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ヒョンデ幹部が語る「マニュアル車の終焉」、そして電動時代の“新しい走りの楽しさ”とは?

ヒョンデ

| 「もはや誰もマニュアル車を欲しがらない」──ヒョンデ欧州幹部が断言 |

ヒョンデはその「代わりとなるもの」を見つけたようだ

世界中の自動車ファンの中には、「マニュアル・トランスミッション(MT)」にこだわる“ギア好き”も多いですが、ヒョンデの高性能部門「N」を支える幹部が、MTの未来について厳しい現実を語ったとして話題に。

この発言を行ったのは、ヒョンデ・モーター・ヨーロッパ・テクニカルセンター(ドイツ)の責任者であるタイロン・ジョンソン氏。

彼は英Car Magazineのインタビューにて、「マニュアルやアナログ操作、ハンドブレーキなどはもはや求められていない」と語っています。

「速く走りたいなら、EVに勝るものはない。マニュアルにこだわるノスタルジーは理解できない」(タイロン・ジョンソン)

なお、この発言は多くの自動車メーカーが採用する「ガソリンエンジンへの再注力」「アナログに回帰する」という流れとは真逆にあるもので、たしかに興味深いものでもありますね。

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エラントラ N/i30 Nが“最後のMT車”に?

現時点でヒョンデのラインアップに残されたMT車は、北米向けのエラントラ Nおよび海外市場向けのi30 Nのみ。しかし、その寿命も残り短い可能性が高いと見られています。

これは単にEV化の流れだけが理由ではなく、「MTの販売比率があまりに低い」という経済的理由が背景にあるようで、もはやマニュアル・トランスミッションを残すことは「ビジネス上、正しくない」と判断されたのかもしれません。

たしかに現在、MT車は高い人気を誇り、MT車を継続生産する自動車メーカーは高い支持を集め称賛される傾向にありますが、それは「その自動車メーカーとクルマ次第」。

BMWがEVにも「ガソリン車風のシフトチェンジ、サウンド、振動」を持たせることを検討中。「そうしないとEVは静かすぎてサーキットではクルマの状態を把握できない」

たとえばBMW「M」やポルシェのように、スポーツカー専業ブランドであれば、そしてGR86やマツダ・ロードスターであれば、「MTを残す」ことでそのブランドや、そのクルマを作る自動車メーカーのメッセージを消費者に届けることができ、たとえ採算が合わないとしても、MTを残す意義はあるのだと思われます。

ただ、ヒョンデはスポーツカーメーカーではなく、いかにハイパフォーマンスるブランド「N」であったとしても、そのベースとなるのはヒョンデブランドのコンパクトカーやセダンであり、これらをハイパフォーマンス化したとしても「生粋のスポーツカー」としては認識できず、よってこれらにMTを求める人がそもそも少ないというのが現実なのかもしれません(実際のところ、NブランドではMTを選択する人そのものが、ほかのスポーツカーブランドに比較して高くはない)。

EVでも「擬似マニュアル操作」は可能?

しかしながらヒョンデの「面白いところ」は、MTを捨てるといっても「操る楽しみ」を放棄するわけではなく、実際にEVモデル「アイオニック 5 N」に、「N e-Shift」という疑似マニュアル変速機能を搭載済み。

これはドライバーが「まるで本物のMTのようにギア操作や回転数の変化、音や振動を楽しむことができる」というデバイスであり、実際にBMW M、ランボルギーニもアイオニック 5 Nをテストし、一定の評価を下していることでも知られます(その意味では、ヒョンデが新しい価値観を示したことは間違いない)。

ランボルギーニ
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さらに同氏の発言は「電動化」を積極的に進めるというヒョンデのスタンスを踏まえたものであり、ヒョンデは「ガソリン+MTというノスタルジーに固執せず、新時代のドライビングプレジャーを追求する」ということなのでしょうね。

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一方で「物理スイッチ」は復権の兆しのトレンドも?

なお、タイロン・ジョンソン氏は「アナログ操作も不要」との見解を示しましたが、これには反発の声も多いものと思われ、実際、最近ではフォルクスワーゲンが新型各車に、そしてフェラーリが「アマルフィ」にて物理ボタンを復活させるなど、タッチパネル一辺倒だったインターフェースに見直しの動きも出てきています。※ただ、ヒョンデはそこまでデジタル化を進めている自動車メーカーではない

加えてブガッティはトゥールビヨンの操作系を「ほぼアナログ」として設計しており、「デジタルからアナログへの回帰」は一般車からハイパーカーに至るまでのトレンドとなっているのが現状ですが、今後ヒョンデが「どうデジタル化を行うのか」にも注目が集まるところですね。

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【まとめ】ヒョンデも“MT終了”の流れ、だが完全消滅ではない?

マニュアルトランスミッションは、大手自動車メーカーのラインアップから着実に姿を消しつつあり、しかし、小規模なスポーツカーブランドやクラシックカー市場では、今後も「MTの灯」が受け継がれていくのは間違いなさそう。

しかしヒョンデが目を向けるのは「未来」であり、ヒョンデが提案する「電動車での走りの楽しさ」が、従来のMTに代わる“新たなドライビング体験”として受け入れられるかが、今後のカギとなりそうです。

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