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ランボルギーニ初の電気自動車「ランザドール(Lanzador)」正式発表。新セグメント「ウルトラGT」の創出を標榜し、そのデザインは宇宙船からインスピレーションを受ける

2023/08/19

ランボルギーニ初の電気自動車「Lanzador」正式発表。新セグメント「ウルトラGT」の創出を標榜し、そのデザインは宇宙船からインスピレーションを受ける

| ランボルギーニ・ランザドールは「2028年登場のBEV」だけではなく、広くランボルギーニの未来を示している |

そしてその「未来」は想像していたよりもずっと先に行っていた

さて、ランボルギーニはスーパーPHEV「レヴエルト」を発表し、ガソリンエンジンを搭載するウラカンとウルスの受注を終了させ、来年には後継モデルとしてそれぞれPHEVパワートレーンを搭載する後継モデルを発表すると言われており、つまりは「電動化まっしぐら」。

そして今回発表されたのが2028年に発表(もしくは発売)されるであろうピュアエレクトリックカーを示唆する「Lanzador(ランザドール / ランツァドール)」コンセプトです。

ランボルギーニ Lanzador(ランザドール )はどんなクルマなのか?

このランボルギーニ Lanzadorは上述の通りピュアエレクトリックカー(BEV)となりますが、「2+2」「ハイライダー」という、これまでのランボルギーニはおろか自動車業界でもほとんど類を見ないボディ形状を採用。

ランボルギーニは、このLanzaodrをして「日常的に乗れるランボルギーニ」と表現しており、そのパッケージングや性質、パワートレインを考慮すると、フェラーリ・プロサングエ、ロールス・ロイス・スペクターなど幅広いモデルに対抗しうるものと思われます。

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そこでさらにこのLanzadorを掘り下げてみると、Lanzadorは「明確で純粋かつ技術的なフォルムを特徴とし、パフォーマンスと前例のないオンボード・エクスペリエンスという点で全く新しいコンセプトを持ち、ランボルギーニの紛れもないDNAに忠実で、クラス最高のスポーツ性と運転の楽しさを提供する」とのこと。

1,341馬力超という驚くべき出力を誇り、ランボルギーニがこれまでに構築してきた”イタリアのスーパースポーツカーメーカー”というイメージを守りつつ、2021年に発表した脱炭素化を中心とするロードマップ「ディレッツォーネ・コル・タウリ」にマッチしたゼロエミッションカーであると同時に、「電動化によってしか達成できなかったこと」を盛り込んだ新世代のクルマ、というわけですね。

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ランボルギーニ ・ランザドールは「ウルトラGT」

そして今回ランボルギーニが主張するのは「LanzadorはウルトラGTという新しいセグメントを開拓する」。

ちなみにランボルギーニはウルス発表時にも「スーパーSUV(SSUV)」という呼称を用いていますが、近年のプレミアムカーメーカーは(アストンマーティン然り)従来のセグメントにとらわれない、独自のポジションを確保しようとする傾向が強く、これは「競合による不毛な争いよりも、排他性をもってしっかり利益を確保する」という考え方に基づいているものだと思われます。

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そこで今回、「初のEV」をリリースするにあたってランボルギーニが考えたのが「ウルトラGT」ということなのだと思われますが、ランボルギーニはLanzadorのキャラクターにつき「ランボルギーニ製スーパースポーツカー本来のパフォーマンスと、より強化された運転する楽しさ、そして日常的に運転できる車の多用途性を兼ね備える」「驚くべきボディスタイル、まったく新しいプロポーション、新しいインフォテインメント機能による比類のないオンボード体験、スーパースポーツカーであるレブエルトの超高性能要素とウルスのような多用途性を組み合わせたピュアなデザインを持つグランツーリスモ」だと表現。

加えて、ランボルギーニCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏は以下のように語ります。

Lanzadorでは、私たちのDNAを忘れることなく未来を見据えています。ランボルギーニによる、フロントエンジンを搭載した最初のクーペは、スポーティでエレガントなグランツーリスモでした。私たちの4番目となる生産モデルのコンセプトは、私たちの哲学であるスーパースポーツ、果敢に新技術に挑戦する姿勢、大胆不敵なデザインを組み合わせたものです。

