Image:Rimac
| リマックがネヴェーラの開発を開始した7年前、「EVはクールだと思われていた |
まさかこの短期間でEVに対する認識がここまで変わろうとは
ロンドンにてフィナンシャル・タイムズ紙主催による「Future of the Car」カンファレンスが開催され、そこで講演したリマックの最高経営責任者(CEO)、メイト・リマック氏が「自社は電気自動車専門メーカーではなくテクノロジー企業であり、リマックは常に”最もエキサイティングなことは何でも”やってゆく」とコメント。
報道によると、リマックはネヴェーラの予定生産台数150台すべてをまだ売り切っておらず、メイト・リマック氏は「もはや富裕層はエレクトリックハイパーカーを欲しがっていない」という衝撃の発言も行っています。
電気自動車は「もうクールではない」「時代は代わった」
メイト・リマック氏によると、7年以上前にリマックがネヴェーラの開発を開始したとき、「電動車そのものがクールだった」。
しかしそこから時代が変わり、世界的な法律や規制によって電気自動車が大きくプロモートされ、エレクトリックパワートレーンは目新しいものではなく生活必需品レベルのクルマに採用される技術であるかのように思われ、さらには低価格EVが多数登場するにつれ、「ピュアエレクトリックハイパーカーは魅力を失ってしまった」とも。
規制当局と一部の自動車メーカーは、EVの普及をあまりに強く押しつけているので、少し前とはシナリオが変わってしまいました。彼らは私たちが望んでいないものを私たちに押し付けているので、人々はこの強制適用に少し反発しているのです。私は、すべてはメリットに基づいている必要があると思います。だから、製品はより優れたものでなければなりません。
メイト・リマック ブガッティ・リマック CEO
たしかに当時はテスラ・モデルSがその加速性能をもって無双ぶりを発揮していた時代であり、「もはやガソリン車ではEVに勝てない」という風潮となっていたのもまた事実。
しかしそこから様々なEVが登場するに際してEVそのものがありふれた製品となってしまい、さらには多くの人に手に渡ることで逆にその不便さが叫ばれるようになったうえ、最近では「EVからガソリンへと回帰する」という傾向も見られます。
ちなみに中国では(少し事情は異なりますが)EV=安物というイメージがあるために富裕層はEVを選ばないといい、いかに税金が高く、たとえ様々な優遇措置が得られないとしてもお金持ちはガソリン車を選ばないといい、現在では同じことが欧米で起きているのかもしれません。
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さらにメイト・リマックCEOは「トップエンド(富裕層)の人々は、自分自身を差別化したいと考えています」とも語り、続けて「アップルウォッチは、(職人が作った高級機械式クロノグラフよりも)あらゆる点で優れた機能を備えています。アップルウォッチは1,000 種類以上のことができ、はるかに正確で、心拍数を測定できます。しかしアップルウォッチに20万ドルも払う人はいないでしょう。つまりはそういうことなのです」とも。
今後リマックはどこへ向かうのか
メイト・リマック氏は、電動ハイパーカーにはまだ市場があり、ネヴェーラについては「電動ハイパーカーの中で最も売れている」と述べ、生産台数150台のうち50台以上が顧客に納入されたとコメント。
しかしながら、自身がCEOを務めるブガッティ・リマックでは「シロン後継ハイパーカー」ではピュアエレクトリックの道を選ばずにV16という前代未聞のマルチシリンダーガソリンエンジンを選択していて、その理由がまさに上で述べたような「差別化」を重要視したがためということになりそうですね。
実際のところ、メイト・リマック氏は「内燃機関ではできないことがあるが、それは電気でなくてはならないという意味ではなく、それよりもブガッティは他のクルマではできないことを行い、ユニークな体験を提供することが大切」と語っており、それが「V16エンジン」という比類ない存在であったのだと思われます。
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そして気になるのは(ブガッティではない)リマックのほうで、この状況であればネヴェーラの後継モデルを期待することは難しく、しかし一旦リマックは会社規模を拡大してしまったので「後戻り」はできない状態。
つい先日には「ロボタクシー」を予告するなど新しい動きを予感させていますが、メイト・リマックCEOは「リマックは電気だけを扱っているわけではありません。その時点で最もエキサイティングなことは何でもやっているのです。液体石油ガス(LPG)、水素、さらにはディーゼルさえも将来のリマック製品の燃料となる可能性があります」と語り、つまりは人々の認識を変革するという目的のため、あらゆる手段を駆使するのがリマックである、ということになりそうですね。
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参照:Autocar