>フェラーリ

フェラーリ「最初」のクルマはわずか118馬力、その76年後には1,030馬力へ。フェラーリはいかにしてここまでの出力向上をなしとげたのか

フェラーリ

| フェラーリの歴史を見ると、「困難な時代」にこそ大きなパワーアップが成し遂げられている |

やはり障壁こそが成長の最大要因なのかもしれない

さて、自動車の性能は「段階的に」ではなく「飛躍的に」向上する場面があるといいますが、馬力がその最たる例かもしれません。

たとえば、300馬力、400馬力、500馬力あたりだと「数年かけて徐々に」進化してきたものの、そこから「1,000馬力」までは一瞬であったように思います。

そしてフェラーリもその例に漏れず、SF90ストラダーレでは1,000馬力をマークしており、SF90 XXではそれをさらに上回る1,030馬力にも達しているわけですね。

フェラーリがSF90 XXについて語る。「我々の原動力は、限界を押し広げようという勇気、そして新たなあこがれの対象を生み出そうという挑戦です」
フェラーリがSF90 XXについて語る。「我々の原動力は、限界を押し広げようという勇気、そして新たなあこがれの対象を生み出そうという挑戦です」

Ferrari | フェラーリはSF90 XX ストラダーレ/SF90 XX スパイダーによってそのデザインレベルを新しい次元へと拡張した | フェラーリほど「レーシングカーとロードカーとの境界線」が ...

続きを見る

最初のフェラーリはわずか118馬力だった

フェラーリは1947年に創業されており、はじめて「フェラーリ」の名を冠した車である125Sに積まれていたのは史上最小のV12として知られる「1.5リッターV12、118馬力(ジョアッキーノ・コロンボの設計による)」。※0−100km/h加速は10.8秒、最高速は210km/h、そして製造されたのは2台のみ

だだしここからの馬力の向上には目をみはるものがあり、1950年にはすでにフェラーリのV12エンジンは200馬力を発生させており、1959年の250GTベルリネッタでは280馬力に到達しています(日本車ではじめて280馬力を発生させる市販車の登場はその30年後の1989年、日産GT-RとフェアレディZである)。

1
Ferrari

なお、250GTベルリネッタに積まれるV12エンジンの排気量は3リッター、つまり最初に登場した「1.5リッター」から倍の排気量へと成長しています(最終的には1989年までに4.9リッターへと拡大)。

ただし1959年時点でもこのV12エンジンはシングルカムヘッドにとどまっており、シリンダーあたりのバルブは2つ、そしてもちろんキャブレター仕様(ウェーバー製)。

1966年になるとコロンボエンジンにクワッドカムが装備され、これは275 GTB4(300馬力)に搭載されたのちに4.4リッターへと拡大されて1968年にデビューした365BTB4「デイトナ」へ積まれます(352馬力を発生し、フェラーリ史上もっともパワフルなクルマであり、かつフェラーリ史上最速のロードカーでもあった)。

DSC04353

1971年になるとF1由来のV12”フラット”エンジンが登場し、365GT4 BB(ベルリネッタボクサー)へと初めて搭載(360馬力)されることになりますが、1970年代はオイルショック、さらには厳しい排ガス規制によって大排気量ハイパワーエンジンが冬の時代を迎えることとなり、しかし様々な規制をクリアするための解決策がフューエルインジェクションそして高度なエンジンマネージメントシステムで、このV12フラットエンジンは512BBi(1981年)ではいったん340馬力にダウンするものの、テスタロッサ(1984年)では390馬力、512TRでは(1991年)では428馬力にまで出力が向上しています。

こうやって見ると、大きな出力向上は(意外なことに)規制によって実現されたとも考えることができますが、現代における「ハイブリッドシステムを活用して1,000馬力を達成」という流れについても、ある意味では厳しい環境規制をクリアするためにエレクトリックパワーを用いたことによる”副産物”なのかもしれません。

500馬力を突破したフェラーリ初の量産車は575Mマラネロ

そして話をもとに戻すと、1995年にはF50がついに「500馬力」の大台を突破することになりますが、これは限定モデル(さらにF1のエンジンを搭載していた)ということから除外するとして、量産車で500馬力を超えたのは2002年の575マラネロが初。

