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フェラーリの中古相場は「マニュアル」「AT」で大きく異なる。フェラーリは2012年以降MT車を製造しておらず、最後のMT車であるカリフォルニアでは「MTを選択したオーナーはわずか2人」

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| フェラーリ456GTだとMT車のほうがAT車の「倍」で取引されることも |

そこには「希少性」「投資価値」「ドライバーエンゲージメント」など様々な思惑が渦巻いている

さて、クラシックフェラーリが非常に高価であることは周知の通りですが、ネオクラシックモデルの一部では「マニュアル・トランスミッション」「オートマチック・トランスミッション」の両方が存在する例があり、その場合はトランスミッション形式によって大きく相場が異なります。

もちろん高額にて取引されるのはマニュアル・トランスミッションではありますが、ここでフェラーリにおけるトランスミッションの変遷、双方のトランスミッションでどれくらい「相場が変わるのか」を見てみましょう。

フェラーリにおける「オートマチック・トランスミッションの歴史」とは

まず、フェラーリにおいて最初に登場したオートマチック車は1967年の「フェラーリ400」。

これは初めてオートマチックトランスミッションをオプション設定したモデルとして知られ、それでもその後に登場した328、F40、テスタロッサなどのスポーツモデルはマニュアルのみの設定にとどまり、つまりフェラーリは1980年代まで「基本的にはマニュアル・トランスミッション、しかし一部の4シーターにはオートマチック・トランスミッションを用意する」というスタンスを取っていたわけですね。

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Image:Ferrari

ただしその流れが大きく変わったのが1990年代で、まずは1992年にフェラーリ456が発売され、これは、1978年から続くフェラーリ 400/412の流れを引き継いだ後継車。

先代モデルは3速AT(ゼネラルモーターズ製)を搭載していましたが、456ではより近代的な4速ATがオプションとして設定されています(ただし当時のATは後のF1、現代のDCTとは異なるトルコン式である)。

そして1998年の改良版(Modificata)では、「456M GT」に名称変更され、オートマチック仕様は「456M GTA」と呼ばれ、これは1992年から2004年の間に合計3,289台が生産されることに。

生産台数(456シリーズ)

モデルマニュアルオートマチック
456 GT1,548台403台
456M GT688台650台

上の数字を見てみると、初期型ではマニュアル・トランスミッション搭載車のほうが圧倒的に販売が多かったことが分かりますが、後期型(456M)ではほぼ半々の割合になっていて、これは時の経過とともに「ATを積むフェラーリ」が受け入れられるようになったことを示しているのかもしれません(ATの信頼性が向上したことも要因として考えられる)。

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そしてこの傾向からもわかるように、「新車販売時にはオートマチックの人気も高かった」ことが推測できるものの、中古市場になるとその様相は一変し、「マニュアル・トランスミッション搭載車」のほうが圧倒的な人気を誇ります。

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Image:Ferrari

その人気は「中古相場」において「価格」という客観的な数字となって顕著に現れており、「本来だとATが好まれるはずのグランドツアラー」たる456GTであっても「過去5年間で50,000ドル以下で取引された456は、すべてオートマチック仕様」「過去5年間で100,000ドル以上で取引された456は、すべてマニュアル仕様」といった現実があるわけですね。

そしてこの価格差は、昨今のトレンドを鑑みるに、将来的にも縮小する可能性は低いと考えられます。

フェラーリの「オートマチック」はさらに進化

フェラーリが採用した「オートマチック」トランスミッションはトルコン式とどまらず、ロボタイズトランスミッション(構造的にはMTで、クラッチをロボットが操作するという、いわゆる「シングルクラッチ」AT)=F1が1997年に初めて登場し、これが最初に搭載されたのはF355。

しかしこれは「オートマチック」というよりは、基本的に「クラッチを踏まなくてもいいマニュアル」と解釈すべきであり、実際には「ドライバーがパドルを引いて変速操作を行う」ことを前提としています。※その後発売されたエンツォフェラーリは「変速が完全に自動化された初のフェラーリ」だとされる

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Image:Ferrari

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さらにその後フェラーリはDCT(デュアルクラッチ)を投入することでF1トランスミッションをDCTへと置き換えてゆきますが、2000年代に入ると多くのモデルが「(458イタリアのように)DCTのみ」となり、「マニュアル・トランスミッションは時代遅れ」とみなされるように。

そしてついに2012年には「フェラーリからマニュアル・トランスミッションが消滅」してしまうわけですが、ミッドエンジンの最後のマニュアル車となったフェラーリ F430では、全生産台数の約10%(15,000台のうち1,500台)のみがマニュアル仕様となっていて、さらに「フェラーリでは最後にマニュアル仕様が選択可能だったモデル」、カリフォルニアではなんとマニュアル・トランスミッションを搭載し生産されたのはなんと「2台だけ」。

この状況を見るに、フェラーリが「マニュアル・トランスミッションを消滅させる」という選択を行ったことについても納得がゆきますね。

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しかしながら現代では逆にこの「マニュアル・トランスミッション搭載フェラーリ」の希少さが評価され、投機的な意味合いもあってその相場が急騰しているわけですが、やはり無視できないのは「もう生産されていない、そして今後も生産されないであろうMTに乗りたい」「自分でクルマにかかわるすべての操作を行うというアナログな体験を行いたい」「フェラーリのエンジンをMTでブン回したい」というドライビングエクスペリエンス(あるいはドライバー・エンゲージメント)を重視するという傾向で、そういった要望を満たすために「マニュアル・トランスミッションへのコンバージョン」を行うサービスも登場しているわけですね(これをやってしまうと売却時に大きく価格が下がってしまうが、それでもやるということは、価値よりも自分の楽しみを尊重しているということになる)。

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ちなみにですが、ぼくは比較的マニュアル・トランスミッションを好む傾向にあり、その根底にあるのは「クルマを運転するとき、クルマがギアを選ぶのと、自分がギアを選ぶのとではまったく意味が異なるから」。

たしかにシングルクラッチ、デュアルクラッチであっても「パドル」にてギアを選ぶことはできるものの、プログラム上「不可能な」操作もあり、そしてプログラムではカバーできない操作をドライバーが行うことが「クルマを走らせる」醍醐味なんじゃないかとも考えているわけですね。

その一方、一定の馬力を超えると「人力によるシフトチェンジ」が間に合わないことも認識していて、ぼくの中では「300馬力まではMT、300馬力を超えるとAT」のほうがスムーズに走ることができ、ドライビング体験を最大化できるんじゃないか、とも認識しています。

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参照:CARBUZZ

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