
| フェラーリは「法的に許されるかぎり」V12エンジンを作り続けることを明言している |
「楕円ピストン」は技術的な制約も少なくはなく、しかし現代のテクノロジーを使用すれば実用化も「難しくはない」のかも
さて、エレクトリックパワートレインに関する様々な特許を出願していることでも知られるフェラーリですが、内燃機関についても多数のパテントを出願しており、今回は「楕円ピストンを持つV12エンジン構造」を特許として出願したことが明らかに。
エンジンのピストンは(4ストロークエンジンが発明された後)150年以上も「円形」が常識であり、この「楕円」ピストンというのは完全なる常識外ですが、実はこの楕円ピストンは今回フェラーリが発明したものではなく、過去にはホンダがF1にてこの楕円ピストンを試し、さらには市販バイク(1992年発売のNR)へと搭載したことも。
そして今回フェラーリがこの楕円ピストン、そしてそれを最大限に「活用する」特許を出願したことが明らかになっていて、ここでその詳細を見てみましょう。
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さすがにこのエンジンはエンツォ・フェラーリすらも想像し得なかったであろう
フェラーリ創業者であるエンツォ・フェラーリはエンジンに対して非常に強い情熱を持っており、とくにV12に対する執着があったことは既知の通り。
「エアロダイナミクスなんぞはエンジンを作れない者がやっとけ」「V12を積まないフェラーリはフェラーリとは言わん」「我々が売るのはエンジンであり車体はオマケ」という数々の名言を放っていますが、今回の「楕円ピストン」はさすがにこのエンツォ・フェラーリでも想像すらしなかったものかもしれません。
今回フェラーリが出願した特許(EU特許申請番号:24197835.2)によれば、今回の 「楕円形ピストン」 は、 ナスカーのオーバルトラックのような形状を持っており(つまり直線部分がある)、摩擦を低減し、パワーと燃費効率を向上させることを目的としています。
さらにフェラーリはこの楕円ピストンが「エンジンの小型化をもたらす」とも述べていて、これの意味するところは「V12エンジンのリヤミッドへの搭載の可能性」であり、テスタロッサのような「V12ミドシップ」の復活も期待できるわけですね。※フェラーリは1996年にF512Mを生産終了して以来、ミッドシップV12を搭載した量産モデルを作っていない
フェラーリの「楕円ピストン採用V12エンジン」はこんな構造を持っている
参考までに、ホンダの「楕円ピストン」はクランクシャフトに対し「水平方向」に長いピストンを持っていたものの、フェラーリの場合は「クランクシャフトに対して垂直方向に長い楕円形」を採用していて、これによってピストン同士の間隔を狭め、エンジン全体の長さを短縮しています。
さらに、この特許には新しいクランクシャフトとコンロッドの設計も含まれており、
通常のエンジン構造であれば、1つのピストンに1本のコンロッドがクランクシャフトのジャーナルに接続されるのですが、今回の設計では 対向する2つのピストンが1つのジャーナルを共有する仕組み。
これによって製造が簡略化され、摩擦が減り、さらなるエンジンの小型化が可能となるほか、ピストンの長辺側に大きなくぼみを設けることにより、シリンダーウォールとの接触面積を減らし、摩擦を低減させるというアイデアも記されています。
当然ながらこうした革新的なアイデアには技術的な課題も少なくはなく、150年以上の歴史を誇る円形ピストンは「実績があり、あらゆる部品の製造や耐久性が確立されている技術」。
一方で、楕円形ピストンは新たな製造技術や材料開発が必要となり、しかし現代の高度な加工技術、金属材料の進化、エンジニアリング技術の発展により、かつて不可能だった設計が実現可能になりつつあるのかも。
現時点ではフェラーリがこの「楕円ピストン」をどの段階で、どういったモデルに導入するのかはわからないものの、過去には「法的に許される限りV12エンジンを作り続ける」とも明言しており、そして現在のフェラーリは「過去にインスパイアされたクルマ」を作るという傾向が強いため、このコンパクトなV12エンジンをもって「512BB」「テスタロッサ」といった過去のアイコンの「オマージュ」が誕生するのかもしれません。
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参照」CARBUZZ