■そのほか自動車関連/ネタなど

中国では123ものブランドがEVを製造しており、自動車業界全体での生産台数は国内需要の2200万台の倍近い4000万台。完全に供給過多の状況に

BYDはEV業界中「特許出願件数」もトップクラス。一方テスラの特許出願件数はBYDの1/16にとどまり、この差は両者の「強み」の差に起因するようだ
BYD

| 中国ではいま何が起こり、中国政府は何を考えているのか |

この状況は世界中の自動車市場を大きく揺るがすことになるであろう

さて、現在中国製のEVが世界を席巻しようとしている状況ですが、現在の中国のEV含む自動車生産台数は「中国国内の需要の2倍」にも達しているのだそう。

ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、現在、中国全土で(中国の)自動車メーカーは年間約4,000万台の車両を生産する生産能力を備えているものの、同国の消費者は年間約2,200万台しかクルマを購入しておらず、しかしこの状況においても、中国政府は自動車業界の成長を支援し続けるという”奇妙な状況”が浮き彫りとなっています。

いったいいま中国では何が起きているのか

中国の自動車業界における過剰生産能力問題は、ガソリン車を主体とした既存自動車メーカー、そして電動化など新技術を推進する新興自動車メーカーの両方に打撃を与えているとも報じられていますが、この状況でも需要をはるかに超えるガソリン車そしてEVが生産し続けられており、これが引き起こすのは当然ながら在庫解消のための「値引き販売」。

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ここでは欧州はじめ世界的な進出が問題となっているEVについて焦点を当ててみたいと思いますが、報道によれば「2023年、EVを製造した中国のブランドは123」。

これは一時の「600ブランド」に比較すると大きく減少しているものの、それでも「一つの国に123ものEVブランドが存在する」というのは異常な事態だと考えていいのかもしれません。

そして今では値引き販売を行っても「とうてい在庫を処分できないレベル」にまで在庫が膨らんでいるといい、そうなると中国の自動車メーカーが考えるのが”輸出”です。

NIO
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中国自動車メーカーの輸出が急増し「出荷するための船が足りない」レベルに陥る。新興国において日米欧の自動車メーカーの市場を圧迫
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実際のところ中国車の輸出は2020年から2023年の間に5倍にまで増加していますが、ただしこの増加に大きく貢献したのはロシア市場であり、これはロシアのウクライナ侵攻によってロシアから撤退した日米欧の自動車メーカーの”空白”を埋めたことで達成されています。

日米欧の自動車メーカーが撤退したロシア市場にて中国車の市場制圧が進む。直近だとロシア内で販売されたTOP10ブランドのうち9つが中国、さらにこの傾向は加速中
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ただし現在ではロシア市場も中国車で埋め尽くされ、ここも中国国内同様に過密となってしまい、よって中国の自動車メーカーはさらなる活路を世界中に求めているというのが現在の状況でもあるわけですね。

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中国のEVメーカーは欧州市場で(中国に比較して)「最大で3倍近い」価格にて車両を販売。それでも欧州車よりも安く、つまりは相当な利益を稼いでいる

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なぜそれでも中国政府はEV生産に対して補助金を出すのか

こういった事情を見るにつけ、なぜ中国政府が「既に生産能力過剰に直面している業界に補助金を出しているのか」という必然的な疑問が生じますが、その理由としては「より広範な経済的課題の中でも経済成長を支援し、雇用を維持しようとする政府の取り組み」、そして「自動車メーカーを世界舞台で強化したい」という政府の意向が関係しているのだと言われます。

BYD
BYDは中国政府から直接補助金として3480億円を受け取っていた。これは収益の3.5%に相当し、さらに間接補助金も。どうりでEVを安く作ることができるわけである

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そしてこの補助金によって「不採算(赤字)自動車メーカーでもより多くの車両を生産し続けることができるように」なるわけですが、2023年だと国内のEV生産自動車ブランド「123」のうち、40万台を超える車両を販売したのはわずか4ブランド(BYD、テスラ、Aion、Wuling)しかなく、つまり中国の自動車産業は「大量の少量生産メーカーによって支えられている」と考えることも可能です。※40万台というのは一般的に考えられるEVメーカーの損益分岐点である

EU規制当局が欧州内で勢力を拡大し続ける中国車に対し関税導入を検討。当然中国はこれに反発しており、自動車業界を超えた問題に発展する可能性も

しかしながらこのままの状況が続けば多くの自動車メーカーが倒産し失業者が大量に出ることは間違いなく、よって中国内でも「政府はそろそろ自動車業界の再編を行うべき」だという声があるといい、しかし中国政府の意向としては「弱いところが強いところに吸収され、淘汰が進みつつも強い会社が生き残ればOK」というものだとされ、つまり各種補助金は「個々の会社を存続させるため」というよりは「自動車業界全体を強くするため」だと捉えていいのかも。

ただ、こういった中国政府の意向によって迷惑を被っているのが日米欧の自動車メーカーで、欧州や米国だと本土への進出、日本ではまだ本土への進出が問題とはなっていないものの東南アジア市場などでシェアを奪われるという状況が続いています。

よって 米国では、ホワイトハウスが国内製造業を保護するために関税の拡大を検討している一方、欧州連合は中国のEV補助金を調査しており、同様の措置を検討している、とも報じられていますね。

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