
| トヨタは中国市場を「諦めず」現地自動車メーカーと徹底抗戦の構え |
トヨタにとって中国は「まだまだ伸ばせる」市場でもある
2025年4月22日、トヨタ自動車株式会社と中国・上海市政府が「新エネルギー車(NEV)の開発に向けた戦略的協力協定を締結した」と発表。
今回の協定の中核となるのは、レクサスブランド初の完全独資による電気自動車(EV)工場の建設で、場所は上海市金山区に決定しています。
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日本メーカー初の「独資EV工場」──トヨタが次に狙うもの
この協定は、トヨタにとっても上海にとっても大きな転機となり、というのもこれまで中国では外資系自動車メーカーの進出は”合弁”が一般的でしたが(当初、海外自動車メーカーが中国に工場を建設する場合、法律によって合弁会社の設立が義務付けられており、しかし少し前に緩和された)、今回の完全独資(中国資本を含まない)による工場設立は、テスラの上海ギガファクトリーに次ぐ2例目、日本メーカーとしては初の快挙となるから。
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総投資額は約2,000億円規模、レクサスEVと次世代バッテリーを生産
契約式に出席した関係者によると、トヨタはこのプロジェクトに146億元(約2,020億円)を投資予定。
最初の用地取得面積は112万平方メートルで、この施設では研究開発・製造・販売が一体化され、レクサスブランドの電気自動車と先進的なバッテリー技術の開発・生産を行う予定であると報じられています。
中国産レクサスでは国産部品比率95%超え、価格は最大20%安く?
注目すべきは現地生産化の徹底ぶりで、報道によると、個々で生産されるレクサスのEVに使われる部品の95%以上が中国国内製造になる予定だとされ、これによりコストを大幅に抑えられる見込みなのだそう。
よって、(中国市場では)それまでの輸入車と比べて最大15〜20%の価格引き下げが可能になるとみられています。
トヨタは合弁頼りからの脱却、中国EV市場での巻き返しへ
これまで中国市場での展開は合弁企業頼りだったトヨタですが、今回の動きは戦略の大転換。
中国でのEV販売はまだ全体の1%未満と苦戦しているトヨタにとって、急成長する現地メーカーや海外勢への対抗策として、この完全独資EV工場は大きなカギを握ります。
一方、レクサスは2024年に累計1,800万台を販売し、輸入高級車ブランドとしては依然トップの地位を維持。
しかし、中古車の残価率は2021年の87.5%から、昨年は59.35%に大きく低下しブランド価値の再強化も求められているというのが現状です。
上海はトヨタ/レクサスのEV拠点としてさらに存在感増す
このレクサスEVプロジェクトは、テスラのギガファクトリーに続く“世界的EVプロジェクト第2弾”として、上海の「世界的EVハブ都市」としての地位をより一層強化することになりますが、トヨタは2027年までに電気自動車のラインアップを15車種前後に拡充し、年間100万台のEV生産を目指すという計画も発表済み。
その中でも中国市場は、「グローバルEV戦略の中核」として位置づけられており、2030年に向けた“100万台EV販売”の鍵を握る存在となっています。
今後の焦点は、成長市場での「キャッチアップ」
現在の中国市場では「海外の自動車メーカー離れ」「中国車(国産車)選好嗜好が顕著」といった状況が見られ、つまり中国の消費者が中国車を選ぶ傾向が強くなっています。
その理由のひとつは「価格」、そしてもうひとつは「(自動車としてではなく、家電的意味合いでの)テクノロジー」にあると言われますが、この特殊性に対応することが難しく、かつ「中国だけのトレンド」を追うわけにもゆかず、いくつかの自動車メーカーは中国市場からの撤退を決め、あるいは注力度合いを減らしているという状況も。
そんな中でトヨタは(メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンとともに)中国市場を諦めない自動車メーカーのひとつでもあるわけですが、トヨタおよびレクサスにとって、この新工場の成功は、激変するEV市場で生き残るための試金石。
今後の動向は、中国市場のみならず、グローバルな自動車業界にとっても大きな注目ポイントとなりそうですね。
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