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株価低迷にあえぐフォードが新戦略を発表。「強みのトラックと商用車を活用してシンプルで安価、儲かるEVを生産し、消費者寄りの戦略へ」。→この方針が評価され株価上昇

株価低迷にあえぐフォードが新戦略を発表。「強みのトラックと商用車を活用してシンプルで安価、儲かるEVを生産し、消費者寄りの戦略へ」。→この方針が評価され株価上昇
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| 「マルチパワートレーン」戦略は他自動車メーカーと同じだが、EV販売に対する野望を捨てず、価格戦略に訴求するところは他とは異なる |

フォードはEVに過剰な性能や機能を求めず「ガソリンエンジンとエレクトリックモーターを置き換えただけ」のシンプルなEVを作るのだと思われる

さて、フォードは少し前にEVの販売が思ったように伸びないことで「EVへと過剰に投資したのではないか」という批判を受けるとともに大きく株価が下落していますが、それに対応すべくいくつかの対応をおこない、そして21日は新しい電動化ロードマップを発表することに(これが評価され、株価が上昇している)。

その内容は非常に多岐にわたり、しかし要約してみると「以前に計画していた3列の電動SUVは廃止され、かわりに手頃な価格の新しい乗用車とピックアップが発表され、バッテリー製造が国内に戻り、BEVとハイブリッドの両方の追加により商用車の選択肢が拡大する」。※つまりはEV開発の手を緩めるというよりは、高価で開発コストがかかる高級EVよりも、よりシンプルでコストが低く、一般製の高いEVの開発にシフトするということになりそうだ。ガソリン車にできないことをEVにて実現しようとする他社とは異なり、ガソリン車の置き換えとしてのEVというようにポジショニングを変更するのかも

フォードの新しい電動化ロードマップはこうなっている

今回の電動化ロードマップにおいて重要なのは「すべての新モデルが発売後12か月以内に黒字する」、つまりいずれも即効性があると予想していること。

さらにフォードは完全電気自動車への支出を約40%から30%に削減するともコメントし、これらによって急激に業績を回復させることを主張しています。

もう少し細かく見てゆくと、「まったく新しい電動商用バン」の生産が2026年に開始され、これによってフォードの電気自動車の範囲が拡大されますが、一般消費者向けとしては2つの新しいエレクトリックピックアップが用意され、そのうちの1つは中型かつ「手頃な価格」で、こちらはまず2027年初に登場する予定。

これは、フォードCEO、ジム・ファーリーが以前にほのめかしていた、”秘密の”プラットフォームを採用するとされ、この同じプラットフォームが「3万ドル以下」とされた安価なEVはじめ、さまざまなセグメントのさまざまなクルマに用いれることとなりそうです。

もう1つのピックアップ「プロジェクトT3」と呼ばれ、当初の予定より2年遅れの2027年後半にテネシー州で生産が開始されるといい、F-150ライトニングよりも多くの改良が施され、主なアップグレードには、高度な空力特性と双方向充電の強化があるとも説明されていて、この技術は既存のEVにもフィードバックがなされるのだそう。

「私たちは、電気自動車の開発方法に根本的な変化をもたらすために、フォードの内外から最も技術的に熟練したクリエイティブな専門家を採用しました。この非常に才能のあるチームの仕事は、私たちの電気自動車戦略の重要な実現要因へと進化しました。これらの電気自動車は低コストで、いかなる点でも妥協はありません。」

フォード CEO ジム・ファーリー

これらの計画を見ると、フォードは電動化に対する姿勢を緩めるというわけではなく、「より効率的に」「より手っ取り早く利益を得られるよう」電動化を進める方向へとシフトするのだと考えてよく、上記の方法以外だと、ケンタッキー州SK工場では、来年半ばから(現在発売しているEVである)EトランジットとF-150ライトニング用のバッテリー パックを製造してコストを削減すると説明されていますが、これはアメリカが導入している(アメリカ製のバッテリーを積むアメリカ産のEVン日対する)税制優遇措置に対応することも意図しているのだと思われます。

加えて、この工場で生産されるバッテリーはのちのプロジェクトT3、そしてそのほかの電気自動車にも搭載されるほか、マスタング マッハE用のバッテリーも(インフレ削減法の恩恵を受けるため)ポーランドからミシガン州ホランドに移され、さらに2026年からはリン酸鉄リチウム (LFP) バッテリーの生産が行われることについても言及されています。

フォードは「マルチパワートレーン戦略」も推進

そしてフォードはEVに関し「より低価格」「より売りやすいクルマ」へと開発をシフトさせる一方(つまり自動運転などややこしい先進性を排除し、生活に密着した実用的EVに特化するのだと思われる)、「より多くの顧客に訴求でき、顧客満足を維持し、CO2排出量を削減するため」ハイブリッドやPHEVにも集中すると発表しており、これはトヨタが先陣を切り、今では多くの自動車メーカーが採用するようになったマルチパワートレーン戦略を行くということになり、つまり「特定の車種に特定のパワートレーンのみを設定することでパワートレーンを押し付けるのではなく、いずれの車種にも様々なパワートレーンを用意し、顧客の選択肢を拡げる」という方針です。

この新しい方針に従い、上で述べた「以前に計画していた3列の電動SUV」はピュアエレクトリックではなく、より長い航続距離を持つハイブリッドもしくはPHEVにて登場することとなるようで、こちらも消費者にとっては「求めやすく利便性の高い」選択肢へと変更されることになり、よってフォードはこれからの製品展開を「フォードが考えたものを顧客に提示する」のではなく「顧客が求めるものを製品化し”買ってもらう”」という方向へとシフトするということになりそうですね(自社の都合から顧客優先主義へ)。

この「顧客あってこそ」の経営はある意味当然のことではありますが、近年では規制やEVシフトに乗り遅れてはならないという脅迫観念から(フォードだけではなく)「企業本位」の経営になっていたことも否めず、しかし消費者が「あまりに高価で、その割に充電エクスペリエンスが今ひとつな」EVに”ノー”を突きつけたことにより、多くの自動車メーカーが目を覚ますこととなったのかもしれません。

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参照:Ford

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