
Image:CATL
| 車載が実現すればガソリン車も「敵わない」実用性や効率性を発揮するものと思われる |
ソリッドステートバッテリーを待たずとも、バッテリー性能はまだまだ進化を遂げる余地がある
2025年4月21日、中国のバッテリー大手CATL(寧徳時代)は自社開催の「テック・デイ」イベントにおいて、電気自動車の可能性を大きく広げる3つの最新バッテリー技術を発表しています。
いずれもトヨタや日産,BMWなどが「未来」だと目するソリッドステートバッテリー(全固体電池)ではないものの、既存バッテリーに比較すると優れた性能を持っており、ここでそれらを見てみましょう。
-
-
メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か
Mercedes-Benz | 現時点では多数のバッテリーメーカー、自動車メーカーがソリッドステートバッテリーの実用化に王手をかける | ただし「実現」できたとしても価格や生産ボリュームなどの課題も残 ...
続きを見る
1. 1500kmの航続距離を実現:「Freevoyデュアルパワーバッテリー」
最大の目玉は、CATLが開発した「Freevoyデュアルパワーバッテリー」。
このバッテリーは1回の充電で最大1500km(約932マイル)もの走行を可能にし、ハイブリッド車に対してもピュアEVが真っ向から勝負できるポテンシャルを持っています。
このバッテリーは“デュアルコア設計”が特徴で、ひとつのバッテリーパックの中に主エネルギーゾーンと航続距離延長ゾーンの2つの異なるセル構成を採用。
これにより、ハイパワーと長距離走行の両立が可能となるわけですが、航空機の“デュアルエンジン設計”のように、安全性も高められています。
特に、航続距離延長ゾーンでは、従来の黒鉛アノードを使わない自己発電型の負極技術を採用し、これによりバッテリー容量とエネルギー密度が飛躍的に向上しているのだそう。
On April 21, 2025, CATL unveiled three groundbreaking EV battery products at its inaugural Super Tech Day: CATL Freevoy Dual-Power Battery, CATL Naxtra Passenger EV Battery, and CATL Second-generation Shenxing Superfast Charging Battery, as well as CATL Naxtra 24V Heavy-Duty… pic.twitter.com/lJ4tbNJX5n
— CATL (@catl_official) April 22, 2025
2. 超高速充電を実現:「第二世代 Shenxing バッテリー」──5分で520km
CATLは、充電性能を大幅に進化させた第二世代「Shenxing 超急速充電バッテリー」も発表。
最大充電速度は12C、ピーク出力は1.3メガワット超。
対応ステーションでは、たった5分で520kmの航続距離を追加できるという驚異的な性能を誇ります。※2023年に発表された初代Shenxing(10分で400km)に比べて大幅な進化を遂げている
寒冷地でもその性能は健在で、-10℃でも5%→80%までわずか15分で充電可能、さらに放電時には830kW(約1113馬力)もの出力を維持できます。
3. 2025年量産開始予定:ナトリウムイオンバッテリー
最後に発表されたのは、今年12月から量産予定のナトリウムイオンバッテリー。
この新技術は、EVとHEVのどちらにも対応し、エネルギー密度は業界最高の175Wh/kg。ピュアEVで最大500km超の航続距離、ハイブリッド車ではEV走行だけで200km超を可能にします。
なお、このナトリウムイオン電池の特筆すべき点は、(一般にバッテリー性能低下の原因となる)寒さに極めて強いこと。
-30℃の環境でも30分で30%→80%の充電が可能で、容量の93%を維持するほか、0%状態でも高速道路を120km/hで走行可能という、従来のリチウムイオンでは不可能だった耐寒性能を実現しています。
The next leap in battery tech is about to be revealed.
— CATL (@catl_official) April 21, 2025
Join us LIVE for CATL TECH DAY 2025, where we break through the limits of battery and redefine what’s possible.
📅 Date: April 21st, 2025
🕒 Time: 15:00 (UTC+8) https://t.co/ZycVMDxbTx
加えて安全性にも優れており、圧縮・針刺し・電動ドリル貫通・ノコギリ切断といった厳しい試験にも発火や爆発なしでクリアし、極めて高いセーフティ性能を誇るようですね。
これらの発表を受けてCATLの株価は同日2.62%上昇(上海総合指数は0.45%上昇)し、時価総額は1兆元(約1370億ドル)を再び突破していますが、これは同社への「高い期待値」の表れであると考えていいのかも。
実際のところ、航続距離1500km超、5分での超急速充電、寒冷地でも使える新型バッテリー……これらの技術により、EVはついに“妥協のない選択肢”となり、ハイブリッド車やガソリン車を凌駕する日も遠くないかもしれません。
合わせて読みたい、バッテリー関連投稿
-
-
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載市販車第一号は中国から?チェリー(奇瑞汽車)が全固体電池生産のため世界初となるギガワット級工場建設を開始、コンセプトカーも公開
Image:Autohome | ソリッドステートバッテリーは「ある種の危険性」をどうしても排除できず、車載が困難だとされている | いずれのメーカーも「あと一歩」のところまで来ているとは言われるが ...
続きを見る
-
-
EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及
| 早ければ2020年に実現するとしていたメーカーも存在したが、現時点では実用化の目処は立っていない | もしかすると、このまま永遠に実現できない「幻の技術」となる可能性も Image:CATL さて ...
続きを見る
-
-
バッテリー製造最大手、CATLが「電動旅客機も実現できる」新型蓄電池の実用化を発表!ソリッドステートバッテリーの実用化前にそれ以上の性能を実現できそうだ
| 今年後半から生産が開始されるといわれるものの、実際に車両に採用されるまではそれを信じることが難しい | バッテリーメーカーが言うのであれば間違いはなさそうだが さて、バッテリー製造最大手のCATL ...
続きを見る
参照:CarnewsChina