| ラフェラーリでホイールや跳ね馬をブラックにペイントする例は珍しい |
ラフェラーリはハイパーカー御三家の中でも特段の価値を誇る
2013年のジュネーブ・モーターショーにて発表され、ポルシェ918スパイダー、マクラーレンP1と並び「ハイパーカー御三家」と言われたラフェラーリ。
その御三家の中でももっとも高い市場価値を誇るのがラフェラーリですが、今回いかにもフェラーリらしい「ロッソ・コルサ」にて仕上げられた個体が4億1400万円という最高予想落札価格とともにオークションへと登場することに。
なお、ラフェラーリは「スペチアーレ」としては6代目に相当するフェラーリ初のハイブリッドカーであり、同時にフェラーリ史上最速かつ最もパワフルなロードゴーイングカー(現在でもそれは同様である)。
ラフェラーリは運動性能のみではなく、テクノロジー面でも「フラッグシップ」だった
フェラーリのスペチアーレは288GTOにはじまりF40、F50と続きますが、ここまでは「走行性能を極限まで追求したレーシングカーの公道版」といった性格が強く、しかしエンツォフェラーリからはやや路線が変わり、「テクノロジーにおける限界領域を広げる」性質が加わったとも認識しています(フラッグシップスポーツカーのあるべき姿を、最新の技術で表現していた)。
そしてその路線をさらに強化して登場したのがラフェラーリであり、F1テクニカルディレクターのローリー・バーンが設計したカーボンファイバー製モノコックをベースに、2009年からグランプリで使用されているKERS(運動エネルギー回生システム)の強化版を採用したことが大きな特徴。
KERSは他のハイブリッドシステムと同様に、従来のガソリンエンジンに加えてエレクトリックモーターを使用しますが、エレクトリックモーターはゼロ回転から最大トルクを発揮するため、加速が格段に向上するというメリットが存在します(2009年のベルギーGPでは、KERSを搭載したフェラーリのキミ・ライコネンがジャンカルロ・フィジケラの前に立ちはだかり、”ライコネンの勝利はハイブリッドシステムのおかげ”だとフィジケラがコメントしたことも)。
ラフェラーリに採用されるハイブリッドシステムは「HY-KERS」と名付けられ、6,262ccの65度V型12気筒エンジンに120kWの出力を持つエレクトリックモーターを組み合わせ、7速デュアルクラッチ(ゲトラグ製)トランスミッションを介して950馬力と715lb ftのトルクを発揮し、0-100km/h加速はわずか2.9秒、0-300km/hは15秒、最高速度は350km/hという驚異的なスペックを誇ります。
フィオラノサーキット(フェラーリのテストコース)では、エンツォフェラーリより5秒以上速いペースで周回したといいますが、このラップタイムはハイブリッドシステムによる賜物だと考えてよく、低速トルクをHY-KERSが受け持ち、高回転域をガソリンエンジンが受け持つことによって「あらゆる速度域で」最適な加速が得られるようになっています。
なお、フェラーリはここで燃費向上のためではなく「速く走るため」にこのハイブリッドを使用しており、これが後のSF90ストラダーレ / SF90スパイダー、296GTB / 296GTSのハイブリッドセットアップに繋がったのだと考えて良さそうですね。
ラフェラーリのハイブリッドシステムには電子制御トラクションコントロールが組み込まれ、第3世代の電子制御ディファレンシャルが採用されていて、足回りだとフロントはダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式のサスペンションにアクティブダンピングを装備し、ブレーキシステムはフロント398mm、リア380mmという巨大なカーボンセラミックローターを持つブレンボ製、タイヤサイズはフロントが265/30 R19、リヤが345/30 R20というサイズです(この頃から、後輪駆動のスポーツカーであってもフロントタイヤが太いという流行がはじまったように思う)。
ラフェラーリは画期的なエアロダイナミクスを持っている
フェラーリが得意とする数値流体力学を応用したコンポジットボディは、スクーデリア・フェラーリのF1マシン同様にフェラーリ社内で製造されており、スカラップは、フロントホイール周辺から空気を吸い上げ、アクティブフロントディフューザーが生み出すダウンフォースを増大させるとともに、リアに取り付けられたラジエーターに空気を送り込む役割を果たします。
