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フェラーリ・プロサングエは発表からはや2年。プロサングエはフェラーリの利益そしてイメージをどう変えたのか、それは「成功」だったのか

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| 結論から言えば、プロサングエは「フェラーリにとって、あらゆる方面からの利益をもたらした」クルマだと言えるだろう |

そしてその利益は綿密な計画によってもたらされている

さて、信じられないことですがフェラーリ・プロサングエは発表から2年以上が経過しており(2022年9月13日に発表されているが、まったく走行している姿を見ないので納車が始まっているという印象がない)、そしてこのプロサングエは「フェラーリ初の4ドア量産車」「しかもSUV(フェラーリはSUVと呼んでいない)」という今までのフェラーリにはない性格のクルマで、フェラーリファンのみならず自動車業界を大きく揺るがした一台です。

そしてこのプロサングエにつき、一部の純粋主義者は「フェラーリの歴史に対する冒涜である」と捉え、またある人々は「フェラーリが新しいセグメントを開拓し、それによって豊富な資金を獲得し、(ポルシェやランボルギーニのように)より優れたクルマを作ることができるようになる」「(フェラーリオーナーにとって)やっと家族で乗ることができ、一緒に旅行できるフェラーリが登場した」と捉えるなど「人それぞれ」。

ただし全般的には、お金があり、フェラーリオーナーで、かつ複数のフェラーリを所有している人ほど「好意的」で、フェラーリを所有していない人ほど「否定的」であるという印象を持っていて、これはどの製品やどの業界でも同様なのかもしれません。

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フェラーリ・プロサングエは「成功」だったのか?

そこで気になるのが、フェラーリにとってプロサングエは(販売、利益、イメージ的に)成功であったのかどうか。

まずフェラーリの総販売台数は今年の1-6月(上半期)では7,000台以上を出荷しており、これは昨年に比較して1.2%の増加です。

なお、この1.2%というのは(コロナウイルスのパンデミックが直撃した2020年を除くと)この10年でもっとも低い成長率ではありますが、7,000台という数字は(驚くべきことに)2014年の年間販売台数(3,694台)の”ほぼ倍”。

そしてもうちょっと踏み込んだ数字を見てみると、2024年1~8月だとプロサングエは1,489台が出荷されており、もっとも売れた296シリーズ(3,117台)とローマシリーズ(1,870台)に次ぐポジションです。※ただしフェラーリはモデルごとに生産台数を調整しており、モデルライフ終了に向け生産が終了しつつあるモデル、逆に生産が本格化していないニューモデルなどがあり、販売台数はすなわち「売れている」「売れていない」という人気度を表すものではない

モデル販売台数(2023年1-8月)販売台数(2024年1-8月)
296シリーズ1,700台3,117台
ローマシリーズ1,329台1,870台
プロサングエ43台1,489台
SF90シリーズ1,333台1,162台
812シリーズ1,270台723台
ポルトフィーノ1,175台160台
デイトナSP375台133台
F8シリーズ1,254台49台
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ここで注目すべきはプロサングエの「価格」で、プロサングエの価格は(フェラーリの最大市場である)北米では423,686ドルに設定されていて、296GTBよりも81,000ドル高くローマ(クーペ)より176,000ドルも高い価格です。

そしてプロサングエの販売台数はSF90系よりも28%多く、しかしSF90系のスタート価格はプロサングエよりも16%高いだけにとどまるので、つまるところフェラーリはラインアップ全体においてプロサングエの販売増によって「着実に売上高を伸ばし、利益率を改善している」と考えることができ、これは企業によって非常に重要な成果です。

実際のところ、フェラーリは「会社を成長させる=販売台数を増加させるという意味ではない」とも語っており、直近での「1.2%」という販売台数の増加率は「意図的に販売を抑えた結果であって、そして販売台数を抑えることが可能となったのは「プロサングエが大きな利益を稼いでくれるから(販売台数を伸ばす必要がない)」なのだと思われます。

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フェラーリのブランドイメージがプロサングエの登場によって「悪くなった」という証拠はない

販売台数を抑えつつ利益率を向上させることもメリットは多数あり、そのぶん「生産のためのコストが下がる(手配する部材、人間の数も少なくてすむ)」という実質的なメリットのほか、「希少性を保てる」という側面も。

フェラーリのクラシックカーは非常に高い価値を持つことで知られていますが、その価値は「モータースポーツにおける豊かな歴史」「車両そのものの希少性」によって担保されているため、業績を伸ばそうと販売台数を増加させると希少価値が下がり、エンツォ・フェラーリの言った「未来の(価値ある)クラシックフェラーリは、今あなたが買い求めている新型車です」という理論が通じなくなってしまうわけですね。

よって「販売台数を増やさずにお金を稼げる方法」を模索することはフェラーリにとって(ブランドバリューを重視するという意味では、ほかのどの自動車メーカーよりも)非常に重要で、そしてプロサングエは既存のラインアップ、そしてこれからも展開してゆく「スポーツカーラインアップ」の販売を侵食することがなく、むしろそこに「オン」できる可能性が非常に高くなります。

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そしてプロサングエが増えた分、フェラーリは「意図的に」スポーツカーの販売を抑え、これによって希少性を高めるという戦略を採用することができるようになり、この意味においてもフェラーリは「今目に見えるわけではないが、将来的には大きく反映されるであろう」利益を期待することも可能です。※近年のフェラーリはラインアップを増やし、しかしラインアップそれぞれでの寿命を短く設定し、その車種の総生産台数を下げることで希少性を担保する戦略を採用している

ただ、フェラーリは(上述の通り)ブランドイメージを重視しているので、プロサングエの生産を増やすことによって「スポーツカーイメージ」を希薄化させたくないと考えており、プロサングエについては「販売する人を厳選し、かつ販売台数を全体の20%以内に抑える」と明言し、ポルシェやランボルギーニ、アストンマーティンのように「SUVが販売の半数を占める」状況を作りたくないという見解を示しています(実際のところ、2024年1-8月では、プロサングエの販売比率はほぼ計画通りの21%である)。

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こういったフェラーリの戦略によって、プロサングエは(主に)フェラーリをすでに所有しているVIP顧客のみに販売されて彼ら/彼女らの日常の足となり(フェラーリはプロサングエ発売時、”このクルマは今まで我々を支えてくれた顧客に対するギフトです”と明言している)、そしてこれら顧客は「フェラーリのDNAを理解しつつプロサングエに乗る」ためにプロサングエについてはネガティブなイメージを持たず(V12を積んでいるところが大きい)、かつプロサングエの販売台数が限られているため「(フェラーリの)スポーツモデルよりも多くのプロサングエを見る」こともないために「フェラーリ=SUV」といったイメージが(一般の人々に)持たれることもなく、よってフェラーリのブランドイメージ、そしてブランドバリューはこれまで通り、あるいは株価を見る限りでは「これまで以上」に押し上げられたと考えていいのかもしれません。

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参照:Motor1

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