| まさかBMWがアルピナに価値を見出すとは思わなかったが |
2020年に開始した提携が「有益」だったのだと思われる
さて、BMWがアルピナを買収したとの電撃報道。
アルピナはBMWのチューニングパーツやドレスアップパーツを製造販売する”チューナー”でもありますが、同時に車体製造許可を得た”自動車メーカー”でもあり、このあたりはルーフ(RUF)とよく似ているかもしれません。
ちなみに自動車メーカーがチューナーなどを傘下に収めた、もしくはそれに近い例としては「メルセデス・ベンツとAMG」「ポルシェとマンタイ・レーシング」「マツダとマツダスピード」「ベントレーとマリナー」などが挙げられます。
アルピナはもともと「一人の男がチューンしたBMW」から始まった
アルピナはもともと事務機器メーカーとしてスタートしていますが、二代目のブルクハルト・ボヴェンシーペンがモータースポーツに参加するために自身のBMWをチューンし、そのクオリティがBMWに認められて「BMW公認チューナー」としての地位を獲得したことから(現在のアルピナの)歴史が始まります。
その後1965年に設立されたアルピナ・ブルクハルト・ボヴェンシーペン合資会社が現在のアルピナの原型となり、その後1983年には正式にドイツ自動車登録局から「自動車メーカー」としての免許を付与され、ここから自社名義でのクルマの製造を本格的に開始。
そしてこの「自社のクルマ」とはすなわちBMWの車体をベースにしたクルマを意味しており、BMWから未塗装の車体、そして必要なパーツの供給を受け、そこに自社の開発したパーツを組み込んで「完成車」とするという流れを取っているわけですが、とことん品質にこだわるために価格は相当に高くなり、BMWの「M」モデルかそれ以上といったプライスゾーンを持つことも特筆すべき点かもしれません。
近年のBMWとアルピナは「ワンセット」だった
そこで気になるのが「BMWとどこが違うの?」「BMWのMじゃなくてアルピナを買う理由はあるの?」という点。
これについては様々な解釈があるかと思いますが、ぼくとしては「アルピナは、BMWにはない快適性と高品質な仕上げを持っており、Mモデルにはない選択肢がある」と認識しています。※技術的にBMWができないというわけではなく、量産車メーカーとしてコストや品質管理上踏み込めない領域にアルピナが生息している
快適性や品質については、「アルピナのクルマはほぼ手作り」なのでクラフトマンシップが反映されるということになり、後者に関しては「M5同等のスペックを持つ5シリーズのワゴン」であったり「Mモデル並みのスペックを持つディーゼルモデル」、そして「Mモデル並みの出力を持つが、サーキット志向よりもグランドツーリング志向の性格を持つクルマ」など、Mモデルにはないラインアップを揃えていて、「通常のBMWには満足できない」「いざとなればスーパーカーと張り合えるパフォーマンスが欲しいが、Mモデルの足回りは硬いし、見た目も派手すぎる」「BMW Mモデルは燃費がイマイチ」とと考える人々にとっての”選択肢”となっているわけですね(サーキットでのラップタイムはMモデルのほうが速く、最高速はアルピナのほうが高いという傾向がある)。
この傾向は、BMWとアルピナがパートナーシップ契約を結んだ2020年から顕著になっていて、BMWがニューモデルを発表するとほぼ同時にアルピナも新型車を発表したり、Mモデルを補完する形でアルピナからは「ディーゼル」「ボディ形状違い」といったクルマが発売されたりといった事実からも両者の関係性を見て取ることができ、つまりBMWは「自社では採算ベースに乗らないが、少なからず市場にある需要」を、少量生産者であるため、数少ない生産であっても利益を出せるという構造を持つアルピナを活用して満たし、「BMWとアルピナというワンセットで」メルセデスAMGに対抗していたと言えるかもしれません。
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今後アルピナとBMWはどこへ向かう?
そして今回BMWがアルピナを買収し傘下に収めたということになり、発表によると、現在のパートナーシップ契約が終了する2025年12月31日以降、全権がBMWへと移行するとのこと。
現在アルピナはドイツのブッフロエ工場にて生産がなされており、当面は販売、部品およびアクセサリー事業を継続するものの、今後自動車生産部門はBMWのいずれかの工場に移管されるもよう(現在でも、BMWはすでに自社でアルピナの部品組に立てを行っており、そこからアルピナはブッフロエ工場で最終組立を行っている)。
参考までに、BMWは「ジョン・クーパー・ワークス」を傘下に収めており、これはもちろんミニのハイパフォーマンスブランドとして機能していますが、アルピナもまた「BMWの高級ブランド(もしくはパーソナリゼーション部門)」として機能し、それによって「M」はさらにスポーツ方面へと特化することになるのかもしれません。※BMWは、アルピナの技術が欲しくてアルピナを買収したわけではなく、そのブランドとしてのポジションやコーチビルダー的構造を”買った”のだと思われる
アルピナの共同経営者、アンドレアス・ボヴェンシーペン氏は今回の買収について「我々は自動車業界が直面している課題を早くから認識し、アルピナと我々のファミリー企業であるボヴェンシーペンのために正しい道を選びました」とコメント。
BMWからは正式なコメントが出されていないものの、追ってなんらかのアナウンスがあるものと思われます。
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参照:ALPINA