
| これまでは破竹の成長を遂げ、高い利益率を誇るポルシェであったが |
もはやポルシェまでもが「サバイバルモード」に突入
高級スポーツカーの代名詞でもあるポルシェが”かつてない危機”に直面しているとの報道。
2023年の世界販売台数は前年比3%減、2024年上半期もさらに6%減少するなど、業績低下に歯止めがかかっておらず、そしてこのたび、2029年までに1,900人の人員削減を行うことが正式に発表されています(かつて臨時ボーナスを連発をしていた状況がウソのようだ)。
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ポルシェが2024年の業績を発表、販売台数に売上そして利益が減少。原因は「中国市場の不振」、そして2025年に対しては厳しい見通しを示す
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「かつてのビジネスモデルは、もはや機能しない」
ポルシェのCEO、オリバー・ブルーメ氏は従業員向けのメールの中で、同社が直面している状況について次のように語っており、この言葉が示す通り、ポルシェは従来の戦略を大幅に見直す必要に迫られているというのが偽らざる現状なのかもしれません。
「これまで何十年も機能してきたビジネスモデルは、今の形ではもはや通用しません。」
主な原因は「中国市場の崩壊」と「米国の関税」
販売不振の最大要因は、中国市場での深刻な落ち込み。
2024年には28%の販売減少を記録し、2025年上半期もさらに28%減と壊滅的。
シャオミを筆頭として中国の国内ブランドによる安価で高性能なEVが急増したことにより、ポルシェの高価格帯モデルが競争力を失いつつあるという現状が存在します。
さらに、トランプ政権の復活に伴う関税強化もコスト増を招き、収益を圧迫するという二重苦に陥っているわけですね。
北米市場は堅調だが、価格上昇が影を落とす
一方で明るいニュースも残っていて、ポルシェの最大市場に返り咲いた北米では2024年には1%増、2025年上半期には10%増と「堅調」に推移。
しかし関税の影響によって車両価格の最大3.6%値上げが実施されており、今後の販売に影響を及ぼす可能性が指摘されているのも事実です。
特に911シリーズのような高額モデル、かつ代替性のないクルマへの影響が少ないものの、マカンやカイエンなどの量販モデルは大きな影響を受けるとされ、というのもメルセデス・ベンツやBMWはマカンやカイエンと競合するSUVを米国内で生産しており、これらは(関税の影響を受けないので)「値上げの対象ではない」から。
今までポルシェは(一部の東欧産を除いて)メイド・イン・ジャーマニーを貫くことで品質とブランド価値を担保してきましたが、今回はそれが「裏目に出た」形だと言えそうです。
EVシフトの見直し、ガソリン回帰の兆しも
着法の通り、ポルシェは2030年までにEV比率を80%にするという目標を掲げていたものの、「もはや現実的ではない」としてこの目標についても撤回を正式発表。
タイカンの販売は2024年に49%減少し、2025年上半期にもさらに6%減となるなど「販売を失う一方」であり、この結果を受けて同社はEV専用モデルにガソリンエンジン仕様を設定する可能性も示唆したこと、そしてカイエン、マカン以外にも「ガソリンエンジンを積むEV」を投入する計画を示したことも記憶に新しいかもしれません。
スポーツカー2モデルが生産終了、EVカイエンが登場へ
直近の動きとしては、現行モデルの718ボクスターとケイマンは2025年10月で生産が終了され、後継となるEV版は2026年以降に登場する予定(ただしこれらは投入が遅れる、あるいは意図的に後ろ倒しにされる可能性が高い)。
また、近く発表予定のカイエンEVが巻き返しの鍵を握ると見られていますが、市場の反応は未知数で、マカンEVはまずまずの滑り出しを見せているものの、強力な競合がひしめく中での成功は容易ではなく、初速こそは「いいペース」を確保できたとしても、それを維持することは容易ではないと思われます。
さらには3列シートSUVの投入計画もあるものの、ローンチ時期は未定であり、やはりEV需要低迷の影響を受けているとされています(設計を変更しハイブリッド化される可能性もある)。
まとめ:ポルシェは“高級EV”路線を再考せざるを得ない状況に
・販売低迷
・コスト上昇
・中国市場の苦戦
・EV需要の伸び悩み
・内燃機関モデルの縮小
これらが重なった結果、ポルシェは抜本的な戦略転換を迫られているというのが現在の状況で、かつての「高級スポーツカー×プレミアムEV」という路線が限界に達した今、同社がどのような新たな道を描くのかに注目が集まります。
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参照:Reuters