| ただしこの70万台の中にはPHEVも含まれ、純粋なEVのみだとまだまだテスラに優位性も |
それでもBYDは安価なEV「シーガル」を発売し、このヒットによって次の四半期にはテスラを抜くとも見られている
さて、中国BYDが2023年第2四半期に(前年同期比2倍以上となる)70万台以上を販売しテスラの466,000台を上回ったとの報道。
BYD(比亜迪)はウォーレン・バフェット氏が投資していることで知られ、かつてはガソリン車を製造していたものの、今では「電動車のみ」を製造する自動車メーカーです。
そして今回の70万台というのは中国の自動車メーカーとしては過去最高の電動車販売台数であるといい、BYDは揺るぎない地位を確保したとも考えて良さそうですね。
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ただし「バッテリー式電気自動車」に限ればテスラのほうが「上」
しかしここで注意を要するのは、BYDの販売台数について「プラグインハイブリッドとバッテリー式電気自動車の両方がカウントされていること」で、しかしもちろんテスラの数字は「バッテリー式電気自動車のみ」。
ちなみに中国ではエコカーのことを「NEV」といい、これはニュー・エナジー・ヴィークルの略で、ここにはプラグインハイブリッド、バッテリー式電気自動車、FCVが含まれます。
つまり(プラグインではない)ハイブリッドはここにカウントされないということになりますが、BYDの数字はこのNEVすべてを含んだものということですね。
そして今回の報道では、BYDのバッテリー式電気自動車のみの販売台数については触れられていないものの、これに関してはテスラの販売を下回ったとしているので、「466,000台よりも少ない」ということになりそうです。
ただ、BYDは5月単月では119,000台(前年同期比200%以上)のバッテリー式EVを販売していて、これに対してテスラの販売台数は77,695台(前年同期比142%)だとされているので、BYDの2023年第2四半期におけるバッテリー式EVの販売台数はテスラとは「さほど大きく差が開いていない」のかもしれません(そしておそらく第3四半期にはテスラを逆転するものと思われる)。
なぜBYDはここまで販売を伸ばしているのか?
そこで気になるのがなぜBYDはここまで販売を伸ばしているのか。
その理由は車両価格の安さ、そしてコストパフォーマンスにあるとされ、最も顕著なのが4月に発売された「シーガル」。
このシーガルの現地価格は78,000元つまり邦貨換算だと155万円くらいとなり、BYDのベストセラー「ドルフィン」の116,800元よりもさらに安い価格です。
そしてBYDの5月以降の伸びはこのシーガルによるものだと考えてよく、BYDにとっての最大の武器は「価格」ということになるのかもしれません。
ただ、BYDにはさらなる強みもあり、それは「バッテリーを自社で製造していること」。
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そのため他の多くの自動車メーカーのようにバッテリーの入手に頭を悩ませたりすることがなく、かつバッテリーの価格高騰による影響を受けにくく、「安価に、かつ安定した」車両生産を行えるという事情があるわけですね。
多くの自動車メーカーが思うように生産できない、もしくは生産できる環境にあってもEVが売れずに工場の操業を停止する例もあるものの、BYDについてはその両方にも当てはまらず、よって今後もその快進撃が続くものと思われます。
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参照:CNN Business