>中国/香港/台湾の自動車メーカー

BYDは中国政府から直接補助金として3480億円を受け取っていた。これは収益の3.5%に相当し、さらに間接補助金も。どうりでEVを安く作ることができるわけである

BYD
BYD

| EVは調査結果をもとに関税の導入を協議することになりそうだが、当然ながら中国の反発も必至である |

ただし中国はEUにとっても「お得意様」であり、強く出ることは難しいだろう

さて、現在世界中にて大きな脅威となっているのが「割安な中国のEV」。

簡単に言えば「中国のEVが安すぎて既存自動車メーカーのEVが全く売れない」ということですが、この問題に対処すべくEUが調査を開始したというのは既報の通り。

そして今回ドイツにて発表された報告書によると、BYDは2022年だけで中国から22億6000万ドルの直接補助金を受け取っており、これによって”不当な優位性を獲得している可能性がある”とのこと。

もはや中国車は「安かろう、悪かろう」ではない?豪州安全性評価にてBYDシールとドルフィンが5つ星を獲得、とくにドルフィンは2023年の新車では最高得点
欧州における「中国製EVの進出」に関する調査が進み、欧州委員会は中国製EVに関税を課す方向にて動くとの報道。もちろん中国はこれに猛反発

BYD | 欧州委員会は「中国製EVは不当な中国政府からの保護を受けている」という判断を下すことになりそうだ | 今回、欧州委員会が「ギルティ」の判断を行えば、ほか市場もこれに追随する可能性があるのか ...

続きを見る

一般的には「国は自国の産業といえど、特定の企業に肩入れ」すべきではなく、自由競争としておくべきという考え方が一般的で、それは日米欧も同じです。

ただ、中国では国策として特定の産業や企業を(強く)保護する場合があり、その保護が手厚すぎると「自由競争にならず」、保護されていない(世界規模で見ると他国の)自動車メーカーがワリを食ってしまう、というわけですね。

実際のところ中国では「EVを作れば」政府から補助金をもらえるということで、まったく経験のない会社までもがEVを大量に生産し、中には「EVメーカーとしてやってゆこう」という意思を持たず、補助金をもらうことだけを目的に(低品質な)EVを作り続けた会社もあると言われています。

数千台のEVが打ち捨てられた「電気自動車の墓場」が報じられる。その様子はまさに衝撃的、中国のEVメーカーが補助金を受け取るため過剰に生産した成れの果て【動画】
数千台のEVが打ち捨てられた「電気自動車の墓場」が報じられる。その様子はまさに衝撃的、中国のEVメーカーが補助金を受け取るため過剰に生産した成れの果てか【動画】

| ボディカラーが全て安価な「白」というところを見ても、最初から遺棄することを前提に製造したと推測できる | この中にはGeely、BYD、Netaなど大手自動車メーカーのEVも多数含まれる さて、現 ...

続きを見る

さらにBYDはほかにも補助金を受け取っている

今回の報告書を作成したキール研究所によると、BYDはこの22億6000万ドルの直接補助金を受け取っていただけではなく、自社でバッテリーを生産することによって間接補助金による恩恵を受けている、とのこと。

報告書での記載では、中国は米国やドイツなどの他のOECD諸国に比較して3倍から9倍もの補助金を支出していて、この調査によると、政府からの多額の資金の主な受取人は電池生産者および自動車メーカーのBYD。

同社は2023年の最終四半期には初めてテスラを超え、世界最大の電動車両メーカーの一つに成長していますが、2020年以降継続的に補助を受けていると報じおられており、2020年だと補助金の額はBYDの収益の約1.1%に相当し、2022年には3.5%にまで達しているのだそう。※中国国内の上場企業の99%が2022年に奨励金を受け取ったと報告書に記載されている

2023年第3四半期のEV販売では過去に例がないほどBYDがテスラに近づく。テスラの支配が終焉を迎え、新しい時代のはじまりか
Image:BYD

ただし、これらの数字はあくまでも「直接」補助金であり、これに加え、電気自動車用バッテリーを購入するために政府からの奨励金を受け取る顧客からも恩恵を得ることとなり、これは会社の懐に直接入る現金ではないものの、製品の需要を刺激し、製品の価格を効果的に下げるのに役立つものと見られています。

つまり中国の自動車メーカーに与えられた寛大な補助金によって、BYDはじめ多くの中国のEVメーカーの「製品製造コストが不当に安く」抑えられており、そのため日米欧の自動車メーカーがこれらと競争することが困難となっていると考えられるわけですが、今後他の調査機関からも同様のレポートが上がってきて中国のEVメーカーが”フェアではない”と断じられたすると、もちろん各国はこれに対する関税を設けることになり、そしてこれに中国政府が反対することは間違いなく、果てしない泥沼に陥ったりすることになるのかもしれません。

あわせて読みたい、中国のEV事情関連投稿

中国のEV市場での競争は熾烈を極める?発表後「受注が好調」とされていたAvatr 12の価格が発売後わずか4日で630万円から557万円へと大幅に値下げされる
中国のEV市場での競争は熾烈を極める?Avatr 12の「受注が好調」と発表されたわずか4日後に価格が630万円から557万円へと大幅に値下げされる

| ほぼ同時期に発売されたシャオミSU7の影響もゼロではないだろう | ここからの競争でいったいどれくらいの自動車メーカーが生き残ることができるのかは興味が尽きない さて、中国の新興EVブランド、アバ ...

続きを見る

BYDの成長が止まらず、「500万台のNEVを販売し、世界で最も電動車を製造した会社になった」と発表。なお100万台には13年、300万台にはさらに18ヶ月、500万台には9ヶ月
BYDが「中国初の自動車専用巨大貨物船」、BYDエクスプローラー1」を建造し運用開始。さらには追加で7隻を投入し世界中へとEVを大量に輸出すると発表

Image:BYD(X) | いかに中国広しといえど、これができるのはBYDくらいのものであろう | BYDの勢いはどうにも止めようがない さて、BYDは今年1月に初となる「自社専用の自動車輸出専用の ...

続きを見る

中国自動車メーカーの国内シェアが史上はじめて50%を超える。VWは首位陥落、テスラ、フォード、GMは統計開始以降シェアが最低に、そしてフランス勢のシェアは1%未満に
中国製EVが「英国では保険に入れない」事態が急増。BYD含め「パーツが供給されていない」「修理のための情報が供給されていない」ことが問題視される

| 中国製EVには思わぬ落とし穴があったようだ | 中国製EVはアフターサービスに注力する必要があるものの、ここは中国企業が軽視するところでもある さて、現在欧州では中国製EVの進出が問題視されていま ...

続きを見る

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Cirqua_Recommend / 1845256

->中国/香港/台湾の自動車メーカー
-, , , ,