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フェラーリがまさかの「MT」を復活させる?「現代のクルマはすでに性能がピークに達し、人間の限界を超えつつあります。であれば我々は新しい価値観を追求せねばなりません」

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| 時代とともにクルマに求められるもの、顧客が要求するものも変わってくる |

本当に「フェラーリがMTを復活」させることになれば、それはとんでもないニュースである

さて、最後の「マニュアル・トランスミッションを積んだ」フェラーリがマラネロの工場を出てから10年が経過しようとしていますが、この最後のMT搭載モデルとはカリフォルニアで、このカリフォルニアにおいてMTを選んだ顧客はなんと「(17,000台以上が販売されたにもかかわらず)わずか6人のみ」。※2人説もある

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フェラーリの中古相場は「マニュアル」「AT」で大きく異なる。フェラーリは2012年以降MT車を製造しておらず、最後のMT車であるカリフォルニアでは「MTを選択したオーナーはわずか2人」

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当時フェラーリは「性能的優位性から」ロボタイズドトランスミッションへの完全移行を決めており(その後にデュアルクラッチに進化)、それは「サーキット走行において、MTではオートメ―テッドトランスミッションより優れたタイムを記録できない」からであったのですが、当時、そして今でもフェラーリのトッププライオリティは「サーキットをいかに速く走れるか」です。※新車発表時にフィオラノ・サーキットでのタイムが公表されるのはそのためである

ただしフェラーリのプライオリティは「変化しつつ」ある

しかしながら、いかにトッププライオリティが「サーキットでのラップタイム」にあり続けるとしても、「その後に続くもの」がやや変化しているようにも思われ、296GTBからは「ファン・トゥ・ドライブ」なる要素が重要視されはじめ、つまるところ「単に速く走るだけではなく、楽しく走ること」がフェラーリにおいても重要視されるようになっています。

これはフェラーリ、そして世の中におけるスーパーカーを取り巻く環境、購入層の変化を端的に表す傾向だと考えてよく、世の中が「スピードに対していい印象を持たなくなってきていること」「日常的な走行条件においても楽しく走れるスポーツカーが求められるようになったこと」「スーパーカーがファッションアイテム化してきていること」などが関係しているのかもしれません。

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実現すれば「フェラーリのロードカー史上、最も価値のある限定モデル」に?ルイス・ハミルトンがF40のオマージュモデル、「F44」をフェラーリとともに開発しているもよう
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そして今後考えられる新しい変化が「よりアナログな体験を求めるスーパーカーオーナーが増えてくるであろうこと」。

これはデジタル全盛の現在の反動ともいえるもので、そこに加わるのが「電動化時代になると消滅してしまう(クラッチを持つ)マニュアル・トランスミッションに対する憧憬」。

フェラーリは「新たなる付加価値を求める」

失われつつあるものに対するノスタルジーとも捉えられる傾向ではありますが、今回フェラーリのチーフ・プロダクト・オフィサーであるジャンマリア・フルゲンツィ氏が触れたのが「マニュアル・トランスミッションを復活させる可能性(ただし明確に語ったわけではない)」。

同氏が言及したのは「現代のスーパーカーが性能の限界に達しつつある」こと、そして現在のフェラーリのラインナップの一部では「すでにピーク性能を超えている可能性すらある」こと。

「F1マシンでは0-100km/hが2.3秒。SF90 XXでは、ほぼ2.5秒か2.4秒です——しかも四輪駆動で。」

SF90 XXは1,000馬力を超える出力を発生しますが、彼は「900馬力以上では、現代のタイヤとシャシーだと十分に対応しきれない」とも述べ、「この馬力競争がすぐに終わるわけではないが、今後10年で確実に鈍化していくだろう」とも。

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加えて、(現代のスーパーカーの)性能がドライバーの技量だけでなく身体能力さえも超えるようになってきた点も問題だと指摘しています。

「通常のドライバーでは、この加速に身体が耐えきれません。特に首の筋肉や骨格への負担が大きく、長時間の運転は困難です。毎朝トレーニングしないと運転できないようなクルマを、すべての顧客が求めているわけではありません」。

フェラーリがマニュアル・トランスミッションを復活させるとなると「限定モデル」を対象か

かつてのエンツォ・フェラーリなら「根性が足りん」と言ったかもしれませんが、今は時代が変わっていて、よって現代のフェラーリが考える一つの解決策が「一部の車種に限定してマニュアルを復活させるという構想」。

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つまりはピークに達した性能をさらに越えようとするのではなく別の付加価値をクルマに与えることにより魅力に磨きをかけるのだと考えてよく(ファン・トゥ・ドライブという方向性にもマッチしている)、パフォーマンスを一部犠牲にしても、「別の価値」を提供できるクルマ、たとえばヘリテージ性を重視したイコーナシリーズなどはこれに向いているかも知れません(イコーナシリーズは最新最高のパフォーマンスを追求するものではなく、フェラーリのヘリテージをその時の技術にて表現し、長期にわたって価値を維持向上できるように考えられた、コレクター向けのクルマである)。

実際のところ、ルイス・ハミルトンは「マニュアル・トランスミッションを備える特別モデル」の開発を示唆しており、次のイコーナシリーズが「MTを備える」可能性も否定できず、もしそうなれば「これはフェラーリだけではなく、自動車業界における大きな転換点」となる可能性があり、今回の続報には期待したいところ。

なお、マニュアル・トランスミッションを搭載するとなると、クラッチの耐久性を考慮しパワーを引き下げる必要が生じるかと思いますが、「ポスト・ピーク・パフォーマンス時代」においては絶対的なパワーではなく「ドライバビリティ」が重要になるものと思われ、失った出力の代わりに「アナログなフィーリング」「軽量化」といった要素を追求することで、むしろ”より魅力的な”クルマを作ることができるようになるのかもしれませんね。

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参照:CarSales

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