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ロールス・ロイスは燃料電池車(FCV)に興味アリ?「その時が来れば」BEVを捨てて水素を選択する可能性があるようだ

2023/06/14

ロールス・ロイスは燃料電池車(FCV)に興味アリ?「その時が来れば」BEVを捨てて水素を選択する可能性があるようだ

| ロールス・ロイスの判断基準は「ラグジュアリーであるかどうか」となるようだ |

現時点ではまだ具体的にFCVへと移行する計画を持っていないようだが

さて、ロールス・ロイスはピュアエレクトリックカー(BEV)「スペクター」を発売したところですが、今回「条件が整えばFCVへの移行を検討し、BEVをやめるかもしれない」という驚きの発言を行っています。

そしてもし実際にBEVをやめてしまえば、スペクターはまさに1代限りのBEVということになり、そうなると「価値が出るのか、もしくは価値を失うのか」まったくわからないものの、こういった例が発生する可能性もあるために「まだまだBEVは過渡期」と言われるのかもしれません。

BEVとFCVとの違いは?

そしてここでBEVとFCVとの違いに触れておくと、BEVとは「バッテリー・エレクトリック・ビークル」の略で、日産リーフやテスラのようなクルマを指し、バッテリーに充電することで電力を蓄え、その電力でもって走行するEVです。

一方のFCVとは「フューエル・セル・ヴィークル」の略であり、燃料電池車と表現されることも。

これは一般に「車両に水素を注入し、水素と酸素との化学反応から電力を取り出し(発電し)、その電力でもって走行する(蓄電池を備え、発生した電力をそこへ充電することもある)」クルマを指しますが、この代表格はトヨタ・ミライやヒョンデ・ネッソといったところですね。

なお、「水素」を直接の燃料とするパワートレーンも存在していて、これはガソリンエンジンのような内燃機関に水素化合物を噴射し、それを燃焼させて駆動力に変換するというものであり、「ガソリンのかわりに水素化合物を使用している」と考えるとわかりやすいかもしれません。

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参考までに、現在の自動車メーカーの水素に対する考え方は様々で、主にトヨタとBMW、ヒョンデはFCVに取り組み、トヨタそしてポルシェは水素を使用した内燃機関の研究を進めていますが、ル・マン24時間レースでは、2026年から水素化合物が燃料として認められるというので、より多くの自動車メーカーが水素に対しての取り組みを強化することになるのかもしれません。

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ロールス・ロイスはなぜFCVに興味を?

そこでロールス・ロイスに話を戻してみると、この水素に関するコメントは、同社CEOであるトルステン・ミュラー・エトヴェッシュ氏がカーメディアに対して語ったもので、まず水素化合物を燃焼させる方法について、「水素燃焼エンジンは、何年も前にすでにテストされているので、あらためて我々が検討するようなものではない」とバッサリ。

ちなみにですが、ロールス・ロイスの親会社であるBMWは2000年代初頭にE65世代の7シリーズを水素燃焼エンジン仕様へ改装した「ハイドロジェン7(Hydrogen 7)」を100台ほど製造して社会実験を行ったことがありますが、どうやらこれは思ったような結果を得られなかったと見え、トルステン・ミュラー・エトヴェッシュCEOいわく「それ(水素燃焼エンジン)は、水素を使うのに最も効率的な方法ではありません。もし将来、水素が使われるとしたら、それは燃料電池です。そして、燃料電池はバッテリーと何も変わりません。エネルギーをどのように得るかの違いだけです」とコメント。

たしかにBEVは「バッテリー」、FCVは「水素と酸素の化学反応を利用する」という相違はあるものの、それぞれ得られた電力にてエレクトリックモーターを駆動するということについては変わりがなく、しかしトルステン・ミュラー・エトヴェッシュCEOは「同じ距離を走るには、水素のチャージにかかる時間のほうが、バッテリーに充電するよりも遥かに短い」ことにメリットを感じているもよう。

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ただしFCVの普及にはまだまだ課題も

ただ、現時点でロールス・ロイスが(スペクターに)選んだのはFCVではなく「BEV」。

これについてトルステン・ミュラー・エトヴェッシュCEOは「機が熟していないから」だと答えており、「ロールス・ロイスは、何よりもまず、この世で最も優れた高級車として設計されています。しかし、ラグジュアリーとは、ウッドパネルやソフトレザーの枠を超えたものです。真のラグジュアリーとは自由であり、妥協や心配なく、より高速で(楽に)移動できる能力を指しています。そして水素燃料電池を搭載したロールス・ロイスは、そのすべての面を実現できなければ、妥協したことになります」と続けます。

そしてこの「妥協」とは、現在の水素充填ステーションの少なさを指しており、水素を充填するために何十キロも余分に走って時間を浪費することは「ラグジュアリーではない」と考えているようですね(ぼくもそう思う。ココ・シャネルは”ラグジュアリー”の対義語は”下品”であり”貧困ではない”と語っており、よってラグジュアリーとは単純な贅沢を意味するのではない)。

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参考までに、水素ステーションは日本だと(稼働中のもので)42箇所しか存在せず、よって水素ステーションが存在しない地域も多くあり、つまりは「水素をチャージするために、他の都道府県まで行かねばならない」ということに。※この状況は世界中でも大差ないようだ

そういった行動は「洗練されている」とはいえず、これをラグジュアリーとは呼べないのは当然のことなのかもしれません。

一方、トルステン・ミュラー・エトヴェッシュCEOによれば、「私達の顧客は、ガレージにクルマを何台も(ときには何十台も)並べており、かつ新しいものを積極的に取り入れる傾向があるので、すでに電気自動車を保有している例がほとんどであり、よって自宅には充電スタンドを(大半の顧客が)設置している」。

こういった理由によって現在ロールス・ロイスはFCVよりもBEVを選択しているということになりますが、水素ステーションが普及し、「充電よりも水素チャージのほうが便利で洗練された体験になれば」FCVへと間を置かずに移行するのかもしれません。

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参照:Autocar

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