アンダーボディに設けられたガイドベーンは、フロント・ラジエーターへの流れを自動的に減少させて抵抗を低減し、ダイナミック・エアインテークにラムエア効果をもたらし、高速走行時において5馬力を追加する、とされていますね。
車体後部だと、電子制御のスポイラーがドラッグとダウンフォースを最適化し、ダイナミック・ディフューザー・フラップがクルマを路面に吸い付ける効果を発揮させ、これらによって、時速200kmでの走行時にはコーナリング時で最大360kgのダウンフォースが加わり、同じ速度での直線走行時には90kgまで減少して空気抵抗を軽減することに。
なお、このラフェラーリの「跳ね馬(プランシングホース)はクロームではなくブラック仕上げ。
フロントのエンブレムは意外なことに(空気抵抗削減のため)くぼみに埋められるのではなく、ボディパネル表面への「貼り付け」。
ホイールはマットブラック(見た目的にはマットと言うよりはサテン)、そしてブレーキキャリパーもブラック、そしてホイールセンターキャップはカーボン仕上げとなっており、レッドのボディとのコントラストが強く出ています。
ラフェラーリのカーボンファイバー製モノコックは軽量、そして強靭
ラフェラーリに採用されるカーボンファイバー製モノコックは、エンツォフェラーリと比較してねじれ剛性が27%向上しているにもかかわらず、約20%軽量化されているといい、15セル構造のバッテリー8個を組み込んだHY-KERSを搭載しながらも、ラフェラーリのサイズはエンツォフェラーリから大きく変わらず、一方で重心は35mm低くなり、バランスと安定性がさらに向上しています。
ビジュアル面では、330P4や312Pのようなクラシックなレーシングアイコンと、現代F1のエキサイティングなイメージを組み合わせた張りのあるスタイリングに仕上げられており、テクノロジーとスタイリングとが非常に高いレベルにて相互に作用している、と捉えることもできそうですね。
オートカーはかつて、「ラフェラーリは、おそらく世界で最も速く、最もエキサイティングなハイパーカーだ」と評していますが、唯一の問題点は「入手することが極端に難しい」ということで、購入するにはフェラーリからの招待を受ける必要があり、その招待を受けるには(国や地域によって差があると思いますが)最近新車のフェラーリを2台以上購入し、過去10年間に6台以上所有していることが条件とされています。
そしてもちろん、招待を受けた人々は「100%」フェラーリの招待に応じてラフェラーリを購入したといい、今回の出品者もそういった幸運なオーナーの一人。
このラフェラーリ(シャシーナンバー203166)は新車としてロンドンのオーナーへと納車され、2014年7月17日に最初の登録が行われ、そしてこのオーナーは多くのオーナーがそうするように「ガレージにしまったまま」にせず定期的に乗っていたといい、しかししっかりとメンテナンスを行ってきたことも証明されています。
出品に際してはフェラーリのスペシャリストであるディック・ラヴェット、そしておそらくはこのラフェラーリの購入元であるH.R.オーウェンによる3万ポンドの領収書が添付され、最新の整備は2022年3月に行われたものだという記載があります。
そのほか、限定モデルとしての生産時の様子を収めた貴重な「イエローブック」のほか、カーカバー、モノグラム・フォトアルバム、オーナーズマニュアル、革製オーバーナイトバッグ、牽引キット、タイヤ空気入れが付属しているようですね。
ちなみにラフェラーリは499台のみの限定モデルですが(のちに1台が追加されて500台に)、シリアルナンバーは打たれず、かわりに「499台のうちの1台(1番ではない)」であることを示すプレート付き。
現在では多くの限定スーパーカー / ハイパーカーが同様の表記を行っていて、これは「シリアル何番が欲しい」という顧客の要求に答えることが難しいためだと思われます。※ちょっと前まではシリアルナンバーが刻印されることが多かった
こちらは内装色同色のオーバーナイトバッグ。
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