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車体のデザインについてはランボルギーニらしい「シングルライン(一筆書き)」を継続しており、これは横から見たとき、フロントからリアに至るまで1本のなめらかなラインですっと描けるシルエットを指しています。

一方で新しいプロポーションを表現し、新しい自動車セグメントをも象徴することとなっていますが、事前にコメントされていたように宇宙船からインスピレーションを得ているといい(インテリアも同様であり、むしろインテリアのほうが顕著かもしれない)、ランボルギーニのデザイン部門を統括するミッチャ・ボルカート氏は最新のウラカン・ステラートだけではなく、様々な過去のモデルからもインスピレーションを得たと述べています。

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エクステリアデザインは、勇敢で意外性に富んでいます(ランボルギーニは勇敢=ブレイブ、意外性=アンエクスペクテッド、という言葉を最近多用している)。張りのあるクリーンなラインは、正真正銘のランボルギーニであり、セスト・エレメント、ムルシエラゴ、カウンタックLPI 800-4などの伝説的なランボルギーニの各モデルからインスピレーションを得ており、緊張感に満ちています。サイドビューは、ランボルギーニのシングルシルエットラインと、このコンセプトカーのために開発されたユニークなアーキテクチャーが組み合わされ、キャビンの典型的な傾斜がフロントとリアの両方からはっきりと見えることがわかると思います。同時に、車体下部のデザインは、ランボルギーニのスーパースポーツカーに見られるような、最先端の可動式でありながら一体化されたコンポーネントを統合した、スマートなエアロダイナミクス・アプローチによって形作られています。ルーフ高は約1.5メートルで、電動化されたグランドツーリスモは、力強く低い姿勢で道路を走り、キャビンのフォワードルックとダイナミックなボディ全体に施されたシャープなラインによって生み出された、比類なく低いプロポーションが印象的です。

たしかにこのサイドシルはミウラに採用されていた形状とよく似ており、「ランボルギーニらしさ」をよく表している部分かもしれません。

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なお、スリムなヘッドライトはカウンタックLPI 800-4からインスピレーションを得たもので、六角形のテールライトは言うまでもなくシアンからヒントを得たもの。

Y字モチーフや六角形(ヘキサゴン)など、ランボルギーニのデザインを当初から特徴づけてきた典型的なスタイルエレメントを(内外装含め)至るところで見ることができます。

ランボルギーニ Lanzadorはこんな技術を採用している

そこでランボルギーニ Lanzadorに採用される技術に目を向けてみると、最大のトピックは1メガワット(1,341馬力)以上を発生するクワッドモーター。

リア・アクスルにアクティブeトルク・ベクタリングを備え、ダイナミックなコーナリング挙動を実現するといいますが、現時点ではバッテリーの種類やサイズ、航続距離について詳細は語られず(エネルギーは新世代の高性能バッテリーから供給され、航続距離も長くなる、とだけプレスリリースに記載されている)。

ただしランボルギーニのチーフ・テクニカル・オフィサー、ルーヴェン・モア氏は以下のように語ります。

私たちにとって、電動化は制限を意味するものではなく、より高いパフォーマンスとドライバビリティを開発するためのインテリジェントな機会なのです。そのため、パワー、ドライビングプレジャー、パフォーマンスにおいて妥協はありません。これは、顧客が毎日楽しめるオール・エレクトリック・ランボルギーニなのです。

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さらにこのLanzadorに搭載されるのは「将来の電動化された高性能ランボルギーニを定義するソフトウェアと制御システム」を搭載しているといい、2028年に発売される特定モデルを示唆すると同時に「これからランボルギーニがどういった方向へと向かうのか、どういった技術を採用するのか」を示しているようにも思われます。

ランボルギーニは今後、すべてのアクティブ・コントロール・システム戦略を通じて、ランボルギーニを定義し、差別化していきます。私たちは、ランボルギーニの統合ドライビング・ダイナミクス制御をまったく新しいレベルに引き上げようとしています。これは、今までの市販スポーツカーでは不可能であったもので、しかしLanzadorではお客様にまったく新しいドライビング体験を提供することが可能となりました。パワー、パフォーマンス、航続距離、エアロダイナミクスの適切なバランスを見つけることは、開発中の最大の課題の一つであることは確かですが、これら挑戦はランボルギーニの研究開発の要なのです。

