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フェラーリが「知られざるヒーロー」と呼ぶ250LM。1965年のル・マンにて並み居るプロトタイプレーシングカーを退け、1-2フィニッシュを達成したその背景とは

フェラーリが「知られざるヒーロー」と呼ぶ250LM。1965年のル・マンにて並み居るプロトタイプレーシングカーを退け、1-2フィニッシュを達成したその背景とは

| フェラーリ250LMは「地味すぎる」存在ではあったが、296GTBの登場、499Pによるル・マン制覇にて注目が集まっている |

250LMはフェラーリ初のリヤミッドシップレイアウトを持つV12エンジンクーペである

さて、フェラーリが「ル・マン24時間レースにて(今年の499Pを除くと)最後の勝利を果たした250LM」に関するコンテンツを公開。

この250LMは250GTOの後継モデルとして誕生しており、フロントからリアミッドへとエンジンを移したこと(フェラーリ初のリヤミッドシップV12エンジン搭載クーペでもある)、そして296GTBのデザイン的インスピレーション元となったことが最大のトピックかと思われます。

Ferrari-250LM (8)

フェラーリ250LMは不運に見舞われたクルマだった

上述の通り、フェラーリ250LMは250GTOの後継モデルという位置づけですが、まず250GTOは国際マニファクチャラーズ選手権の「GTクラス」に参戦するために開発されたクルマであり、ベースとなるのは250GT SWB。

しかしこのGTクラスに参戦するには「100台以上の市販車を生産していなくてはならない」という規定があり、フェラーリはこの250GTOにつき、36台しか生産していなかったためにホモロゲーションを取得できず、しかしすでに100台以上を製造していた250GT SWBの「エボリューションモデル」ということでFIAを説得することに成功し、結果として1962年、1963年、1964年の3年間にわたりGT国際マニュファクチャラーズ選手権での勝利を獲得しています。

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Ferrari-250LM (5)

そしてこの「大いなる成功」を収めた250GTOの後継モデルとして計画されたのが250LMなのですが、フェラーリは250GTOを「250GT SWBのエボリューションモデル」であると認めさせた時と同じく、「250LMもまた250GT SWBのエボリューションモデルである」と主張するものの、さすがにエンジンレイアウトが変わってしまったということもあってかFIAはこれを否認し、よって250LMはGT国際マニュファクチャラーズ選手権参戦への道を絶たれることに(正確に言えば、参戦は可能ではあったものの、GTクラスではなくプロトタイプクラスで戦う必要があり、最初からレーシングカーとして設計された車両で競うこのクラスでは当然ながら戦闘力を発揮できないことが明白であった)。

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かくしてフェラーリ250LMはその舞台をル・マンへ

このFIAの対応に激怒したのがエンツォ・フェラーリで、よってGT国際マニュファクチャラーズ選手権から撤退をほのめかすとともに「プロトタイプクラスでは勝ち目がない」ために250LMでのGT選手権への参戦を諦め、生産した250LMはノース・アメリカン・レーシングチーム(NART)、フェラーリ・コンセッショネアーズ(英国)、エキュリー・フィリピネッティ(スイス)、エキュリー・フランコルシャン(ベルギー)といったフェラーリと関係性の深いプライベーターへと販売されることに。

Ferrari-250LM (7)

そしてこのフェラーリ250LMのハイライトとなったのが1965年のル・マン24時間レースなのですが、この年のル・マンは映画「フォード vs フェラーリ」でも取り上げられた通り、打倒フェラーリを掲げる11台のフォードがフェラーリ陣営へと挑みます。

この11台は7リッターエンジンを積むGT40、速さには欠けるものの信頼性の高い4.7リッターエンジンを搭載するGT40など6台のGT40、そしてコブラ5台にて構成され、ドライバーにはフェラーリにてワールドチャンピオンを獲得したフィル・フィルを起用するなど、とにかく「豊富な資金にものを言わせたラインアップ」。

Ferrari-250LM (4)

対するフェラーリは(ファクトリーチームである)スクーデリア・フェラーリから新型の330P2、そしてプライベートチームから出走する250LMや330P1、275GTB含む合計11台。

その中でとくに目覚ましい活躍を見せたのがルイジ・キネッティ率いるNARTから参戦したマステン・グレゴリー/ヨッヘン・リント組による250LMです。

もちろんプロトタイプ勢に比べて戦闘力は高くなく、よって予選でも11位とふるわなかったものの、7時間経過後にはすべてのフォードGTがエンジンとトランスミッションのトラブルによってリタイヤし(この時点では11台のフェラーリすべてが生き残っている)、フェラーリ330P2も新型ブレーキにトラブルが生じて順位を下げることに。

Ferrari-250LM (2)

そこで順位を上げたのがNARTから参戦したこのフェラーリ250LM(21号車)、フランスのプライベーターが走らせる250LM、そしてベルギーのプライベーターより出走した275GTB。

これらはパワーでは劣るものの、そのぶん信頼性が高く、かつ燃料消費量が少なかったためにコンスタントに走りきり、なんとプロトタイプを抑えてフェラーリによる1-2-3フィニッシュを達成することに(6位にもスクーデリア・フィリピネッティの250LMが入賞している)。

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つまりは「プロトタイプ」というル・マン24時間レースの主役ではなく、「影に隠れた」存在であったGTカーによって表彰台が占められるという異例の事態となったのがこの1965年のル・マン24時間ということになりますが、まさに「耐久レースでは何がいちばん重要なのか」を思い知らされる結果となっています。※その58年後、2023年にはフェラーリが499Pをもってル・マンに(50年ぶりに)復帰し、58年ぶり10回目の勝利をマラネロにもたらしている

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なお、250LMは1964年のランス12時間レース、1964年のキャラミ9時間レースでも優勝を飾っており、高い耐久性を持っていたことわかります(生産は合計で32台)。

そして上述の通り、このフェラーリ250LMは296GTBへと強い影響を与えていて、とくにリアのトンネルバック、そしてフェンダーの盛り上がりにそれを見て取ることができるようですね。

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参照:Ferrari

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