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ポルシェ「我々は75年、同じレシピでデザインしてきました。その意味では世界で最も怠惰なデザインを行ってきたと言えるでしょう。しかしここからは冒険の時なのです」

ポルシェ

| 電動化時代を迎え、ポルシェのデザインはここから大きく変化することになりそうだ |

とくにヴィジョン356、ミッションXはその新しい方向性を示している

さて、ポルシェの基本的なデザインは最初の市販車を発売した頃からずっと変わらず、それがポルシェの良いところでもあるのですが、今回ポルシェのアドバンスド・エクステリアデザイン責任者、インゴ・シャインヒュッテ氏が「これからのポルシェのデザインは大きく変わってゆくかも知れない」とコメント。

同氏によれば「私たちは75年間クルマを作ってきたものの、ずっと同じレシピを使用しており、その意味では自動車業界で最も怠惰なデザイナー達だと呼ばれてきました」。

これはなかなかに自虐的でもあり面白いコメントでもありますが、ここからポルシェはどこへ向かうのかについて、さらに踏み込んだ発言を行っています。

将来登場するポルシェのEVでは、そのデザインに革新ではなく革命がもたらされるだろう

ポルシェは今年で「スポーツカー製造から」75周年という節目を迎えており、その新しいチャレンジを示すコンセプトカーとして発表されたのが「ヴィジョン357」と「ミッションX」。

ただしこれら両者は大きく性質が異なり、ヴィジョン357はレトロ、そしてミッションXは未来だと置き換えることができるかもしれません。

しかしながら両者で共通しているのは「ポルシェのスタイリング言語に新たなテイストをもたらすためのチャレンジ」「エレクトリック時代を迎えるに際しての冒険的なルックスへの挑戦」「そのディティールが将来の市販車に反映される」ということ。

そして「コンセプトカーはすべてのアイデアを盛り込んだもの」であるとも表現し、そこから「部分的なアイデアを抽出し、さらに発展させ」市販車に取り入れるというプロセスについても言及しています。

Porsche-357 (6)

まずは「ポルシェの原型をつくったクルマへのラブレター」でもあるヴィジョン357につき、最も大きなチャレンジは「ヘッドライト」。

私たちは、 "ポルシェを形づくる主なものは何か?"と自問したのですが、興味深いことに、それはヘッドライトでした。10年前なら、ポルシェで最も重要なエクステリア・エレメントはヘッドライトだと認識されていたでしょう。

よって、インゴ・シャインヒュッテ氏は逆説的アプローチによって「(ヴィジョン357に)ポルシェらしくないヘッドライト」を与えることにしたそうですが、同氏いわく「ポルシェはその本質的なポルシェらしさを失うことなく、ヘッドライトに手を加える方法を見出しつつある」。※今までに公開されたコンセプトカーを見ても、たしかにポルシェが従来の特徴的なヘッドライトから脱却しようとしてきた傾向を見ることができる

Porsche-357 (8)

ポルシェがポルシェであるためにポルシェの象徴をあえて封印するというのはなんとも哲学的なアプローチではありますが、さらにインゴ・シャインヒュッテ氏はこう続けます。

私たちは伝統と革新の両方を同時に押し進めなければなりません。私たちは75年間クルマを作ってきましたが、自動車業界で最も怠惰なデザイナーと呼ばれてきました。我々は常に可能な限り革新的であろうとしていますが、デザインに革命を起こそうとはしてこなかったのです。私たちは75年間、このレシピを使い続けてきました。

つまりはこれから突入する電動化時代においてはデザイン上の革命がいくつか起きると考えてよく、実際にポルシェはピュアエレクトリックスポーツコンセプト、「ミッションR」に対しては横長のヘッドライトを与えています。

Porsche-Mission-R (24)

そしてこのヘッドライト形状は718ボクスター/ケイマンEV、マカンEVにも採用されることになるものと思われ、つまり「革命はもう始まっている」のかも。

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さらにいうなれば、ルマン24時間レースを走ったレーシングカー、「ポルシェ963」にも”細長、クワッドLED”ヘッドライトが採用されており、この流れは既定路線だと考えていいのだと思われます。※ポルシェは消費者がとまどわないよう、ゴールを決めてゆっくりと、しかし着実にデザインの移行を行っているものと思われる。そのためにぼくらは徐々にポルシェの新しいデザインに親しむことになり、その変化について行くことが可能となる

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ポルシェ・ミッションXからはどんなデザインが市販車へと転用されるのか

そしてもう一方のミッションXにつき、このテールランプは「単なるライトバーではなく、ポルシェのロゴが組み込まれたLEDライトバー」。

インゴ・シャインヒュッテ氏は「このデザインは、市販車においても見られると確信しています」と語っており、よって将来のポルシェのテールランプはミッションX風に移行してゆくものと思われます。

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加えて同氏は「ポルシェのデザイン革命はスポーツカーから始まる」と述べており、つまり911や718でまず新しいデザインが取り入れられ、そこからSUVへと拡大してゆくもよう。

ただし911は当分内燃機関を積むこととなるためか「クレイジーになりすぎることはなく」、一方でピュアエレクトリックカーへとスイッチする718ボクスターやケイマンについては「もう少し前衛的で、かつ冒険的であってもいい」。

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そしてSUVへのデザイン転用については「うまくいくものもあれば、そうでないものもある」と述べ、たとえば「ヴィジョン357にはサイドにプレスラインがありますが、通常のポルシェは丸みを帯びています。今回は少しエッジを効かせて角を出し、クルマ全体にエッジを持ってくるようにしたのですが、これはSUVにも応用できるでしょうね。一方、SUVには向かないディティールがあるのも確かです」。

まだまだ次世代のポルシェがどんなデザインとなるのかはわからないものの、コンセプトカーを見ていれば「なんとなく」想像をふくらませることができ、そしてコンセプトカーには未来に繋がる要素がたくさん詰め込まれているということを念頭において見てみると、これまでとは異なるコンセプトカーの楽しみ方ができるのかもしれません。

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参照:Autocar

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