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このLanzador、そして新世代の「エレクトリック」ランボルギーニのために新しく「ランボルギーニ・ダイナミカ・ヴェイコロ・インテグレータ(LDVI)ドライビングダイナミクスコントロールシステム」が開発されており、これは”ハードウェアだけでなく、コンポーネントを管理する制御アルゴリズムにも重要な革新をもたらした”と説明されています。

”制御システムに供給されるセンサーやデータが多ければ多いほど、運転感覚やフィードバックのニュアンスを伝えるアルゴリズムがより洗練され、これによって、ドライビング・キャラクターをこれまで以上に正確に個々のドライバーに合わせて差別化することが可能になる”そうですが、これはウラカンEVOにて導入されたLDVIの進化型だと言えそうですね。

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そしてLanzadorはアクティブ・エアロダイナミクスを採用しており、航続距離の確保が最重要命題の一つとなるバッテリー電気自動車(BEV)において大きな役割を果たし、実際にパフォーマンスを向上させると同時に一回のバッテリー充電あたり航続距離を伸ばすことが可能に。

ハイスピードコーナリング時に要求されるダウンフォース、トップスピードでの可能な限り低い空気抵抗を両立するというランボルギーニの未来哲学「スマート・エアロダイナミクスのビジョン」を取り入れており、エアロデバイスをそれぞれの走行状況に適応させ、ドライバーの要望と航続距離のニーズに合致させることを目的としているそうですが、これもほかのランボルギーニ順次採用されることになりそうです。

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この他の重要技術としては、アクティブサスペンション、トルクベクタリング、可変ホイールスピードコントロールが挙げられていますが、とくにホイールスピードコントロールについては非常に高い自信を見せています。

これらの技術、とくにホイールスピードコントロールによって、新しいランボルギーニの挙動は、内燃エンジンを搭載したスーパースポーツカーと比較して新しいレベルに引き上げられます。このコンセプトカーとそのテクノロジーによって、ランボルギーニの新世代のクルマが、テクノロジー、パフォーマンス、デジタル化、ドライビングダイナミクスの面で新たな章を開くことを、ランボルギーニファンのみならず、技術志向のお客様にも確信していただけると確信しています。

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ランボルギーニ Lanzadorはこんなインテリアを持っている

そしてランボルギーニ Lanzadorにおいて、エクステリア以上にぼくが注目しているのがインテリア。

インテリアレイアウトは、ランボルギーニの「パイロットのようなフィーリングを味わえる」というデザイン哲学に忠実に従い、宇宙船=スペースシップに用いられるアイデアと組み合わされています。

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ランボルギーニはもともとコントローラーには非常にこだわる傾向があり、それはウルスに採用される「タンブレロ」に見て取ることも可能です。

そしてLanzadorではさらに先進的なコントローラーが装着されており、これ自体が「宇宙船のようだ」という印象(「パイロット・ユニット」と表現されている)ですね。

ちなみにアウディでは「今後、操作系についてはデジタルからアナログへと徐々に戻し、その理由は機会式腕時計のように、操作や動作を顧客に楽しんでもらいたいから」というコメントがなされていますが、ランボルギーニも(同じグループだけに)同様の考え方を持つのかもしれません。

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そのほかこういったスイッチや・・・。

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エンジンスターターのフラップにもランボルギーニらしさが表現されており、「パイロットフィーリング」を感じさせる部分でもありますね。

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なお、Lanzadorのインテリアに対するミッチャ・ヴォルカート氏のコメントは以下の通り。

「私にとって、ランボルギーニ Lanzadorは、今日までで最も先見的で未来的なコンセプトカーであり、圧倒的なルックスと新種の美しさを提供するものです。そのプロポーションは、これまでにない新しいもので、まったく新しい自動車セグメントを生み出す可能性を秘めています。Lanzadorは、スーパースポーツカーのボリュームを持ちながら、パイロット(乗員)の位置が少し高く、ウラカン・ステラートと同じです。ハイテクとデジタル化の時代に成長する新しい世代のためにデザインされ、より広い空間を提供し、革新的な素材を使用したインテリアによって、持続可能性を真に統合するというランボルギーニのアプローチにおいて、新しく新鮮なアイデアを示しています。Lanzadorは、将来のランボルギーニ・モデルの可能性を視覚化した、勇敢で意外性のあるコンセプトであり、エモーショナルなデザインとランボルギーニ・パフォーマンスのアプローチによって、真のウルトラGTを創造するものです。

