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欧州における中国製EVの販売は1-7月で前年比112%増、2021年比では361%増。EUが「中国製EVは政府の奨励金によって欧州製よりも20%安価に製造できる」と指摘

2023/09/23

欧州における中国製EVの販売は1-7月で前年比112%増、2021年比では361%増。EUが「中国製EVは政府の奨励金によって欧州製よりも20%安価に製造できる」と指摘

| 現時点では、欧州製EVは中国製EVに対し、コストパフォーマンスでは太刀打ちできない |

EUが中国製EVに関税を課すかどうかを決定するのに要するには13ヶ月、それまでに耐えられない欧州自動車メーカーが出てきそう

さて、ここ最近のホットな話題が「中国の安価なEVが欧州に進出している」問題。

実際にEUは中国製EVに関税を課すべく調査を開始したと報じられており、これによって中国のEVメーカーの株価が大きく下るといった現象も見られていますが、つまりはそれほど「中国のEVメーカーにとって欧州は重要な市場である」ということに。

数値的なものを見てみると、EU向けの中国の新エネルギー車(ハイブリッド車とEVの両方を含む)の出荷台数は2023年の最初の7ヵ月間で112%増加し、2021年からだと361%という驚異的な伸びを示しています。

EU規制当局が欧州内で勢力を拡大し続ける中国車に対し関税導入を検討。当然中国はこれに反発しており、自動車業界を超えた問題に発展する可能性も
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なぜここまで中国製のEVが欧州市場でシェアを伸ばすのか

そこで「なぜ中国はこれほど多くの安価なEVを世界中、特にヨーロッパに提供できるのか」という疑問があるかと思いますが、その理由としてはまず第一に「生産能力の過剰」が挙げられます。

上海を拠点とするアドバイザリー会社「オートモビリティ」のビル・ルッソCEOによると、「中国には年間1000万台の生産過剰がある」。

現在中国はEVの生産を国家あげて後押ししており、EVを生産する自動車メーカーに対して”EV奨励金”を出していて、この奨励金は2009年から実施されており、2021年までに中国は(奨励金として)150億ドルをEVメーカーに対して支払ったと推定されています。

そしてこの奨励金を獲得しようと多くの会社がEV製造へと乗り出すことになり、結果的に”売れる以上に”EVが生産されてしまったことから中国各地にEVの墓場が登場しているという報道がなされたのも記憶に新しいところ(シェアサイクルも同様であったが、中国では”供給過剰”は珍しくない)。

NIO

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こういった状況において、安価なEVを製造していた会社だと「奨励金をもらった後は製造したEVを廃棄し、そのまま廃業しても利益が出る」状態であったとされるものの、ある程度のコストをかけてEVを製造していた会社はそうもゆかず、よってこれら中国のEVメーカーは「過剰に生産したEVをなんとか売って現金に変えねばならず」、競争の厳しい中国内を避けて欧州へと車両を輸出しているというのが現在の状況です。

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そこでEUが指摘しているのが「中国製EVが過剰に安い」ということですが、その理由は上述の奨励金にあり、中国のEVメーカーは奨励金をもらっているため、EVを安く販売しても利益が出る状態となっていて、EUが行った試算だと「中国製EVは、欧州製EVに比較して1/5ぶんだけ安い」。

つまりは奨励金のおかげで中国製EVは製造コストが安く仕上がっており、この「不当に安い」価格は欧州製のEVとの競争を不公平なものとしている、と見られているわけですね(現在はまだ調査が継続しており、結論が出るのは13か月後だと言われている)。

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中国は国内においてもEV販売を加速させる

さらに2023年6月、中国はEVとグリーン・カーに対する減税措置(生産者ではなく購入者に対して適用される)を打ち出しており、これによって総額5,200億元(720億ドル)が今後4年間に渡って消費者に対して支給(正確にはその分が控除)されることになりますが、これはおそらく「生産が過剰となったEVを少しでも多く国内で消費するため」。

実際のところ、中国ではいったん消費者に対する補助が終了しており、それと同時にEVの販売も減少してしまい、そのため中国政府は2023年6月に新しく減税措置を導入することで「再度」EV販売を活性化させようというわけですね。

香港
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それでも「過剰に生産された」年間1000万台ものEVが簡単に中国内で消費されることは考えにくく、よって当面は欧州へと輸出され続けることになり、そしてその価格は奨励金の受給を反映した安い価格となり、これが欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長が言う「世界の市場には安価な電気自動車が溢れている。電気自動車の価格は、巨額の国家補助金によって人為的に低く抑えられている」という主張へと繋がってきます。

世界自動車市場の81%を持つ欧米自動車メーカーのシェアは「中国メーカーの台頭によって58%まで低下するだろう。テスラは現在の2%から8%へと伸び、ルノーとVWが失速する」

ただ、「中国製EV」といえど、中国の自動車メーカーがその大半を占めるのは事実ではあるものの、(生産コストの安さを見込んで)テスラ、BMW、ルノーなどが中国に(自社直接、もしくは合弁を通じて)工場を建設しており、そこでは欧州向けEVの生産を加速させています。

よって、中国製EVが欧州に進出しているとは言っても、その「中国製EV」の中にはテスラ、BMW、ルノーといった欧米自動車メーカーの製品も含まれていて、よって中国製EVに関税をかけてしまうと、これらの価格までもが高くなってしまい、せっかく「安い製造コスト」を見込んで中国に投資したこれらの企業の努力も水の泡となる可能性も。

そしてEUは中国からの報復を警戒する必要もあり、中国商務省はすでに警告の狼煙を上げ、中国はEUの調査開始とともに「EUを含む世界の自動車産業とサプライチェーンを深刻に混乱させ、これを歪める保護主義的行為であり、中国とEUの経済貿易関係に悪影響を及ぼすだろう」という声明を出しており、ともすると(輸出の制限などによって)多くを中国から輸入する欧州の様々な産業を苦しめることになるのかもしれません。

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参照:Auto News, Reuters

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