジャパン」に引き渡される予定であったものの、何らかの理由でイギリスのM.サックウェルなる人物に納車されたという記録が残ります(ちょうど日本ではバブルが崩壊しており、そのため注文者がこれを受け取ることができなかったのかもしれない)。

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実際のところ、後に出されたこのクルマの販売広告では、英国に納車された唯一の例であることが示されているので、やはり日本に渡ることはなかったのかもしれませんね。

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そしてこの「M.サックウェル」とは当時最年少にてF1へと参戦したドライバー「マイク・サックウェル」だと見られており、しかしこれを証明する書類が存在しないなど「ナゾ」も多いもよう。

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ちなみにですが、エバーハルト・シュルツがメルセデス・ベンツに在籍していたことから、そして在籍時にこのクルマを企画したことからも多数のメルセデス・ベンツ製パーツが使用されているものの、(同氏はポルシェでもエンジニアを務めていたので)リヤサスペンションやメーター、ステアリングホイールなどはポルシェから流用されており、なかなかに興味深いスペックを持っています。

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そしてボディカラーについてもポルシェの純正色が採用されており、今回オークションに出品される個体のカラーはポルシェの人気色である「ガーズレッド」。※インペレーター108iでシルバー以外というのは珍しい

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そして今回、RMサザビーズはこのイズデラ・インペレーター108iにつき、最高で100万ドル(現在の為替レートだと1億4000万円くらい)という高額エスティメイトを出しており、その人気の高さも伺えます。

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参照:RM Sotheby's

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