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VWがEV需要低迷につき再び工場を一時閉鎖。EVに関する計画は大幅に狂いが生じ、修正計画にて挽回を図る

2023/10/01

VWがEV需要低迷につき再び工場を一時閉鎖。EVに関する計画は大幅に狂いが生じ、修正計画にて挽回を図る

| フォルクスワーゲンはもちろん、ほか多くの自動車メーカーにとっても「計算外の要素」にて大幅に計画の狂いが生じることに |

ただし「流れ」はどんどん既存自動車メーカーにとって不利な方向へと進み、修正は非常に困難

さて、報道によるとフォルクスワーゲンは販売不振を理由とし、ドイツのツヴィッカウ工場とドレスデン工場で10月最初の2週間、電気自動車「ID.3」の生産を一時停止すると発表したもよう。

この販売不振については「需要が予想を下回る」と言及されており、影響を受ける従業員の数については明らかにされていない状態です。

参考までに、この2工場では11,000人以上の従業員が働いており、ID.3に加え、ID.4、ID.5、Q4 e-tronなどの車両を生産しています(生産の一時停止はID.3のみなので、他のモデルの需要は問題がないのかも)。

なぜフォルクスワーゲンの電気自動車は需要が低い?

両工場の生産は10月2日に一時停止され、その後ツヴィッカウ工場では10月13日から、ドレスデン工場では10月16日から再開される予定だといいますが、フォルクスワーゲンは需要の減少について、テスラや中国のEV企業との競争激化に加え、インフレ率の高騰や補助金の減少を挙げています。

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フォルクスワーゲンは過去に、他の多くの企業と同様にサプライチェーン不足を理由に工場の生産を停止したことがあり、今年6月にも同様の理由にて生産を一時停止したばかり。

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こういった状況の最大の原因は「中国からの安価な代替品の流入」であると考えられ、フォルクスワーゲンのクルマ、とくにEVは「移動手段」として捉えられる傾向が強く、そしてクルマを移動手段として捉える人はより安価な選択肢、つまり中国製のEVを選ぶ傾向が強いのかもしれません。

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実際のところ、中国製EVは欧州だと「同程度の性能を持つ同じセグメントの欧州製EVに比較して37%も価格が安い」と報じられており、東南アジアだとこれが最大で80%にまで拡大するという調査結果もあって、そうなるとフォルクスワーゲンは地元の欧州ではもちろん、輸出先でも競争力を失ってしまうことになり、今回の工場一時閉鎖も「やむなし」なのかもしれませんね。

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なお、今年の初めにフォードは「中国がEV競争に勝っている」とさえ認めており、つい最近だと欧州委員会は「補助金の恩恵を受けて安価なEVを製造している」として中国製EVの流入から欧州メーカーを守るために関税を課すべきかどうかの調査を開始したところ。

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それでもフォルクスワーゲンは2028年までの工場建設計画を発表

こういった「販売不振」にかかわらず、フォルクスワーゲンは2028年までのドイツ工場における戦略計画を発表しており、VWの生産部門のボスであるクリスチャン・フォルマー氏いわく「その目標は、同じプラットフォームをベースにしたモデルを束ねることによって、生産の複雑さを軽減すること」、つまりはコストの削減です。

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ちなみにですが、フォルクスワーゲンは比較的早い時期からEVへのシフトを発表しており、この頃同時にEVへと移行する戦略を発表した自動車メーカーのターゲットはひたすらテスラ・モデルS(当時はそれが一番売れていたから)。

フォルクスワーゲンとて例外ではなく、テスラ・モデルSを仮想ライバルに設定したEVの開発に(アウディなどグループ会社とともに)乗り出すものの、フォルクスワーゲンがモデルSのライバルを発売する前にテスラはその主軸をモデル3へと移してしまい、同時にEV市場もモデル3と同じセグメントへとメインストリームが切り替わることに。

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つまりフォルクスワーゲンはあっさりと肩透かしをくらい、これによって「主戦場になると睨んでいた」マーケットが消失してしまうことになり、よってVWはヴォルフスブルク近郊に20億ユーロ(約21.2億円)の投資を必要とする専用の新工場の計画を中止しています。

その代わりVWは(コストを抑える戦略に転じ)ツヴィッカウの既存工場を改築し、SSPプラットフォームをベースとするフラッグシップモデルの生産に対応することとなっているわけですね。

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そしてさらに状況を悪くしたのが上述の「中国製EVの台頭」であり、テスラによって引き起こされた主戦場シフトに加え、中国製EVとの覇権争いという予想外の事態が連発してしまい、フォルクスワーゲンとしては「なにひとつ(EVに関しては)計画通りに行かなかったということなのかもしれません。

ただ、計画通りに進まなかったのはごく一部の自動車メーカーを除いて「ほぼすべて」であり、ここからどう戦略を立て直して新しい戦況に備えるかが重要なのだと思われます。

実際のところ、VWのCEOであるトーマス・シェーファー氏は、「自動車産業全体にわたる大きな変革のもと、困難な状況で経営が進められており、複雑な課題に直面している」と述べ、しかし「新たに承認された新車計画は、強力で競争力のあるVWブランドに大きく貢献する」とも付け加え、その将来性について自信を見せています。

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参照:Reuters

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