ポルシェは一般的な自動車メーカーとは対象とする速度域が異なります。
これは、「ポルシェ車には、リミッターが設けられていない」ことからも明らかですね。
日本の場合、おおよその車は時速180キロでリミッターが作動します。
なぜ制限速度が時速100キロなのに180キロまで出るのかという疑問もありますが、日産自動車によると、「日本の高速道路の最大勾配6%を時速 100キロで走るには、平地で時速180キロ出せる能力が必要」とのことですので、これはこれで納得ですね。
話を戻すと、おおかたのメーカーはスピードリミッターがあり、国産では時速180キロ、欧州では時速250キロ程度のリミッターが一般的なようで す。
これが意味するところは、「それ以上のスピードで走行すると車に支障が出るか、でなくてもコントロールできなくなって非常に危険」である、という ことかと考えます。つまりメーカーの責任が取れる範囲、ということですね(GT-R等ハイパフォーマンスカーはまったく別の、法的配慮などの理 由)。
ですが、ポルシェの場合はリミッターなし。出せるだけ出してOKです。
ドライバーの「自己責任で」、と責任をドライバーに転嫁しているという意見もあるようですが、ぼくにはそうは思えないのですね。
なぜならば、ポルシェの主な販売先である北米は製品の製造責任に非常に厳しく、日本では笑い話になるような訴訟が現実に行われているわけです(最 近は少し事情が異なるようですが)。
そのようなところで「自己責任」などという、製造者責任逃れのような言い分は通用するはずもなく、したがってこれは「どんな速度域でも、出せる範 囲においては、ポルシェは責任を持ちますよ」ということではないか、と考えるのです。
そんなわけで、ポルシェは非常に高い速度域でもコントロールできることを考えて作られているわけですね。
そしてもちろん、その速度域を日常的に出すような人も想定に入れていると考えられます(耐久性の観点から)。
となると、時速180キロまででOK、と考えるメーカーと、ポルシェとの沓間の作りは必然的に変わってきます。
欧州車を例に取ると、ポルシェよりもパワーのある車はたくさんあります。
たとえばポルシェが300馬力出るとして、リミッター無し、時速290キロまで出るとします。
ほかの欧州車も300馬力出るとして、時速250キロがリミッターであった場合。
ほかの欧州車は時速250キロまでに全部つぎ込めば良いので、ギア比も加速重視になるかもしれません。
その場合、「同じ300馬力」でもチョイ乗りしたときの感覚では、ほかの欧州車の方がきっと早く感じると思います。
ですが、ポルシェの場合は「その先」があり、そこが重要なので、やや特殊な車作りであったり、ちょっと乗った感じでは凄さを感じさせない車作りに なっているのだと思います。
ときどき、国産車から欧州のスポーツカーへ移行してくる人が、様々な欧州スポーツカーを試乗した時、「ポルシェは想像していたほど速くない」と感 じたりすることがあるようで、その件についてよく相談を受けることがあります。
ポルシェは高いし思ったほど速くない。どこがいいのか?ということですね。
多くのメーカーにおいては、「スポーティーな味付け」というのを重視していて、ちょいとアクセルを踏むとぐっと出る加速や、勇ましいエキゾースト ノートを「演出」として車に与えていて、街乗りの速度域や高速道路の試乗においては、「ポルシェよりも速く、ポルシェよりもスポーティー」に感じ る、ということはぼくも経験上理解が出来ます(そういった声が大きくなってきたからこそ、987/997後期のエキゾーストノートは大きく太く なったのだと思う)。
そして、やたらクイックなハンドリングや不要とも思えるほど硬いサスペンションで「スポーツ」を演出していることもあり、その場合はちょっとだけ乗ってみると「おっ」とか感じたりしますよね。
ですが、先日記載したように、ポルシェの場合は自分のお金をはたいて自分のものとして乗らないとわからない部分があり、かつ「他社の設定するリミッター の先の速度で”走れる”(その速度で走れる、ということとその速度が出る、ということは別。走れる、ということはコントロールできるという意味を 含む。300キロ出る、というのと300キロで走れる、というのは別ということです)」わけで、何よりも「リミッターの設定がない」、ということ が何よりも「ポルシェである」ことを表しているんじゃないか、と思うのですね。
ちょっと乗っただけでも「わかりやすく」演出を行っているメーカーもあれば、ポルシェのようにそれを「不要」と考えている(と思う)メーカーもあるわけです。
ポルシェの場合、演出しなくとも実際に走り、ポルシェの想定する領域に踏み込めば、「おのずと」その性質は明らかになるわけで、だから演出は不要、とも言えます。
ただし現代では、車としての敷居が下がった反面、今までポルシェに乗ろうと思わなかった層(ぼくも同じ。水冷になってから興味を示したので)もポルシェに 興味を示すようになっており、そういった人たちには「わかりやすい」何かも必要であり、そこがポルシェにとって悩ましいところではないか、とも考えるので す。
カイエンがデビューした時、トゥアレグと基本構造を共有したことが話題になりましたが、ポルシェとしては「対象速度域が異なる(具体的に数値を上 げていたと思う)」のでトゥアレグとは別物で、モノコックの溶接もどう違う、といったことをアピールしていたように思います。
また、ブガッティがヴェイロンを発表した時も、「時速400キロ以上で走行し”続ける”」とどうなるか、ということを公開していて、高速で回転す る部分が膨張したりグリースが飛び散ったりといった、”時速300キロでは想像できないような問題”が多数あったということでした。
長くなりましたが、ぼくが言いたかったのは、より高速になれば低速で走るのに比べて多くの問題が出ますし、低速では問題にならないようなこと(部 品や組み立て精度、バランスなど)も高速では大問題になり、しかしポルシェは速度リミッターを設けていないメーカーである、ということですね。
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