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なお、EV専用設計プラットフォームを採用することで(フロントにエンジンを積む必要がないので)Aピラーを大きく前に出すことが可能となり、これによってガソリン車では実現し得ない広いインテリア空間を実現しているのも特筆すべき点。

キャビン全体が前に移動することで余裕あるシートレイアウトと荷室空間を実現でき、積載量確保のために無理に車来校部を延長する必要がなくなったものと思われます。

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Lanzadorのインテリアは持続可能な素材に関する企業哲学が反映されているといい、「先駆的でありながら、外観、手触り、品質、耐久性において一切の譲歩はなく」、今日の技術的可能性のパラメーターを示し、かつランボルギーニをサステイナビリティに関する新しいレベルに引き上げた、と紹介されています。

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そしてこのインテリアは、ほぼすべてイタリア製の持続可能な素材で作られているといい、高級メリノウールがダッシュボード、シート、ドアパネルを飾る一方、ステッチにはリサイクル素材の再生ナイロン/再生プラスチックが用いられ、スポーツシートのフォーム(クッション)には3Dプリントされた再生繊維が採用されるほか、センターコンソールやドアパネルなど、広範囲に組み込まれたカーボンファイバーにも再生カーボン(新しい2層複合素材)が使用されているのだそう。

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ランボルギーニはこうやって「サステイナブル」を実現する

Lanzadorにはサステイナブル・レザーが採用されていますが、これは特に環境に優しい方法で特別な水でなめしたレザーを指し、この水はオリーブオイルの生産に由来するもので、このオリーブオイル製造の残留水は、化学メーカーがなめし剤の製造に再利用することもできるといい、少し前に(やはり同じグループに属する)ベントレーが発表した「エコなレザー」と同様の素材や製法かと思われます。

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一時はレザーをやめると宣言したベントレー。やはり「高級車にレザーは不可欠」としてレザー回帰、ただしエコな手法でレザーを製造し新型車に採用
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メリノウールについて触れておくと、ランボルギーニは、人工的に加工されたウールの代わりにオーストラリア産メリノ種の羊のウールを使用していますが、羊は毎年(毛が伸びすぎるので)毛を刈っており、その毛を使用すれば化石素材(つまり石油)から工業生産される合成繊維とは異なって「環境負荷が低い」わけですね。

そしてこのウールは年に一度、船でヨーロッパに輸入されるそうですが、これを加工したメリノウールは生分解性があり、かつしなやかでソフトな肌触りを持つことについても言及されています。

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再生カーボンに関し、これはランボルギーニのDNAと持続可能性の要求に合うように開発された複合材料の新しいアプローチであるとされ、この新しい素材は美観層(目に見える側)と、性能要件に応じた複数の内部層(構造層)にて構成され、カーボンの美的・技術的特性を維持すると同時に、カーボンファイバーの使用量を減らすことができるとされています。※内部層=インナーレイヤーについてはリサイクルカーボンやリサイクルPETフォームが使用されているとのこと

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そのほか、Ranzadorには新しい合成糸が使用されていますが、この合成糸の一部は、海洋から回収されたリサイクルプラスチックから作られており、プラスチックを細かく破砕し、洗浄し、乾燥させ、高圧でプレスし、細いナイロン糸に加工したもので、新たな資源を消費することなく自動車に使用する部品を生産できることを意味しており、新たに石油から作られるプラスチック部品と比べ、80%も環境に優しいのだそう。

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そしてこういった持続可能な生産と省資源は、スポーツシートに使用されている(発泡体のような)プラスチックの新しい3Dプリントプロセスにも活用され、このFDM(溶融積層造形)印刷と呼ばれる新しい印刷材料は、使用済みペットボトルなどのリサイクル廃棄物から作られている、とのこと。

この素材は非常に汎用性が高く、安定した無害なプラスチックであり、かつ機械的、熱的、化学的耐性に優れ、シート生地の下(内部)に使用できるため、3Dプリントされたシートフォームのベース素材として理想的だといいます。

リサイクル素材の割合は、廃棄物の発生源にもよるものの45~100%だとされ、Lanzadorでは前方面にわたり環境への配慮がなされていることがわかりますね。

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参照:Lamborghini

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