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フォードが中国製EVに対抗するためにテスラやアップルから人材を引き抜き「低価格EVプロジェクト」をスタートさせたとの報道。その成果には期待がかかる

フォードが新型F-150の発売に際し「ハイブリッドモデルの販売を2倍にする」。これから欧米の自動車メーカーは利益を出しやすいHVに注力し、HV市場が過密になる可能性

| 中国車に対抗するかしないか」は各自動車メーカーによって対応が分かれる |

そもそも「対抗できない」「対抗しても利益を失うのみ」と考えるメーカーも

さて、「EVを1台販売するごとに大量の赤字を出している」と報じられるフォード。

それでも電動化は避けることができない未来であり、その利益を確保するために低価格EVの開発プロジェクトを立ち上げ、リビアン、テスラ、ルシードから従業員を引き抜いた、との報道。

過去1年間で約300人がチームに加わったとされ、このプロジェクトはフォード内で「スカンクワークス」と命名されていることもあわせて報じられています。

フォードは「EV1台の販売につき1550万円の赤字」。わずかしか売れないEVがガソリン車の利益を一瞬で奪い去り、未来だと思われたEVが業績の大きな「重し」に
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目的はやはり「中国のEVへの対抗」

このスカンクワークスの最大の目的はやはり「中国の安価なEVへの対抗」だとされ、今年1月にはフォードの最高経営責任者ジム・ファーリー氏自らが「低コストEVプラットフォームの開発作業」を認めていることもあり、このスカンクワークスはフォード内において非常に重要なポジションを占めるのだと考えて良さそうですね。

いくつかの報道によれば、フォードはリビアンから50人、テスラからは20人以上、カヌーからも12人、さらにはルシードやアップルからも人材を引き抜き、おまけにF1チーム(どこなのかは明かされていない)からも2人のエアロダイナミクス専門家を獲得したもよう。

このチームの拠点はカリフォルニア州アーバインにあり、今年初めに採用が加速したとみられますが、時を同じくしてテスラは大量の解雇を行っているので、フォードにとってテスラの人材放出は「渡りに船」であったのかもしれません。

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実際のところ、このプロジェクトがどれくらい進んでいるのかはナゾではあるものの、既存自動車メーカーが「中国の新興自動車メーカーに対し」一矢報いることができるのかどうかには期待がかかります。

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しかしフォードは直近だと電動化に対して「距離を置く」

一方でフォードはEV展開に対してその姿勢を軟化させており、「ディーラーに対して義務付けていた、EV販売のための投資」をもう行わなくてもいいとする通達を出したとする報道も。

順を追って説明すると、さる2022年9月、つまり自動車業界のあらゆる分野にて電気自動車への期待が高まっていた頃、フォードは電気自動車の販売を希望するディーラーに対し、特別認定プログラムの一環として、インフラ投資とトレーニングに数百万ドルを費やすよう義務付けたとのこと。

もちろんディーラーはこれに不満を抱き、その理由は「顧客のEVへの関心は高いが、実際の電気自動車の需要はフォードの上層部が考えているほど高くない」ためで、さほど売れないであろうEVのために、ディーラー内に充電器を設置したり、EVの整備や修理のための器具を導入したり、そのためのトレーニングをサービススタッフに受けさせることは「割に合わない」と主張したわけですね。※当時、GMでも同様の事例があり話題になった

そして直近の報道だと、フォードは全国のディーラーネットワークと数回の協議と会議を経たといい、その結果として「フォードは先月ようやく、ディーラーがこれらの投資を停止することを許可した」とされ、今ではプログラム全体が廃止されていると報じられています。

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このプログラムの廃止によって、これまでにEV販売に名乗りをあげず、投資も行ってこなかったディーラーであってもEVを販売できるようになるといい(逆に、これまでフォードに従って投資してきたディーラーがかわいそうではある)、これは大きな刺青の転換かもしれません。

これによってフォードディーラーは「さほど売れないEVのために」多額の、そして回収が難しい費用を投下する必要がなくなり、そしてフォードはディーラーの不満を解消することが可能となるわけですね。※フォードは最もディーラーから信頼されていない自動車メーカーという統計がある

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こういった姿勢の変化につき、フォードのモデルラインアップ最高執行責任者マリン ジャジャ氏は以下のようにコメントしていますが、実際には「思うように進まないEVの販売、さらにはEVの生産縮小」という状況がある中、これ以上ディーラーへと投資を強要することができなくなったということなのだと思われます。

現時点では、基本的にハードルを下げて、誰でも(EV販売に)参加できるようにしたいと言っているのです。ここからさらに進化し続けなければならないでしょうが、私たちが目にしているのは市場が進化していること、顧客はサポートを必要としているということなので、誰でもここへ参加できるようにしたいのです。そのためには、より多くのディーラーに協力してもらいたいと思っています。以前は、供給が限られていたため、焦点を絞ろうとしていました。しかし、今はそうではありません。

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    参照:Automotive News, etc.

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