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フェラーリが「ターボにギアを組み込んでラグを解消する方法」を特許出願。そのためにはエンジンを上下逆に搭載する必要があり、「なぜ電動ターボを使用しないのか」?

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| おそらくフェラーリはハイブリッド化せずにターボラグを解消する方法を考えており、ノンハイブリッド車を今後も発売する計画を持っている |

電動ターボは高い電圧と大きな電力を必要とするため、ハイブリッドでないと動作が難しい

さて、フェラーリはビークルダイナミクスの改善、ドライビングエクスペリエンスの改善を主眼に様々な特許を出願していますが、ちょっと前には「上下逆に車体に取り付ける水素エンジン+スーパーチャージャー」なる特許を出願しています。

そして今回出願がなされたのがやはり「上下逆のエンジン(ただし水素とは言及されていない)+ターボチャージャー」というパワーユニット、そしてそのターボラグを解消するためのシステムです。

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フェラーリの新しい特許はこういった内容を持っている

今回出願された特許は非常に斬新なのもので、これによって解消できる課題は「スペースの有効活用とターボラグの解消」。

まず、フェラーリは現在の課題として「大型ターボチャージャーは低回転ではあまり効率的ではなく、逆に小型ターボチャージャーは回転数が速いものの、処理できる空気の量が限られているため、高速域での性能が低下する」ことに言及。

そこでこれらの問題を解決できるのが新しい特許ということになりますが、基本構造は従来の「排気ガスが吸気コンプレッサーを回転させる」というもので、いくつかある新しいアイデアの一つが「プレナムの圧力を高める方法」。

まず吸気ガスは(通常のターボシステム同様に)インタークーラーを介して供給され、ここでチャージの温度を下げて効率を最大化しますが、今回フェラーリが出願した設計では、インタークーラーは2つに分割され、各半分の間にバイパスバルブが設けられることに。

そして専用に設置されたECUが(低回転では)このバルブを閉じて吸気マニホールドないの圧力上昇を加速できるようにし、実質的に、2つの吸気源が(通常は1つの吸気の空気量しか処理しない)チャンバーを加圧することとなり、プレナムの圧力が高ければ高いほどエンジンはより多くの燃料を噴射でき、それによって排気が加速され、ターボチャージャーはより速く回転できるという仕組みを持っています。

Ferrari (4)

そしてターボラグを解消するためのもう一つのシステムが「ターボギア」。

冒頭で述べたように、このエンジンは逆さまになっており、つまりクランクシャフトがエンジンの最も高い部分の1つになっていますが、そこから同軸にて(独自のクラッチメカニズムを備える)ギアセットがクランクシャフトの上に配置され、出力シャフトがターボチャージャーのタービンシャフトに接続されています。

Ferrari (1)

そしてこの「ターボギア」は3段以上にて構成され、エンジン回転数が低いときには「低いギア」を用いてタービンをより速く回すことで素早くリニアに加給を行い、エンジン回転数が上がるにつれてそれを緩めるというロジックを持つわけですね。

なお、面白いのは、このターボ用トランスミッションが(車輪駆動用の)出力軸とは独立しているため、例えば車両が停止しておりギアが「N」に入ってたとしてもこのトランスミッションのクラッチを接続することで「加給を行える」という事実であり、つまり停止状態から発進する際にも「まるで大排気量自然吸気エンジン」のようなフィーリングが得られるのかもしれません。

さらに、エンジン回転数が高回転に達し、かつギアの許容範囲を超えてタービン回転数が高まるとクラッチオフにてタービンがフリーになるという制御を持っており、これによってブースト圧の任意のコントロールが可能となるようですね。

Ferrari (2)

そしてこの「エンジン逆さま」というのは、クランクシャフトを上に持ってきてこの「ターボギア」を設置するための手法ということになり、つまりフェラーリはそこまでしてターボラグの解消を狙うということになりそうです。

ちなみにですが、現在フェラーリに積まれるV8ツインターボエンジンは「ターボラグゼロ」を謳うものの、実際にそのエンジンを積むクルマを所有する身としては「ターボラグはゼロじゃない」とも認識しており、そしてフェラーリがこういった特許を出願するあたり、フェラーリ自身も「ターボラグが存在する」と認めている証拠なのかもしれません。

Ferrari (3)

そしてここでちょっと疑問に思うのは「なぜフェラーリは電動ターボを使用しないのか」。

電動ターボは(エレクトリックモーターによって)タービンを強制的に回転させることでターボラグ”ゼロ”を実現するもので、すでにメルセデスAMG、ポルシェがこれを導入済み。

今回の特許を見るとあまりに構造が複雑すぎ、それに起因する故障の可能性を心配してしまうほどですが、ここまでしなくても電動ターボを使用すれば一発で問題を解決できるんじゃないかと考えてしまうわけですね。

ただ、電動ターボには高電圧システム、そしてそれを作動させるための大容量バッテリーが必要となり、つまりは(新型ポルシェ911カレラGTSのように)ハイブリッドでないと機能させることが難しいデバイスです。

Ferrari (5)

そして今回、フェラーリが「電気的に」駆動する電動ターボではなく、複雑怪奇な構造を持つ機械式ターボギアを用いてきたということは、フェラーリは今後も「ハイブリッド化しないスポーツカーを発売するつもりである」とも考えられ、この特許が実装されるかどうかは別として、フェラーリが電動化に頼らないパフォーマンス向上を考えているということはぼくらにとって朗報なのかもしれません。

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参照:CARBUZZ,  United States Patent and Trademark Office

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