| ヒョンデはこれまでにも様々なトラブルを出してきたが、たゆまぬ前進によって現在のポジションを獲得 |
ある意味ではヒョンデの努力は賞賛に値する
さて、韓国のエネルギー専門調査会社、SNEリサーチが発表した内容によると、2022年にグローバルにて登録されたBEV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の数が1000万台を超え、前年比61.3%増の1083万台になった、とのこと。※2023年は1478万台だと予測されている
そしてここで驚くべきは、なんとテスラが1位の座を中国BYDに奪われたということで、BYDには前年比204.6%の伸びを示して187万台を販売し、テスラは前年比+40%の131万台、3位は41.3%の成長を見せた上海汽車集団(SAIC)、そして韓国ヒョンデ(とグループ内にあるキア)は40.9%伸ばして51万台を登録しています。
ただし「BEVのみ」だと事情は異なる
今回発表された数値を見るに、「ついにテスラがトップの座を追われたのか・・・」と考えてしまいがちですが、これは上述の通り「BEVとPHEVを足した数字」であり、しかしテスラはBEVしか販売しておらず、逆にBYDやSAICはPHEVを販売している、ということには留意する必要があるかと思います。
参考までにですが、BEVのみだと2022年の世界販売は680万台だと報じられ、この分野に限ってだとテスラがトップを守っており、それに次ぐのがBYDにとSAIC。
つまりBYDの「世界一」はPHEVも含めてのことで、慎重な判断を要することになる部分です。
ただ、BYDがそのEVの販売を伸ばし続けているのも事実であり、現在では多くの研究機関が「遅かれ早かれ、BYDがBEVにおいても覇権を握るだろう」と考えているもよう。
-
中国BYDがさらに伸び、中国におけるEV販売でテスラを抜く勢い。さらに来年には2つのブランドを立ち上げてテスラを引き離しにかかる。なぜここまで伸びたのか?
| BYDは現在、ガソリン車の販売を終了させてEVのみの販売に特化している | 中国の数ある自動車メーカーの中でも、BYDはひときわ異彩を放っている さて、中国BYDは現在「中国のEVメーカーの中で唯 ...
続きを見る
しかしながらまだまだ勝負のゆくえについて判断するのは難しく、というのも大きく伸びたブランドはどこかで頭打ちになってしまうのが常だから。
たとえば米国ではリビアン、ルシード、カヌーといったブランドが勢いよく受注と発売を開始したものの、そこからの伸びが期待できずに黒字化ができていない状態だと報じられています。
-
2025年までのEV販売勢力予想が公開!テスラは2024年にVWに追い越され、トヨタは中国メーカー3社に抜かれてなんとか10位、BMW、ホンダ、日産は蚊帳の外へ
| ただしこの予想はあくまでも「現在の数字をベースにしたもの」で不確定要素は含んでいない | そしてボクはEV販売に重要なのは「ブランド力」だと考えている さて、ブルームバーグが今回「電気自動車の販売 ...
続きを見る
そして「黒字化」できていないのは中国の多くの新興EVメーカーも同様であり、競争が日に日に厳しくなるこの状況で、どれほどのEVメーカーが生き残ることができるのかは「全く不明」。
そんな中でもBYDは(自社でバッテリーを生産しているということもあって)すでに黒字転換ができており、よってBYDはテスラCEO、イーロン・マスク氏のいう「中国のどこかから出てくるテスラのライバル」筆頭だと考えていいのかも。
-
イーロン・マスクCEO「私が推測するならば、おそらく中国のどこかの会社がテスラに次ぐ存在になる可能性が最も高い」。やはり脅威は中国からやってくる
| その「どこか」とはBYD以外には考えられず、さすがにテスラといえどBYDの価格には対抗できないだろう | そしてBYDにはほかの中国の自動車メーカーも対抗できない さて、テスラがEVを発売して以来 ...
