| 当時のBMWは今では信じられないような数々の対応を行っていた |
これほどコストが丹念にかけられたクルマも珍しいだろう
さて、ガルウイングやディヘドラルドアなど様々なドアの形状が存在しますが、おそらくは「自動車市場もっともユニークな」ドアを持つであろうクルマがこのBMW Z1。
1987年のフランクフルトにて発表されており、「Z」とは「Zukunft=ドイツ語で”未来”」を意味します。
開発を指揮したのはのちにポルシェで993等を手掛け、その後アストンマーティンCEOに就任したウルリッヒ・ベッツ氏です。※後にクラウス・ファウストに交代している
このBMW Z1は、生産台数わずか8,000台程度に留まる希少車で、今ではマニア垂涎のクルマのひとつとしても知られており、正直ぼくも「いい個体があれば手に入れたい」と考えているクルマでもあります。
BMW Z1はこんなクルマ
このBMW Z1は樹脂製のボディパネルを採用していること、エキゾーストシステム(マフラー)がディフューザー形状を持つこと、マルチリンクサスペンションを採用した初期のクルマの一台であることなどが知られていますが、なによりもこのZ1を有名にしたのは「ドア構造」。
こちらはドアが閉じている状態ですが・・。
ドアは下へとスライドして開くという特徴的な構造を持っています。
この開閉は電動で行われますが、これがZ1最大との特徴となるとともに(そして容易に想像できるように)泣き所となっていて、トラブルが頻発する部位となっているわけですね(ドアが下がるときは速く、上がるときは遅い)。
ただしドアを開けたまま走行できるという、ほかのクルマには見られない特徴を持っており、色々な意味で「特殊なクルマ」と言えるかもしれません。
ドアを「上下」開閉方式とした理由はおそらく公式に語られていないものの、想像するに「ドアを開けたまま走る方法を考えたらこうなった」んじゃないかと想像しています。
なお、プラットフォームは今では到底考えられない「専用設計」。
そのため破綻のない美しいデザインを持っていると思います。
そしてこういった未来的なシート形状や・・・。
コンセプトカーライクな取り付け位置とステーを持つミラーなど、何から何まで特別感満載。
ステアリングホイールも専用デザイン、しかしエアコンやオーディオ、エアコン吹き出し口などは当時のBMWからの流用です。
BMW Z1の価値はどんどん上昇中
なお、このZ1のボディには熱可塑性プラスチック(復元が容易で、一時はこの素材が自動車のボディパネルの標準になると言われたことも。サターンにも採用された)、そしてパネルそのものも交換が可能です。
そのため車体重量は(カーボンファイバーを使用していないにもかかわらず)非常に軽量に収まり、わずか1,250kg(乾燥重量)にとどまります。
キドニーグリルも現代のBMWからは想像できないほどコンパクト。
ちなみにこのBMW Z1の車両デザインを担当したのはハーム・ラガーイ氏で、のちに同氏はポルシェにデザイン部門の責任者として移籍しており、996世代の911、初代ボクスター、初代カイエンをデザインしていますが、ハームラガーイ氏といい、ウルリッヒ・ベッツ氏といい、ポルシェに深く関与した人物がこのクルマの開発に携わっていたということになりますね。
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搭載されるエンジンは2.5 リッター M20直列6気筒。
当時の3シリーズからの流用ではあるものの、低いボンネット内に収めるために「20度寝かせる」など様々な工夫が見られます。
もちろんソフトトップも装備されています。
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参照:CAR&CLASSIC