| フェラーリF355ベルリネッタは登場30周年を迎え、再評価の機運が高まる |
これだけ見事な仕様を持つフェラーリF355はそうそう見つからない
さて、英ミュージシャン、クリス・レアが所有していたフェラーリF355が中古市場に登場して大きな話題に。
なお、話題となっているのは、(クリス・レアの所有というよりも)このF355が「ブルー・スクーロ・メカリッツァート外装とクレマレザー」で仕上げられた唯一の例であること、そして「6速マニュアル・トランスミッション、非エアバッグ、2.7モトロニック」という、マニアの間では”聖杯”と呼ばれている仕様を持つためです。
クリス・レアはこんな人
クリス・レアと聞いてもピンと来ないかもしれませんが、このシーズンになるとラジオで必ずオンエアされる「ドライビング・ホーム・フォー・クリスマス(1986)」を歌っている人。
イングランド出身ですが、やや暗めの曲調を特徴とし、それが原因で長らく売れずに水道配管工をしたりハンバーガースタンドでバイトをしながら音楽活動を続け、レコード会社の「もっと皆に受けるようにポップな曲調にしたらどうか」というアドバイスをひたすら拒否していた人物でもあります。
加えてアメリカのビルボードに代表されるような「商業主義」に強く反感を示したことでアメリカのラジオ局から総スカンを食らい、よってアメリカではほぼオンエアされることがなかったという「信念の人」というか「不幸な人」というか、なんとも形容しがたいミュージシャン。
一方でクルマやモータースポーツには高い興味を持っており「ロード・トゥ・ヘル」「オーベルジュ」という、クルマを意識したタイトルと内容を持つアルバムをリリースしており、故アイルトン・セナを偲ぶ「サウダーデ」という曲もリリース済み(かなり暗い曲であり、ベリー・ベスト・オブ・クリス・レアに収録されている)。
いずれにせよ、その活動履歴の長さに比較して非常に知名度の低いミュージシャンであり、「たとえ栄光のという名のスポットライトが彼を照らし出したとしても、彼は輝いて見えないだろう」と(ライナーノーツで)表現されたほどパッとしない人物なのですが、ぼくの中ではクリストファークロス、ネッド・ドヒニー、ビル・ラバウンティらともに「すべてのアルバムを揃えている」お気に入りアーティストとしてカウントされています。
参考までに、エルトン・ジョン(最初に全米No.1ヒットを出したとき、その印税で買ったのがフェラーリだった)、ロッド・スチュワート、エリック・クラプトン(フェラーリの重要顧客の一人であり、ワンオフモデルを作ったことがある)など、英国のミュージシャンには「フェラーリ好き」が多いのかもしれません。
フェラーリF355はこんなクルマ
フェラーリF355は1994年のジュネーブ・モーターショーにて348の後継モデルとして発表されており、つまり2024年で30周年を迎えます。
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ただ、今見てもそのスタイリングは色褪せることはなく、むしろ時間にて淘汰されることがない美しさを持つことを立証することになったんじゃないかという印象(F355ベルリネッタは、ぼくの大好きなフェラーリのうちの1台である)。
搭載されるエンジンはフラットプレーン・クランクを採用する3.5リッターV8エンジン(傑作)、そしてこのエンジンは当時マクラーレンF1を含めても「あらゆるロードカーの中で最も高いリッターあたり比出力」を持っており、最高出力は380馬力。
チタン製コンロッド、そしてフェラーリのF1プログラムからインスピレーションを得た(当時としては非常に革新的な)1シリンダーあたり5つのバルブを備えるという革新的な構造を持ち、モデル名の「355」は「3.5リッター、5バルブ」から。
なお、欧州にて導入された「デイライト法」のため固定式ヘッドライトが必要となったため、後継モデルの360モデナではリトラクタブルヘッドライトが廃止されており、よってF355は「最後のリトラクタブルヘッドライトを持つV8フェラーリ」ということになりますね。※F355では角型ライトを持つことが一つの特徴である
もちろんボディデザインはピニンファリーナ。
クリス・レアのフェラーリF355はこんな仕様を持っている
すっかり前置きが長くなったのですが、ここでクリス・レアが所有していたフェラーリF355を見てみると、「6速マニュアル・トランスミッション、非エアバッグ、2.7モトロニック」に加え、さらに希少な右ハンドルという仕様。
もちろんこの仕様はクリス・レアの指定によるものですが、クリス・レアはとくに「この色を好んで乗っていた」ということはないように記憶しており、そのときに応じて思い思いのカラーを発注していたようですね(フェラーリの他にはロータスを好むことでも知られていて、モータースポーツに参戦した経験も持っているので、過剰や豪華を好まず、シンプルな仕様を選んでいるように思われる)。
なお、当時は様々な法整備が進み、そして新しい技術が毎日のように登場していた時代でもあり、このF355についても多種多様な仕様が存在するのですが、この「エアバッグなし」は非常に珍しいもので、というのも同時期には米国で「エアバッグが義務化」され、すべての車両にエアバッグが装着されるようになったため(クリス・レアはエアバッグレス仕様にてオーダーを入れたのかもしれない)。
トランスミッションは6速マニュアルですが、初期モデルであればF355はすべてマニュアルです(1997年にF1トランスミッションが登場し、こちらが主流となる)。
カーペットは「ブルー」で・・・。
ルーフライナーはクレマ。
現在この車両を販売しているベル スポーツ&クラシックによってレストアがなされていると紹介されており、よって内外装のコンディションは抜群です。※走行距離は25,500km
さらにはこれまでにも非常に大切に乗られていたと見え、付属品も揃っているようですね。
なお、フェラーリの内装については(経年劣化で生じる)樹脂パーツのベタつきが有名ですが、見たところこの車両については「対処済み」のようにも見えます。
レトロな”カーステレオ”が装着されていて、このフェラーリF355ベルリネッタを運転中、(クリス・レアは)ラジオから流れてくる自身の曲を耳にすることがあったのかもしれませんね。
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