続きを見る
それでもBYDにとってはまだまだ大きな課題が待ち受けているとも考えており、それは「品質」。
いかに価格優位性があって販売を伸ばしたとしても、品質が追いつかなければすぐに消費者はそっぽを向いてしまい、この理由にて消え去ったブランドも少なくはないかと認識しています(EVではないが、台湾の自動車メーカー”ユーロン”は一時大きく販売を伸ばし、しかし一瞬で消え去った)。
ただしBYDはEVやPHEVを製造する前にガソリン車を製造し販売していたという実績もあり、よって新興EVメーカーとは異なる背景を持っているため、品質についてもある程度のレベルをクリアしている可能性が高く、テスラにとっては非常に手強いライバルとなるのかもしれませんね。
ヒョンデは燃料電池車の販売にて世界ナンバーワン
なお、統計の集計元、記事の編集元が韓国ということで、記事ではヒョンデにスポットライトを当てた内容が見られますが、ここで簡単に紹介しておくと、まず2022年の燃料電池車(FCV)の販売は前年比18.4%増の20,690台であり、シェアとしてはヒョンデがナンバーワン(そのうち”ネッソ”が11,179台を占める)だった、とのこと。
ちなみに2位はトヨタ(3,691台)だそうですが、トヨタのFCVであるミライは世界的に販売不振が続いており、2021年1~3月期にヒョンデに逆転され、そこからどんどん差が開いているようですね。
現在トヨタは「EV一辺倒ではなく」マルチパワートレイン戦略を進めるとしていますが、EVにおいてはすでに出遅れてそのシェアを挽回できず、そして燃料電池車においてもヒョンデに抜かれるなど苦難が続いており、しかし内燃機関搭載車に強みを持つため、全車種あわせての販売台数だと世界ナンバーワンを維持しているものの、世界的なEV販売比率が高まれば、その王座もゆらぎかねない状態なのかもしれません。
参考までに、国別のFCV販売台数だと、ヒョンデお膝元の韓国では10,336台、中国は5,436台(前年比で3倍くらい伸びている)、アメリカは2708台(前年比マイナス18.9%)、日本はわずか846台(前年比マイナス65.5%)。
そしてもうひとつヒョンデに関してのニュースですが、ヒョンデ、キア、ジェネシスの3ブランドをあわせて米国でのEV累計販売が10万台を超えたと報じられており、ひとつのマイルストーンを築いています。
ヒョンデグループが米国EV市場へと参入したのは2014年10月の「キア・ソウルEV」が初となり、その後キア・ニロEV、ヒョンデ・コナ・エレクトリックと続いており、2022年にはアイオニック5、キアEV6、ジェネシスEV60を投入することで58,028台(つまり2014年からの累計の半分)を販売していて、アメリカ市場でのシェアはテスラ、フォードに続いて3番目(7.1%)。
-
北米におけるテスラのシェアは現在の65%から2025年には20%以下に?販売されるEVが現在の48車種から159車種に増加することで苦戦を強いられるとの予測
| ただし実際にはテスラの価格帯にライバルは少なく、テスラの下の価格帯に大量にEVが投入されることでテスラのシェアが希薄化 | そして現実的にはテスラの下の価格帯において多数の会社が消耗戦を戦っている ...
続きを見る
なお、ヒョンデはコナ・エレクトリックの「爆発する」問題にて膨大な数の車両をリコールし、相当な額の損失を出したものの、それに懲りずに前進した甲斐があったともいえそうです。
2023年はさらにアイオニック6、キアEV9、ジェネシスEV90を市場投入するというので、もしかするとアメリカ市場では「テスラに次ぐ2番手」となるのかもしれません。
-
ヒュンダイ(ヒョンデ)がEV発売→世界中で大人気に→世界中で炎上・爆発→全世界77,000台の大量リコール【コナ・エレクトリック】
| オーストラリアではガレージのドアが道路の反対側に吹っ飛んでゆくほどの大爆発 | さて、何かと品質問題に揺れる韓国ヒュンダイ。先日は高級ブランド「ジェネシス」の相次ぐリコールが問題となりましたが、今 ...
続きを見る
合わせて読みたい、関連投稿
-
通年におけるEVの世界販売が2022年にはじめて10%を超える!中国だと20%、ドイツは25%、アメリカは5.8%、日本は(単月で)1.5%にとどまって完全にEV後進国に
| 日本のガラパゴス体質がこんなところにもあらわれていた | それにしても世界と日本との差が激しすぎる さて、2022年における電気自動車(EV)の世界販売が780万台にのぼり過去最高となったそうです ...
続きを見る
-
え?ガソリン車じゃなくてEV販売禁止?米ワイオミング州にて「当州は石油産業従事者が多いため」2035年までに段階的にEV販売を禁止するという法案が可決される
| さすがにこの法案、そして可決されたという話は前代未聞 | ただし実際には法的拘束力はなく、あくまでも販売停止を”推奨”といったレベルにとどまるもよう さて、現在自動車業界は思ったよりも速いスピード ...
続きを見る
-
米国と欧州でEV販売比率が増加、それぞれ新車販売のうち5.1%と12%がEVに。なお日本ではわずか1.5%にとどまり、名実ともにEV後進国へ
| たしかに日本国内でEVが走っているのを見る機会はそれほどない | 来年は米国、欧州ともさらにEV販売比率が大きく伸びると言われているが さて、米国と欧州ではEVの販売が好調に進んでいる、とのこと。 ...
続きを見る
参照:YONHAP NEWS