
| アウディ、販売減からの再起へ。「今こそ立て直しの時」 |
メルセデス・ベンツ、BMWとの相違は「スポーツカーがない」
アウディの現状は決して芳しくはなく、2024年の世界販売台数は前年比11.8%減の167万台。
2025年上半期も前年同期比5.9%減の78.3万台にとどまり、メルセデス・ベンツやBMWに後れを取っています。
しかし、Q3、Q5、A5、A6などの新型モデル群が投入され始めており、CEOのゲルノート・デルナー氏はドイツ『Bild』誌のインタビューで次のように語っているというのが現在の状況です。
「回りくどいことは言いません。我々は今すぐ立て直しが必要です。今がどん底だと思っています」
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「TTモーメント2.0」:アウディが賭ける“感情に訴える”EVスポーツカー
これに加え、デルナーCEOは驚くべきことに、「TTのような象徴的存在となるスポーツカー」を今秋に発表すると明かし、このクルマは社内では「TT Moment 2.0」と呼ばれ、かつての初代TT(1998年)がもたらしたブランド再活性化の再現を狙う存在なのだそう。
「これは新時代のアウディのアイデンティティ構築に繋がるモデルです。コンセプト段階ですが、2年以内に市販化されます」
このモデルはR8の復活でも、TTの第4世代でもないとのことで、しかし「その中間に位置する」と説明されており、高いエモーション性を備えたフル電動スポーツカーとなようですね。
公開は2025年9月のIAAモビリティショー(ミュンヘン)を予定しているというので「まもなく」、そして次世代デザイン言語、先進技術、新たなプラットフォームを採用し、「新しいアウディの象徴」となるべく登場するということについてもアナウンスされています。
EVへの完全移行は延期。内燃機関も継続へ
なお、アウディは2032年までにEV専売ブランドへ移行する計画でしたが、その方針は中断され、2035年頃まで延期されることになったのは既報の通り。
また、高級セダン「A8」の後継として期待されていたグランドスフィア(Grandsphere)コンセプトの量産化も見送りとなり、今回のコンセプトはそれとは異なるポジションであることが示唆されています。
そしてアウディは「完全電動化ブランド」への移行に際し、「R8やTTなどのスポーツカーの時代は終わった」「それらは一定の役割を果たし、今のアウディには必要がない」として切り捨てる意向が示されていたものの、それら直接の後継ではないとしても「アウディがこの状況でスポーツカー」ということには驚きを禁じ得ない状況です。
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ただ、アウディは現状を打破するためには「メルセデス・ベンツやBMWにあって、アウディにはない」スポーツカーが必要であると考えた可能性が高く、そこで今回の「TTモーメント 2.0」の導入となったのかもしれません。
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なお、「ガソリンではなくピュアエレクトリック」なのは、おそらくポルシェが開発中の「電動版」718ケイマン・ボクスターのプラットフォームを流用して「コストと時間を抑えて」開発するためだと思われ、逆に「ガソリン」だとグループ内に転用できるプラットフォームが存在せず、一時は「ランボルギーニ・テメラリオ」の車体を流用するという話もあったものの、これは「コストが掛かりすぎる(アウディブランドにて、この価格帯のスーパーカーを売ることは難しい)」のだと(そのために見送られるのだと)思われます。
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いずれにせよ、電動化を進めたばかりに「味気なく、面白みがないブランド」となってしまったアウディにとって、このTTモーメント 2.0の導入は喜ばしいニュースであり、アウディが主張するように「初代TTが巻き起こした旋風」の再来を期待したいところ。
なお、アウディのデザイナーはつい最近交代したところでもあり、そのデザイナー手動による新しいコンセプトカーが近日中に発表されるという噂がありましたが、そのクルマがこの「TTモーメント 2.0」なのだと考えてよさそうですね。
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アウディは「品質面での反省」も
さらにアウディの幹部陣は品質面での低下を認めており、今年初め、プロダクト・コミュニケーション責任者のオスカー・ダ・シルバ・マルティンス氏は次のように述べ、さらにはタッチ式スイッチから「物理スイッチ」への回帰についてもコメントを行っており、今後のアウディは大きく変わることになるのかもしれません。※ぼく的な体感値だと、TTでは先々代、つまり2代目TTのころの品質が最も高かった
「過去のほうが品質は明らかに良かった。我々は必ずそこに戻ります」
参考までに、フォルクスワーゲングループ内では、アウディは「クライシスケース(問題児)」と呼ばれることもあるとされ、その意味でも新しいコンセプトカーにはアウディ再興の期待がかかります。
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参照:Motor1