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公式には存在しないはずのフェラーリ512TR「スパイダー」が競売に。1994年に3台のみがフェラーリによって製造され、今まで隠し持っていたオーナーがついに出品

公式には存在しないはずのフェラーリ512TR「スパイダー」が競売に。1994年に3台のみがフェラーリによって製造され、今まで隠し持っていたオーナーがついに出品

| その希少さから予想落札価格は最高で4億5000万円、しかしもっと高く落とされる可能性もありそうだ |

まだまだフェラーリには「知られていないモデル」が存在するのかも

さて、ある意味でフェラーリの象徴、そしてスーパーカーの象徴とも言えるのが1984年に発売されたテスタロッサ。

その後の1990年には「512TR」が発売されることになりますが、「5」はエンジン容積のリットル単位、「12」はシリンダー数、「TR」はテスタロッサを表しています。

なお、公式にはテスタロッサ、512TRとも「オープンモデルは生産されていない」と言われているものの、フェラーリが当時の宗主であるフィアットの総帥、ジャンニ・アニエッリのためにテスタロッサ・スパイダーを1台のみ生産し、そのほか非公式の改造車が1台、ピニンファリーナによるコーチビルド車両が7台以上存在することも判明しています。

世界に2台しか存在しないと思われたフェラーリ・テスタロッサ・スパイダー。なんと今回ほかに7台、さらには数台存在することが判明し、うち1台が競売に
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フェラーリ512TRも「オープン」は存在しないはずだったが

そして今回RMサザビーズの主催するオークションに登場したのがフェラーリ512TRのオープンモデル、「512TRスパイダー」。

改造車と思いきや、これはフェラーリが1994年に3台のみ正式に製造したクルマだそうで、まさかこんなクルマが存在したとは、と驚かされますね。

Ferrari-512-Spider (14)

そこでこのフェラーリ512TRスパイダーの歴史を紐解いてみると、発端としては1990年、シンガポールのフェラーリ正規ディーラーであるホン・セー・モーターズのアルフレッド・タン氏がピニンファリーナに対し、ブルネイ王室へと納入するために数台の「特別生産」テスタロッサ・スパイダーを製造したこと。

その後の1994年にはフェラーリ自身も3台のみ512TRスパイダーを製造し、2台をアルフレッド・タン氏に収め、そのうち1台をフランスの会社経営者に納車することとなりますが、この経緯を見ると、1990年に作られたピニンファリーナ版(台数は不明)、1994年に製造されたフェラーリ版(3台)の512TRスパイダーが存在するものと思われます。

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なお、アルフレッド・タン氏はフェラーリとも強いつながりを持っていたというので、同氏の働きかけによってこの512TRスパイダーが実現したと考えて良さそうですが、同氏はこの512TRスパイダーをずっと空調管理された倉庫にて保管し続け、現在の走行距離はわずか570kmにとどまります(デリバリーマイルのみで、実際にはほぼ走行していないと考えていい)。

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この個体(シャシーナンバー97310)のボディカラーはブルーコバルト、インテリアはブルースクーロという「ブルー・オン・ブルー」で、このボディカラーを持つ512TRは1台しか製造されていない、とのこと。

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参考までに、アルフレッド・タン氏は1997年のフェラーリ50周年記念式典にフェラーリから招待を受け、この512TRスパイダーを祝賀イベントにて披露しており、その際には自身がこのクルマを運転し、その横にはフェラーリのF1ドライバー、ニコラ・ラリーニが同乗したという記録も残されているため、同氏はVIP中のVIPであったことがわかりますね。

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このフェラーリ512TRスパイダーにつき、これまで売りに出された過去はなく、今回はじめてアルフレッド・タン氏のコレクションから出されることでその存在が知られるようになったわけですが、その希少性の高さから予想落札価格は最高で270万ポンド(現在の為替レートにて約4億5000万円)だというエスティメイトが出されています。

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ただ、ほかの2台が流通する可能性は極めて低いといい、よって今回の出品は「フェラーリ512TRスパイダーを手に入れる唯一の機会」となりそうですね。

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なお、インテリアカラー「ブルースクーロ」についても、当時この512TRスパイダー専用に染色されたものだといい、いっそう価値を高める要素となっています。

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フェラーリ512TRはこんなクルマ

そこでフェラーリ512TRについて少し振り返ってみると、これはテスタロッサのアップデート版。

ノーズが1989年に発売されたフェラーリ348に近いスタイルへと変更され、グリル中央にはカヴァリーノ ランパンテが取り付けられています。

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リアでは、エンジンリッドに新しいルーバーデザインが採用され、新デザインの18インチアルミホイールはフェラーリの5本スポークを現代風にアレンジしたもので、直径は16インチから18インチへと大きくアップ(4ピストンブレーキキャリパーとベンチレーテッド ・クロスドリル・ブレーキディスクを収めるためという意味が大きい)。

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重心とロール軸を下げるためにもいくつか変更が行われ、エンジンとギアボックス搭載位置が30ミリ低くなっているほか、サスペンションはテスタロッサと同様のままではあるものの、より大きなホイールに対応するように調整され、さらには前後重量配分も41:59に改善されています。

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そして「アップデート版」ということで当然ながらエンジンも改良を受けており、 排気量は4,943ccのままではありますが、このTipo113エンジンは「G」バージョンへと進化していて、圧縮比が9.3:1から10:1へと高められるという変更も。※ヘッドカバーのレッド塗装が「テスタロッサ=赤い頭」の由来である

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そのほか、シリンダーヘッドのポーティングが見直され、再設計されたインテークプレナムとともに大型のバルブが取り付けられ、さらには新しいボッシュ製モトロニック M2.7システムと組み合わされた結果(テスタロッサ比で)38馬力の出力アップを達成しています。

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5速マニュアルギアボックスという装備、最高速度300km/hという数字は変わらないものの、0-100km/h加速は4.8秒にまで短縮されてパフォーマンスが大きく向上し、「中身は大きく進化している」と判断して良さそうですね。

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キャビン内では、快適性の向上と人間工学に重点を置いた再設計が行われ、シートもやはりフェラーリ348に近いプリーツレザーが採用されるなど近代化が図られており、様々な意味でフェラーリの変遷そして時代の移り変わりを全身で表現するクルマだといえるかもしれません。

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参照:RM Sotherby's

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