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第2世代のホンダNSXは当初「V10、フロントエンジン」として企画されながら、なぜ「V6+ハイブリッド」となったのか

第2世代のホンダNSXは当初「V10、フロントエンジン」として企画されながら、なぜ「V6+ハイブリッド」となったのか

| ホンダはNSXを常に「新しい時代の開拓者」として開発してきた |

その意味では「最新の技術」を採用することはNSXにとっての責務でもある

さて、初代ホンダNSXは最も扱いやすいスーパーカーの一つという評判を確立し、「何かを犠牲にしなくてもいいスーパーカー」としてフェラーリやランボルギーニの認識を変革させたと言われていますが、走行性能はもちろん、どんなワインディングロードやサーキットでも卓越したパフォーマンスを発揮する一方、十分な快適性と高級感を備えたインテリア、さらにはホンダならではの信頼性によって日常的な使用をも可能としています。

そしてこの初代NSXは残念ながら2005年に(累計7,394台が生産され)生産終了となったものの、ホンダは資産としてのNSXの重要性を認識しており、すぐにこの重要なモデルの後継車を開発することを発表したわけですね。

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それでも新型ホンダNSXが登場するまでには10年以上を要する

しかしそれでも新型NSXが発売されるまでには10年以上の時間を要し、その間の紆余曲折の結果として「当初計画されていたものとは大きく異なる」スペックを持って登場していて、ここではなぜ「第二世代のNSXが、当初計画されていた自然吸気V10からハイブリッドV6へと変遷したのか」という経緯を追ってみたいと思います。

初代NSXは1991年に登場し、ホンダは競争の激しいスーパーカー市場でフェラーリやポルシェと戦うためにこのモデルを投入したという経緯があるため、この市場での勝利を勝ち取るために「ただ速いだけでなく、日常使いにも適した実用性と信頼性」を兼ね備えた、それまでには存在しなかったスーパーカーを目指すことに。

これは当時の「緊張ではなく、開放するスポーツカー」というNSXのキャッチフレーズにもあらわれているとおりですが、それまでのスーパーカーが「ドライバーに対して究極のスキルと極度の緊張」を強いたのに対し、NSXでは「リラックスし、誰もが高性能を引き出せる」ことを目標としていたわけですね。

開発プログラムそのものは1980年代半ばから進められ、様々な試練を経て発売されたこのモデルはホンダの掲げた目標をすべて達成し、2005年に至るまでの長きにわたり生産されていますが、初代NSXには二つの主要なバージョンがあり、初期型の「NA1」、そして1998年のマイナーチェンジ(フェイスリフト)で登場した「NA2」。

そしてNA2では、3.2L V6エンジンへの変更や6速MTの採用など、多くの技術的進化が加えられたことが特徴です。

第2世代のNSXは初代の販売終了後「早々に」開始される

「第2世代」のNSXについては、2007年には当時のホンダ・アメリカCEOが「第2世代NSXの開発が進行中である」と発表し、ここでは2010年の市場投入を目指していると述べています。

実際のところホンダは2007年の北米国際オートショーで「アキュラ・アドバンスト・スポーツカー・コンセプト(ASCC)」を発表し、新型NSXにおける今後のデザイン方向性を示すのですが、しかしこのASCCにて特筆すべきは初代NSXのミッドシップ配置とは異なり、フロントエンジンレイアウトを採用していたこと。※さらにはSH-AWDベースの4WDであった

ちなみにこのエンジンは450馬力を発生する5リッターV10という大きなもので、もしかするとこれをリアミッドに収めることが困難であったのかもしれません。

とにもかくにも、この時点だと「第2世代のNSXは(ピュアスポーツではなく)高級GTカーとして」開発が進められていて、しかし折悪しく発生した(リーマンショックに端を発する)2008年の世界金融危機により、ホンダは第二世代NSXの開発を中止するという苦渋の決断を下すことになるわけですね。

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ちなみにこの「V10エンジンをフロントに積む第2世代のNSX試作車」はその後HSV-010 GTとして2010年~2013年にかけスーパーGTシリーズへと参戦し、ホンダが「なんとか開発コストを少しでも回収しようと考えたこと」がわかります。※HSVはHonda Sports Velocityの略

そしてこの経済危機が落ち着いたのち、ホンダは再びNSXの開発をスタートさせ、しかしながらその方向性は大きく変化。

具体的には「V10エンジンが完全に廃止され、代わりにハイブリッドV6を採用することが決定」されるのですが、これは当時の「環境問題への配慮の高まり」を反映したもので、ホンダは効率とパフォーマンスとのバランスを重視したわけですね(逆に、リーマンショックがなければNSXはV10+フロントエンジンにて登場したのかもしれない)。

2012年になるとコンセプト版の新型NSXが公開され、ハイブリッドシステムを搭載することが正式に発表されていますが、この選択単に環境負荷を減らすためだけではなく、エレクトリックモーターを活用したトルクベクタリングによるハンドリング性能の向上も狙ったものである、とも(当時)コメントされています。

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ただし「V6+ハイブリッド」と決定した後も開発は簡単には進まず、V6エンジンそのものの配置も「横置き」「縦置き」と変遷し、ようやく正式発表がなされたのは2015年、そして同年末から生産が開始されることに。

ちなみに初代NSXは「New Sportscar X」を表していたものの、この新型NSXでは「New Sports eXperience」を示しており、さらにホンダは「ヒューマン・センタード・スーパーカー(人間中心のスーパーカー)」と位置づけ、ドライバーの楽しさを最優先に設計したと述べています(そしてもちろん、初代NSX同様に日常走行にも適した快適性も持ち合わせていた)。

残念ながら、この第二世代NSXは初代モデルほどの長寿命を持つことはできず、2021年にホンダは販売不振を理由にNSXの生産終了を発表し、最終モデルとして2022年に「NSX Type-S」をリリースしたのは記憶に新しいところ。

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しかしながらその後まもなくホンダは「第三世代のNSX」開発に言及し、現在のところ2027~2028年の市場投入を目指して”フルエレクトリック”となる新型NSXを開発していると噂されています。

初代NSXは「スーパーカーのあり方」を再定義するクルマであり、二代目NSXは環境に配慮し時代を先取りしたスーパーカーとして登場していて、そして第三世代ではこれまた世の中の流れを反映したEVとしての登場になると見られており、つまるところNSXはそれぞれの時代背景を反映した先進的なスーパーカーであったのだと考えてよく、そして初代・二代目NSXがスーパーカー市場に与えた影響を考えると、次世代NSXがどのような革新をもたらすのか非常に楽しみでもありますね。

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参照:Honda

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