>VW(フォルクスワーゲン/Volkswagen)

EV先発組、VWのCEO自ら「VWはもはや一番売れているブランドでもなく競争力もない」。一方でEV後発組のトヨタは過去最高の利益を享受しているという現状

2023/11/29

トヨタ

| 少し前まで「EVは自動車業界の未来そのもの」であったが |

今となってはEVはお金を浪費するだけの「企業として利益を出すことができない」存在に

さて、フォルクスワーゲンは長きに渡って欧州市場では圧倒的な強さを誇っており、「ゴルフ」が圧倒的王者として君臨していた時代も。

ただしその後にはトヨタがコンパクトカー市場での存在感を強め、またステランティスが低価格でデザイン的に優れるクルマを発売するにあたってフォルクスワーゲンはその優位的地位を失いつつあり、今回トーマス・シェーファーCEOがついに従業員会議において「フォルクスワーゲン・ブランドとしての競争力はもはや失われてしまった」という衝撃発言を行ったとの報道。

フォルクスワーゲン

なぜフォルクスワーゲンはこういった状況に陥ったのか?

そこで気になるのが「どうしてこんなことになったのか」。

おそらく、直近での「引き金」となったのは、コロナウィルスの大流行とロシアのウクライナ侵攻によってVWのサプライチェーンもたらされた大混乱で、VWはここからまだ完全には回復していない、と伝えられています。

フォルクスワーゲンは今年6月、100億ユーロという巨額のコスト削減計画を発表していますが、今回は上述の発言とともに人員削減計画にも言及がなされたといい、人事担当のグンナー・キリアン経営委員によれば「経費削減の一部は部分退職や早期退職によって達成される」。

現在フォルクスワーゲンは電動化に向けて大きくシフトしている最中で、これには多額の資金が必要であり、電気自動車の未来を築くため、とくに第9世代のエレクトリック・ゴルフを含むさまざまな車種に使用するSSPプラットフォーム開発のための資金を必要としています。

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そしてその資金を賄うため、フォルクスワーゲングループは「稼ぎ頭」のポルシェの新規株式公開を行い、このIPOによって調達した195億ユーロのうち、約96億ユーロがフォルクスワーゲンに回されるということも報道済み(これは電動化計画に必要な520億ユーロの予算の5分の1に相当するそうですが、IPOにとっては悪条件が揃う時期に無理やり上場を敢行したことからも、いかにVWがお金を必要としていたかがわかる)。

ポルシェ
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フォルクスワーゲンはそのポジジョンを取り戻すべく「安価なEV」の計画を発表

なお、フォルクスワーゲンは「非常に高い販売割合」を中国市場に依存していると言われていますが、「お金がない」もうひとつの理由は中国市場の販売不振にあるとも考えられます。

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大きなシェアを占める中国市場での存在感を失うことで販売と利益が極端に減ってしまっていることが予想され、しかしフォルクスワーゲンとてこの状況に対して何も手を打っていないわけではなく、少し前には中国の新興EVメーカー、シャオペンとの合弁にてEVを開発する会社を設立すると発表したばかり。

フォルクスワーゲン
VWよお前もか。VWが中国シャオペンに投資しEVを共同開発するもよう。もはや中国市場では現地EVメーカーの助けなしには魅力的なクルマを作れない?

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そして先週、フォルクスワーゲンはこの「EV開発・調達センター=フォルクスワーゲン・グループ・チャイナ・テクノロジー・カンパニー(VCTC)」の開所式を開催し、ここで中国責任者を務めるラルフ・ブランドシュテッター氏が「手頃な価格の電気自動車用のまったく新しいプラットフォームで中国での地位を強化する計画」を発表しています。

報道によると、フォルクスワーゲンは、現在 "Aメインプラットフォーム "として知られている、新しいエントリーレベルの中国専用プラットフォームをこのVCTCにて開発することになり、現在中国で生産されているMEBベースのモデル(ID.3、ID.4、ID.6、ID.7)よりもさらに高い現地部品比率を採用することでコスト削減を進めることとなるもよう。

ラルフ・ブランドシュテッター氏は「フォルクスワーゲン・ブランドはもはや中国で最も売れているブランドではない」とも前置きし、中国の電気自動車市場は非常に「価格に敏感」であるためコストの最適化が必要だと強調していますが、実際にVWは(中国で)ID.3モデルを値下げすることでこの販売台数を月平均2,200台から約10,000台(7~10月)にまで増やすことに成功しており、これがさらにフォルクスワーゲンを「価格優先主義」へと走らせることとなったのかもしれません。

そしてこの新プラットフォームを使用したEVにつき、140,000元(約280万円)から170,000元(約350万円)というエントリーセグメントをターゲットにしていると報じられています。

なぜフォルクスワーゲンとトヨタとは「差」がついたのか

なお、フォルクスワーゲンはつい数年前までトヨタと「世界1位」の座をかけて争っていた企業です。

しかしながら直近では(VW自身が認めるように)存在感を失ってしまい、さらに資金難にあえぎ人員削減を行わなくてはならない会社となってしまったわけですが、この差がどうやって生まれてしまったのかは気になるところ。

もっとも大きな理由は、フォルクスワーゲンが「EV一本に絞ってガソリン車を切り捨てるという判断を下した」ことだと思われ、EVに将来を賭けたもののフォルクスワーゲンよりも安価なEVを作る会社がたくさん出てきてしまい、「計画どおりに」EVが売れず開発資金を回収できなかったのだと思われます。

VWがEV需要低迷につき再び工場を一時閉鎖。EVに関する計画は大幅に狂いが生じ、修正計画にて挽回を図る
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そしておそらく、この傾向が改善する可能性は非常に低く、そしてフォルクスワーゲンはトヨタのような高価格帯の人気商品(アルファード/ヴェルファイアやランドクルーザーのような)を持たず、かつミドルクラスの(RAV4やカムリのような)量販モデルも持たずコンパクトカー中心のポートフォリオとなっているために利益率が低く、かつワールドワイドで見た際の販売攻勢が中国に偏っていたことからも「今後の回復は難しい」のかもしれませんね(VWにとって明るい材料はなく、今後も販売を失う一方であると思われる)。

なお、興味深いのは「環境に優しくない」「EVにおいて著しく出遅れており、他社に置いてゆかれる」「カネにならないスポーツカーに注力している」と言われたトヨタの販売や利益が伸びていることで、なんだかんだ言いながらも「面白いクルマを作る会社」でなければ、消費者はそのメーカーのクルマを購入しないのかもしれません。

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参照:Reuters

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