ポルシェが「水素エンジンも研究中」と発表！シミュレーション上ではV8エンジンで598馬力を発生可能、排ガスは「大気と同じレベルでクリーン」

｜　とにかく環境への対応は自動車メーカーにとっては「お金がかかるばかり」　｜

それでも社会的責務として対応しないわけにはゆかないのがツラいところ

合成燃料（Eフューエル）に可能性を見出しているポルシェではありますが、同社はよりクリーンなモビリティの時代に向けて、あらゆる手を尽くしていると見え、今回ポルシェのエンジニアリング部門がV8エンジンのひとつを水素に変換することを検討したていると発表。

ポルシェのエンジニアリング部門にて、エンジンシミュレーションのシニアエキスパートを務めるヴィンチェンツォ・ベヴィラクア氏によれば、「コンセプトスタディとして、現在の高性能ガソリンエンジンのパワーとトルクに匹敵することを目指した水素燃焼エンジンを開発した」とのこと。

さらには「同時に、低燃費を実現し、排出ガスを外気と同レベルに抑えるという目的も達成しています」と述べています。

ただし今回の研究はあくまでも「バーチャル」

なお、今回の研究は物理的なものではなく、あくまでバーチャルなシミュレーション上のみのものだといい、しかしこの研究チームはポルシェの4.4リッターV8エンジンを水素にて稼働させることができるよう（バーチャルにて）改造したと述べ、しかし最大の難関は、ターボチャージャーを新しい燃料（水素）に対応させることだったといいます。

「水素をきれいに燃焼させるために、ターボチャージャーにはガソリンエンジンの約2倍の空気量を供給しなければなりません」とは前出のヴィンチェンツォ・ベヴィラックア氏の言。

「しかし一方で、水素エンジンは排気温度が低いため、排気側の推進エネルギーが不足してしまうのです」。

そこでチームは、必要な圧力を発生させるために電動コンプレッサーを導入し、何度もテストを繰り返した結果、最終的に「タービンとモーターを共通のシャフトで駆動し、空気は1段目のコンプレッサーを通り、インタークーラーで冷却され、2段目で再圧縮される」という構造を考案。

その結果、シミュレーション上では約598馬力を発生させることがこうになるといいますが、ポルシェ・カイエン・ターボS E-ハイブリッドに積まれる4.0リッターV8エンジンは、548馬力を発生させるので、こちらに比較すると「より効率的」ということに。※カイエン・ターボS E-ハイブリッドの総出力はエレクトリックモーターも加えると680馬力

さらにポルシェの研究チームは、この水素エンジンが車両にどのように反映されるかを把握するため、水素エンジンを搭載した「デジタルツイン」という模擬車両を使ってニュルブルクリンクをどれだけ速く走れるかを試算することになりますが、その結果8分20秒で名物コースを周回することが可能となり、これは2008年型シボレー・カマロSSのラップタイムとまったく同じ。

その排ガスは「大気と同じレベル」

ポルシェによると、この水素エンジンから排出される排気ガス内には、フォルクスワーゲン・グループが以前から対応に苦慮してきた窒素酸化物が含まれているとはいえ、大気と同じレベルでクリーンであり、CO2排出量もゼロ。※窒素酸化物の濃度はユーロ7規制まで下げることができている

ポルシェはさらに、水素エンジンの生産コストはガソリンエンジンの生産コストと同じくらいだと主張しているものの、現実的にこれが生産されるかどうかは今のところ不明です。

ただしポルシェは「この研究によって、高性能水素エンジンの開発に関する貴重なデータを得ることができ、私たちの仮想シミュレーション手法に水素専用のモデルや手法を加えることができました。このノウハウにより、将来のプロジェクトへと効率的に対応する準備が整ったのです」とコメント。

現在「水素」はひとつの可能性としていくつかの自動車メーカーが研究を行っており、しかしインフラ整備の観点から普及させるのが非常に難しいという問題も指摘されています。

それでも自動車メーカーとしては、流動的な現在の状況、そして環境規制を考慮するに、可能性の一つとして「準備しておかないわけにはゆかない」というところなのでしょうね（そして研究内容は別のプロジェクトにも共有されると思うので、ムダにはならないと推測）。

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