しかしながらわずか4年後の2006年には599GTBが一気に620馬力へと大きな飛躍を見せていて、このエンジンはエンツォフェラーリ(65度V12 / 660馬力)のエンジンをベースとしたものであり、連続可変バルブタイミング機構といった新技術の導入に加え、排気量拡大や高回転化(レッドゾーンは8,400回転)によってこの高出力化がなされています。

なお、このV12エンジン(F140)はその後599GTO(670馬力)、F12ベルリネッタ(740馬力)、ラフェラーリ(800馬力)、812コンペティツィオーネ(830馬力)、SP3デイトナ(840馬力)にも搭載されていますが、フェラーリはV12エンジンに過給器を装着するという考え方を好まず、しかしハイブリッドシステムを組み合わせることで(ラフェラーリにて)システム合計963馬力を達成するものの、いったんここでV12エンジン単体の進化は「小休止」となり、実際のところ最新V12モデルである12チリンドリの最高出力は830馬力にとどまっています。

11
Ferrari

フェラーリが新型V12モデル「12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)」「12Cilindriスパイダー」を同時発表。かつての”デイトナ”365BGT/4を連想させるスタイルに
フェラーリが新型V12モデル「12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)」「12Cilindriスパイダー」を同時発表。かつての”デイトナ”365BGT/4を連想させるスタイルに

| フェラーリはそのスタイリングを一気に未来へと押し進めた | まさかここまで大幅にスタイリングを変えてくるとは さて、フェラーリが新型V12フラッグシップスーパーカー、フェラーリの新型V12スーパー ...

続きを見る

反面、フェラーリは別の方法を用いることで1,000馬力へと挑んでおり、それは「V8ツインターボ+ハイブリッド」。

すわなちSF90ストラダーレにてデビューしたパッケージングですが、フェラーリはこれによって1,000馬力へと到達し、さらにはSF90 XXにて1,030馬力を達成しているわけですね。

L1280129

参考までに、フェラーリのV8エンジンについてもその出力向上ぶりが凄まじく、360モデナ(1999年)では400馬力、F430(2004年)では490馬力、458イタリア(2009年)では578馬力、488GTB(2015年)では670馬力と「ニューモデルへと移行する都度、100馬力くらい」パワーアップしており、F8トリブート(2019年)では720馬力、SF90ストラダーレ(2019年)ではV8エンジン単体で670馬力を発生するに至っています。

もう一つ参考までに、いわゆる「スモールフェラーリ」として見てみると、今のところ「V8ミドシップモデルとしては最後」となるF8トリブートでは720馬力、そして296GTB(これをスモールフェラーリの系譜に含めるかどうかは異論があるかもしれないが)では一気にシステム合計830馬力に達しており、ここでも大きな飛躍が見らるようですね。

合わせて読みたい、フェラーリ関連投稿

フェラーリが「V12エンジン」についての情熱を語る。V12エンジンはメリットが多く、しかしその代償はコストではあるが、フェラーリはコストを気にしない
フェラーリが「V12エンジン」についての情熱を語る。V12エンジンはメリットが多く、しかしその代償はコストではあるが、フェラーリはコストを気にしない

| フェラーリの歴史はV12エンジンとともにあると考えていいだろう | フェラーリはル・マン24時間レースではじめて「V12エンジンを使用して優勝した自動車メーカー」である さて、フェラーリと言えばV ...

続きを見る

フェラーリが最初に走らせたF1マシン、125GPC(のちに125F1に改名)はこんなクルマ。1.5リッターV12にスーパーチャージャー、50戦のうち優勝8回
フェラーリが最初に走らせたF1マシン、125GPC(のちに125F1に改名)はこんなクルマ。1.5リッターV12にスーパーチャージャー、50戦のうち優勝8回

| フェラーリはクローズドホイールレースで活躍を見せる一方、いち早くオープンホイールレースにも可能性を見出していた | 125GPC(125F1)は発表当初から高い戦闘力を見せている さて、フェラーリ ...

続きを見る

フェラーリ
なぜV12エンジンはフェラーリにとってDNAそのものなのか?V12エンジンのルーツ、変遷、F1での終焉、そして現在、さらにはその未来

| やはりV12エンジン搭載フェラーリはどこかで手に入れておかねばならないだろう | ひとくちにフェラーリのV12といえど、様々な世代や形式がある さて、フェラーリがそのDNAともいえる「V12」エン ...

続きを見る

参照:Ferrari

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->フェラーリ
-, , , , ,