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フェラーリが水素燃料電池車に関する特許を出願。水素電池セルを車体底面に「デフューザー的役割を担当させるべく」配置しガソリン車では達成できないダウンフォースを獲得

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| さらにはこの水素燃料電池スタックが車体構造の一部を兼ねることでパーツ点数が大幅に削減される |

電動化によって「これまでできなかったこと」がアイデア次第で実現できるように

さて、フェラーリはこれまでにも内燃機関やエレクトリックなど様々なパワートレーンに関する特許を出願してきましたが、今回はFCEV(水素燃料電池車)に関する特許を出願したことが明らかに。

なお、このFCEVに取り組む自動車メーカーは非常に少なく、よく知られているのはトヨタ、BMW、ヒョンデといったところですが、一方でメルセデス・ベンツのように「全く興味を示さない」自動車メーカーも存在します。※ポルシェやアルピーヌのように、水素そのものを内燃機関の燃料とした研究を進める自動車メーカーもある

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フェラーリはそのレイアウトにて「効率化」を追求

今回フェラーリが出願した特許において、特筆すべきは水素燃料電池システムそのものというよりは水素燃料電池スタックのレイアウト。

この水素燃料電池スタックは、F8トリブートのようなミドシップレイアウトスーパーカーの「ガソリンエンジンとそのまま入れ替える」かのような位置に配置され、これによって車体の重心を最適化し、ミドシップフェラーリと変わらないハンドリングを再現することを目的としています。

そしてフェラーリの特許では、この水素燃料電池スタックとその支持構造は、「上下に十分なスペースを確保できるような形状になっており、その結果、車両の高さが低く抑えられ、空力効率が向上する機会が生まれる」と説明されており、空気力学的的な利点としては、セルスタックを車両の中央から離れるように上向きに傾けることによってもたらされ、それによってセルスタックのベースをエアロデバイスとして使用できるように。※ガソリンエンジンに比較して重心もかなり低い

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United States Patent and Trademark Office

これは先日出願が確認された「空力的なアクティブエキゾースト」に関する特許と同様に、車両の下にある上向きのランプ(傾斜)はディフューザーと同様の働きを行い、高速で流れる空気を排出するのに役立つわけですが、このランプ形状が燃料電池スタックによって作成されれば、フェラーリは重量を節約でき、かつパフォーマンスを犠牲にすることなくコストを削減できる、ということを意味します。

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つまり、「水素タンクがディフューザー、さらにはそれに類するパーツとしても機能する」こととなり、ひとつのパーツで2つの役割を担うことによって、パーツ数、そしてそれにかかわる設計や製造コストを削減でき、当然ながら重量も削ることができるわけですね(ロータス的な考え方であるが、フェラーリはポルトフィーノの設計時からこういった考え方を取り入れたと以前に述べている)。

この特許ではインホイールハブモーターを使用

なお、今回の特許で示される車両は「FCEV」なので、その動力源はエレクトリックモーターということになり、水素燃料電池スタックをリアアクスルに相当する部分に配置し、そしてその角度を跳ね上げることでエアの排出を狙うという性質上、車軸上(ガソリン車だとデフが存在する位置)にエレクトリックモーターを積むことができず、よってこの特許では興味深いことにインホイールハブモーターの採用が示されています。

インホイールハブモーターにはメリット/デメリットが有り、デメリットだとバネ下重量が増加するということが考えられ、しかしフェラーリはそれよりもエアロダイナミクスや車体構造の簡略化を重視もしくは最優先したということになりそうですね(現代のアクティブサス技術をもってすれば、バネ下重量の問題は容易に解決できるので、デメリットにはなりえないのかも)。

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United States Patent and Trademark Office


もう一つ興味深いのは、フェラーリが以前にこの「水素燃料スタックを、通常のバッテリーセルに置き換えた」EVのパテントを出願していることで、つまりフェラーリのEVはインホイールハブモーターを備え、ボディ底面からガバっとエアを抜くという構造を備えるのかもしれません。

そして「ボディ底面からガバっとエアを抜く」というのは”構造上”ガソリン車では不可能なレイアウトであり、フェラーリは電動化に際し、単にパワートレーンをガソリンエンジンからエレクトリックモーターに置き換えるのではなく、「EVにしかできない」パッケージングをもってパフォーマンスを最大化しようと考えていることがわかります。※以前には、バッテリーに搭載位置を分散することで重量配分を最適化する特許も出願されている

今回のレイアウトでは「ガソリンエンジンのあった位置にバッテリーを積み、ガソリンエンジンに相当するパワートレーンを(2輪もしくは4輪それぞれの)ホイールの中に組み込む」という手法を採用していて、なかなかにラディカルな考え方だと言えるかもしれません(そしてインホイールハブモーターはブレーキとしても機能するのだと思われる)。

そう考えるならば、「電動化」にはまだまだ様々な可能性が残されており、アイデアひとつでそのパフォーマンスを「革命的に」向上させることができる余地が残されているのだと考えることもできそうです。

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参照:CARBUZZ, United States Patent and Trademark Office

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