
| フェラーリが王座に返り咲いた1975年、その中心にいたのはニキ・ラウダと革新的なF1マシン「312 T」だった |
1975年はフェラーリにとってまさに「黄金時代の幕開け」である
2025年現在のF1グランプリにおいてフェラーリは「低迷」している状態ではありますが、フェラーリの長いF1参戦歴の中では「黄金期」がいくつか訪れており、1975年以降の数年もそのひとつ。
フェラーリは1975年にF1の頂点に返り咲き、この年はニキ・ラウダがドライバーズタイトルを獲得、さらにチームもコンストラクターズチャンピオンに輝くという、まさに黄金時代の幕開けを告げる年として記録されています。
そしてその原動力となったのが、伝説的なF1マシン「フェラーリ312 T」。
復活の布石は1974年に:エンツォ・フェラーリの采配と若き才能の登用
遡ること1年前の1974年、エンツォ・フェラーリは健康不安からの復帰を果たし、まずはチーム再建に着手することに。
スポーティングディレクターには26歳のルカ・ディ・モンテゼモーロ、ドライバーには25歳のニキ・ラウダを新たに起用。
経験豊富なクレイ・レガツォーニとコンビを組ませる体制で新シーズンに挑みます。
さらに、技術部門の要であるマウロ・フォルギエリも現場に復帰しており、彼が手掛けた312 B3-74は、1974年シーズンでレガツォーニがドライバーズランキング2位、フェラーリがコンストラクターズ2位に入るという活躍を見せています。
革新的設計が光る312 Tの登場:低重心・横置きミッションで性能向上
真の飛躍は1975年に登場したフェラーリ312 Tによって成し遂げられますが、フェラーリをF1の王者へと押し上げたのは以下のような技術的革新で、この“T(trasversale=横置き)”こそが312 Tの名前の由来であり、低重心&軽量設計が312 Tを最強マシンへと導いた最大の理由であったとされています。
- セミモノコック構造:チューブラースペースフレーム+アルミパネル+軽量GRPボディ
- 水平対向12気筒エンジン(3.0L):低重心化に貢献
- 横置きトランスミッション(trasversale):リアオーバーハングを軽減しハンドリング改善
1975年シーズン:苦難から頂点へ、ニキ・ラウダの快進撃
312 Tは、1975年シーズンの第3戦(南アフリカ・キャラミ)から投入され、デビュー戦ではラウダがクラッシュし5位、レガツォーニが16位と苦戦。
しかし、第6戦モナコGPでラウダが初勝利を挙げて以降、勢いはどんどん加速してゆき、そして最終戦アメリカGP(ワトキンズグレン)ではポール・トゥ・ウィンを決め、コンストラクターズタイトルも確定。
ここでフェラーリは11年ぶりの栄冠を手にしたわけですね。
- モナコGP:優勝
- スパ、アンダーストープ、ザントフォールト:連勝
- モンツァGP:3位でチャンピオン決定(レガツォーニ優勝)
312 Tシリーズの栄光と悲劇:F1の歴史に刻まれた名マシン
312 Tはその後も進化を続け、フェラーリのF1マシンとして長くトップ争いを演じ、合計で27勝、4度のコンストラクターズタイトル、3度のドライバーズタイトルを獲得しており、この312 Tシリーズは、フェラーリ史上最も成功したF1マシンとして語り継がれています(ニキ・ラウダが事故によって瀕死の重傷を負ったマシンとしても知られる)。
- 312 T2(1976年):ラウダがニュルブルクリンク(ドイツGP)で大事故も奇跡の復帰
- 312 T3(1977々):ラウダが再びワールドチャンピオンに返り咲き
- 312 T4(1979年):ジョディ・シェクターがチャンピオンを獲得
結語:フェラーリ312 Tは、時代を変えたF1の象徴
フェラーリ312 Tは単なるF1マシンではなく、フェラーリというブランドがF1において再び頂点に立つための象徴的存在であったと言ってよく、革新的な設計、若き才能の躍進、そして困難を乗り越えた闘志が重なった奇跡の1台です。
その精神は現在のスクーデリア・フェラーリにも息づいており、今なお多くのファンから愛され続ける理由もそこにあるのかもしれません。
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参照:Ferrari