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豊田章男会長「BEVに関する私の考えは、地球温暖化削減に貢献する重要な技術の一つではあるが、唯一の解決策ではないということだ」。トヨタがBEVに集中しないその理由とは

2023/07/15

豊田章男会長「BEVに関する私の考えは、地球温暖化削減に貢献する重要な技術の一つではあるが、唯一の解決策ではないということだ」。トヨタがBEVに集中しないその理由とは

| たしかに「EVのみ」に自動車業界全てが向かうのはあまりに危険すぎるのかもしれない |

現在は「かつてないほど」自動車メーカー間で意見が割れている

さて、トヨタは「EVへのシフト」についてはほかの自動車メーカーと意見を異にしており、たとえばラインアップを全てEVにするというメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ベントレーらとは反対に、(BMWとともに)ガソリンエンジンを残し、EVオンリーにはしないという立場を貫いています。

トヨタは常々「二酸化炭素排出量を削減し、最終的には地球温暖化を解決する唯一の解決策はEVではない」と主張していますが、そのひとつの理由としては「エレクトリックモーターやバッテリーに使用する希少金属類の埋蔵量や採掘ペースを考慮すると、十分な数のバッテリーEV(BEV)を生産することが難しく、よって同じ量の希少金属しか使用できないのであれば、少ないBEVよりも、多くのハイブリッドカーを生産して普及させ、実際に走行させたほうが地球トータルで見て環境に良いから」というものがあります。

トヨタ・プリウス
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さらにトヨタはインフラの問題についても指摘

そして今回、豊田章男会長がカーメディアに対し、あらためて「BEVに関する私の考えは、地球温暖化削減に貢献する上で最も重要な技術のひとつではあるが、唯一の解決策ではないということだ」という自身の考え方を主張し、「より持続可能な未来へ向けてどのようにシフトしていくのかについて、検討すべき代替案はたくさんある」とも。

トヨタ
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実際のところ、トヨタが発売しているEVはbZ4X(とレクサスRZ)のみであり、これはライバルメーカーに比較すると「かなり」少ない数ですが、今回は上述の「生産に関する問題」のほかにもEV展開に消極的な理由を掲げており、それは「充電インフラ不足」。

豊田章男会長は「すべての人が包括的な充電インフラを利用できるわけではなく、それゆえ完全なEV企業として進出することに消極的であり、充電インフラが伴わないままにEVシフトが進められると、多くの人が影響を受ける」と述べています。

EV

たしかにEV購入検討者の2大心配事といえば「充電インフラ」「航続距離」であり、トヨタの言うことも「もっとも」かもしれません。

ただ、ここでぼくが思うのは「では、テスラのように、自社で充電ネットワークを設置し、EVの普及に努めればいいのではないか」ということですが、しかしトヨタとしては(今の時点で)そこまでしてEVシフトを進める必要はなく、ほかに優先してやるべきことがある、というスタンスなのだと思われます(トヨタの考えは理解できる)。

そしてその「やるべきこと」とは、先般発表されたソリッドステートバッテリーの実用化と航続距離の伸長、それによって充電に関する不安を取り除くということなのかもしれません。

トヨタ
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トヨタは電動化以外の手段も考慮

なお、トヨタは「水素」を推進する数少ない自動車メーカーのひとつ。

この水素については自動車メーカー間で対応が大きく分かれていて、トヨタのほかにヒョンデとBMW(ロールス・ロイス含む)は水素に可能性を見出しており、ポルシェも一定のテストを行っていると報じられています(ただしポルシェの場合はFCEVではなく燃料として)。

フォルクスワーゲン
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そしてトヨタは「燃料」として水素を使用することを考えているほか、燃料電池電気自動車(FCEV)市場にも進出しており、水素を動力源とするMIRAIをすでに投入済みで、さらにはモータースポーツにて水素自動車を走らせ高いパフォーマンスを発揮できることを証明することによりこの技術を推進しています。

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一方でポルシェやランボルギーニが「未来」だと信じる合成燃料につき、豊田章男会長は「コストがかかりすぎる」ともコメントしており、よってここにはあまり注力しない可能性も。

いずれにせよ、ここまで各自動車メーカーの間で「将来の技術」に対する考え方が分かれる時代も今までにはなく、この100年に一度と言われる自動車産業の変革期において、「一つの手段」に集中することはある種のリスクを伴うことは間違いなく(法規制でコロっと風向きが変わることがある)、よって(多少の非難やロスはあれど)トヨタやBMWのように「複数の手段」や代替手段を用意しておくほうが”なにかがあった時の”ダメージが少なくて済むのかもしれませんね。

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参照:Automotive News Europe

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