| 日本の自動車メーカーは、日本市場特有の「ガラパゴス化」により、他メーカーとのEVシフトに対する認識に差が出たのかも |
いずれにせよ、現状を正しく認識し、ここからの盛り返しに期待したい
さて、米The International Council on Clean Transportation(ICCT)がまとめた衝撃的なレポートが公開されて話題に。
The International Council on Clean Transportation(ICCT)は「次世代のクリーンなモビリティに関する国際評議会」といったところだと思われますが、このレポートは世界の自動車メーカー(あるいはグループ)を、これまでのEV移行への取り組みに基づきランク付けしたものとなっています。※内容を見ると、ピュアEVのみを対象とし、PHEVは含まないようだ
つまり、内燃機関(ガソリン/ディーゼル)自動車から電気自動車への移行における現在の進捗状況を調べ、その企業がリーダー(先行者)、トランジショナー(移行者)、ラガード(停滞組)のいずれであるかを判断し分類し、それぞれの中でもランキングを行っているのですが、その内容が想像以上にシビアだというわけですね。
なお、この”ラガード”という言葉は、イノベーター理論で使用されることがあり、その際の意味合いとしては「新しいことに対して興味を示さない」「頑固で過去に固執する」といったもので、本来の”Laggard”という単語は「のろま」「ぐず」などのけっこうネガティブなニュアンスを持っています。
日本の自動車メーカーはすべてひどい成績に
まず概要を述べてみると、「リーダー」に分類されたのはテスラとBYDのみ。
テスラは当然として、BYDはもともとEVメーカーではなく、しかし内燃機関車から撤退し、PHEV含む全車EV化に移行(2022年3月に最後のガソリン車を送り出した後、もう内燃機関車を作ってない)したことが大きく評価されたのかもしれません。※今回のレポートでは、EVのシェアやセグメントのカバー率、電費、充電速度、航続距離、バッテリーのリサイクル性、投資額、技術、ビジョンなど、じつに幅位広い項目での評価がなされている
そして「移行者」はBMWなど12社、そして「停滞組」には日本の自動車メーカーが全て入っていますが、それぞれの内訳、そしてスコア(カッコ内の数字)は以下の通りとなっています。
リーダー
- テスラ(83)
- BYD(73)
移行者
- BMW(56)
- フォルクスワーゲン(53)
- ステランティス(50)
- 吉利汽車/ジーリー(48)
- ルノー(47)
- メルセデス・ベンツ(45)
- GM(45)
- 上海汽車/SAIC(44)
- 長城汽車(38)
- フォード(38)
- ヒョンデ+キア(38)
- 長安汽車(36)
停滞者
- トヨタ(30)
- ホンダ(28)
- 日産(27)
- タタ(27)
- マツダ(10)
- スズキ(0)
これが世界の現実である
このランキングを見るに、その内容は「まさに驚愕」と言ってよく、ハイブリッドカーをいち早く発売したトヨタやホンダのスコアが非常に低いものとなっており、とくにハイブリッドで圧倒的なシェアを持ち、かつ世界の自動車メーカーの考え方を変革し、電動化への流れを作ったトヨタですらこの数字にとどまっているのが衝撃的です。※停滞者の中ではトヨタが最高位である
参考までに、すでに多くの国や地域では「ハイブリッドはもはやエコカーではない」として減税対象から外れており、中国でも「新エネルギー車(NEV)」に含まれないといった扱いがなされていますが、これがまさに世界の現実なのかもしれず、世界的な認識では「トヨタはエコな自動車メーカーではない」のかもしれません。
なお、日産は他の自動車メーカーに先駆けてEV(リーフ)を投入したものの、日産の総販売台数におけるEV比率が低いためにこの評価にとどまるようですね。
日本の自動車メーカーの評価が総じて非常に低いのは、総販売台数に占めるピュアEVのシェアが非常に低いこと(トヨタだと1%、日産で4%、マツダは1%、ホンダは1%に満たない)、そしてピュアEV化比率の目標が低いこと(トヨタで39%だが、BMWでは72%、メルセデス・ベンツでは96%)などが大きく影響しています(そのほかにも各メーカーごとの個別の要素がある)。
もちろん今回の統計はひとつの機関によるものであり、必ずしも現状や未来を正しく捉え、また示しているものとは言えませんが、日本の製品やサービスは多くの分野でガラパゴス化しており、家電や携帯電話、電子機器についてもかつての「リーダー」からその座を奪われ、場合によっては撤退を余儀なくされていることからも、自動車においてもどこかで「主役交代」があるのかもしれません。
実際のところ、日本の自動車メーカーは、かつて市場の主役であった欧州車やアメリカ車のシェアを獲得することで勢力を伸ばしているので、この100年に一度と言われる自動車業界の大変革に乗じた旧勢力の復権、そして新興勢力の台頭によって、現在のポジションを奪われる可能性も十分にあるとも考えられます。
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参照:International Council on Clean Transportation (ICCT) , InsideEVs