| ポルシェには「知られざる」希少なモデルが多数存在する |
そしてポルシェのコレクターは非常に多く、今後も希少モデルの価値は上がり続けるだろう
さて、グッディング&カンパニーが開催するアメリア・アイランド・オークションにて非常に希少なポルシェが大量に出品されるとして話題に。
全部紹介しているとキリがなく、よってここでその一部を紹介してみたいと思いますが、ポルシェの生産台数はフェラーリやランボルギーニよりもずっと多いものの、古くからパーソナリゼーションを手掛けてきたという性質上、「特別な仕様を持つ」シリーズも少なくはなく、さらにはモータースポーツ参戦用のホモロゲーションモデルも数多く存在し、こういった特殊なモデルが非常に高い価格で取引されている、というのが現在の状況です。
1992年 ポルシェ911(964)カレラRS N/GT
そこで最初に紹介するのは964世代のポルシェ911カレラRS N/GT。
聞き慣れないモデルではありますが、順を追って説明してゆくと、まず1992年にカレラRSが「カレラRSR3.8のホモロゲーション取得用として」誕生しており、これは964世代のカレラ2のボディを使用してシーム溶接の採用によってボディ剛性が強化され、軽量化のためエアコン、ラジオ、パワーウィンドウと電動ミラー、クルーズコントロール、フォグランプなどのさまざまな便利アイテムが削除されたハードコアモデル。
その他の軽量化策だとアルミニウム製ボンネット、17インチサイズのマグネシウム製カップホイール、より薄いカーペット (後部座席レス)、軽量ドアパネル、グラスファイバー製バケット シート、簡略化されたワイヤーハーネス、小型バッテリー、薄肉ガラス、小容量ウォッシャータンク、消音材・制振材レスといったものも。※カレラRSの車体重量は1,227kgで、130kgほど軽量化されている
カレラRS に搭載されているのは3.6リッター M64/03フラットシックスエンジンで、これはベースモデルのカレラが採用するM64/01の派生型となりますが、マッチング仕様を持つピストンとシリンダー、より剛性の高いエンジンマウント、高度な点火タイミングを備えたDMEコントロール ユニットを採用し、260馬力を発生し、トランスミッションはクロスレシオ採用のG50/10 5速マニュアル、シングルマスフライホイールと非対称リミテッドスリップディファレンシャルも備えます。
カレラRSのサスペンションは標準のカレラモデルから大きくアップグレードされたビルシュタイン製ショックアブソーバーとハードなスプリングを備え、フロントトップマウント間に装着されたクロスブレースにより剛性とハンドリングが向上しているほか、ボールジョイントを備えたアッパースプリングストラットマウント(ピロアッパー)、よりハードなコントロールアームブッシュ、改良されたトレーリングアームマウントなどを装備し、カレラRS のブレーキ システムはフロントに4ピストン キャリパーと964ターボ用の322mmディスク、リアには299mmサイズのカレラカップ・コンポーネントが搭載されることに。
そして今回出品されているカレラRS N/GTですが、これはカレラRSをベースとし、FIA グループ N/GTにも参加できるスペックを持つウルトラハードコアモデルであり、カレラRSからさらに装備を省略し追加の剥離と軽量化措置が施され、カーペットや消音材のないミニマリストのインテリアが特徴で、ビルトインロールケージ、大型の燃料タンク、耐火性を持つノーメックス張りのレカロ製バケット シート、6点式シュロス製レーシング ハーネス、外部点火キル スイッチ、および消火システムが追加されることに。
この964カレラRS N/GT は、ドイツ、ドルトムントのポルシェ・ツェントラムを通じて納車された(290台が製作されたうちの)1台で、あるこの N/GT は、ブラックのインテリアをベースにマリタイム ブルー で仕上げられ、M003「レーシング セーフティ デバイス」パッケージが装備されています。
最初にこの964RS N/GTの納車を受けたオーナーはもう一台別の964RSを所有しており、そちらを運転することが多かったためにこの個体はずっと「保管されたまま」となっていたそうで、その次のオーナーは2017年にこのカレラRS N/GTを手に入れたもののプライベートコレクションに収めたために現在に至るまで「ほぼ乗られていない」状態をキープしており、走行距離はなんと「55km」。
そのため予想落札価格は最高で80万ドル(約1億1900万円)というエスティメイトが出されていますが、このクルマの希少さを考慮すると、もっと高い値がついてもいいかもしれませんね。
1992年 ポルシェ911(964)ターボ 3.3 X33パッケージ
964世代のポルシェ911ターボは1990年3月のジュネーブ・モーターショーにて発表されていますが、930世代に比較すると操作が比較的容易な油圧クラッチ付き5速マニュアル・トランスミッション(G50)を備えるなど比較滝高い日常性を持っており、さらにターボチャージャーとインタークーラーの大型化、吸排気システムの見直しによって出力は20馬力増加して320馬力に。
しかしながらポルシェはさらにこのクルマを速くするためのオプションパッケージを用意しており、それが「X33」。
これはアップグレードされた吸気システム、拡大されたシリンダー ヘッド ポート、専用カムシャフトによって構成され、この装着によって355馬力にまで出力が向上します。
なお、このX33パッケージを装着した964ターボはわずか192台のみしか存在せず、しかもこの個体はダッシュボード上下、センターコンソール、ドアパネル、さらにはステアリングホイールのエアバッグカバー、Aピラー、ヘッドライナー、サンバイザーまでをワインレッドのレザーにて覆うべく長いオプションリストが作成され、そのほかにもヒーター付きスポーツシートとロッキングディファレンシャルが装備されるなど非常に特別な個体となっており、しかも今に至るまで「ワンオーナー」。
予想落札価格は最高で50万ドル(現在の為替レートにて7400万円くらい)に設定されています。
1994年 ポルシェ911(964)ターボ フラットノーズ X83
次に紹介するのは1994年製のポルシェ911 ターボ フラットノーズ(フラットバウ)X83。
これは1993年末に生産が終了した964世代のターボ3.6の「在庫車」93台をポルシェ エクスクルーシブが「ターボS フラッハバウ」へと改装したもので、日本 (X83)、その他の国 (X84)、および米国 (X85) 向けの3つのシリーズとして製作されたうちの「X83(つまり日本仕様)」。
ポップアップ ヘッドライト、X92専用フロント スポイラー、X93専用リア スポイラー、リア フェンダーにはX99専用インテークを備え、さらにはX88スポーツ チューニング オプションを備えます。
搭載されるIMSA3.6 ターボ エンジンをベースにしたM64/50S エンジンは、より効率的なインタークーラー、改良されたシリンダーヘッド、高リフトカムシャフト、強化された燃料インジェクター、および改良されたエアインテーク、さらに大型のKKK製K27ターボチャージャーが取り付けられ、5,750rpmにて385馬力を発生するというハイスペック仕様。
おまけに標準よりも20ミリ低く硬いM030スポーツサスペンションが取り付けられ、G50/52(ゲトラグ製)5速マニュアル・トランスアクスルにはアップグレードされたクラッチとフライホイールが組み込まれ、通常の20% ではなく40%のロック率を持つセルフロックディファレンシャルが取り付けられています。
上述の通りこの個体は日本へと出荷され、ミツワ自動車を通じて最初のオーナーへと販売されていますが、電動スライド サンルーフ、着色フロントガラス、スリーピース・モジュラーホイール用(スピードライン製18インチ)等のオプションが装着されている、とのこと。
予想落札価格は最高で驚愕の125万ドル、つまり日本円だと1億8500万円くらいに設定されています。
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