
| ここまで高額なクルマ、そしてパワフルなクルマを運転する機会はそうそうあるものではない |
そんな緊張感、恐ろしさも吹き飛んでしまうほどのフレンドリーさ、そして楽しさを持っている
さて、新型アストンマーティン・ヴァンキッシュ試乗記、今回は「後編」。
前回はエクステリアを中心にその印象を述べてみましたが、今回はまずインテリアに関するレビューから。
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アストンマーティンの量産車史上”最強”、835馬力を誇る新型ヴァンキッシュに試乗してきた。いやはやスゴい迫力だなこのクルマは【動画】
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新型アストンマーティン ヴァンキッシュはこんな内装を持っている
まずヴァンキッシュのドアハンドルは近年のアストンマーティンの伝統に則り「フラッシュマウント」。
そしてドアは「ちょっとだけ上の方に開く」スワンスイング、そして一般的なクルマのように「2〜3段階のラッチ」ではなく、「どの位置でもドアが止まる」構造を持っています。
内装の張り材は上質なレザー、そしてアルカンターラ。
レーシーさと上質さ、高級感が非常に高いレベルにてバランスしている、という印象ですね。
なおエアコン吹き出し口や各種スイッチはヴァンテージと共通ですが、スイッチについてはヴァンテージよりも「高級感がある」仕上げがなされているもよう。
サイドシルにはマシニング&サンドブラスト加工が施されたアルミ板、そして「VANQUISH」、そしてハンドビルトであることが刻まれたインレイも。
一部には「ボルト」が露出しており、これはもちろん意図的な演出なのだと思われます。
ステアリングホイールは最新世代の形状を持ち・・・。
スイッチやコマンダー類に・・・。
エアコン吹き出し口も同様です。
シート表皮のステッチも新パターン。
頭上には広大な「パノラマルーフ」。
リアシートはなく(2シーター)・・・。
代わりにトレー、そして小物を置くスペースが用意されています。
実際に新型アストンマーティン・ヴァンキッシュに乗ってみた
そこでここからは実際に新型アストンマーティン・ヴァンキッシュを試乗してみた印象です。
エンジンのスタートはこのプッシュボタンを押して行いますが、ここで驚かされるのは振動がほぼ完璧に抑えられていること、そしてV12の咆哮が「意外に」小さいこと。
アストンマーティンのV12エンジンといえば「ライオンが吠えるかのような」轟音が特徴的であったものの、この新型ヴァンテージではずいぶん音量がマイルドになっていて、それはやはり「欧州の騒音規制」に対応したためなのかもしれません。
その後は「835馬力、車両本体価格4999万円(オプション込みだと乗り出し7000万円くらいかも)」、さらには年間生産が1,000台以下に限定されるというその特性と希少性を意識しつつ「絶対になにかがあってはならぬ」と肝に命じながらクルマをスタートさせますが、実際に走り出してみるとそういった不安も消し飛ぶほどのフレンドリーさをもっていて、その最大の理由は「有り余るパワー」を感じさせないセッティングかと思います。
もちろん、一旦踏み込めば「5.2リッターV12ツインターボエンジンが発生する835馬力を後輪のみで処理している」ことが実感できる動きを示すことになるのだと思われますが、もちろん公道での試乗なのでそんなことはできず(何度も思いっきり踏み込みたい衝動に駆られたものの)、あくまでも法定速度内での印象です。
さらにはクリープが発生することもそのイージーさに寄与しているように思われ、同じZF製の8速ATを搭載するBMW Mモデル同様、ブレーキを強く踏んだ状態での停止からチョンと踏めば走り出す(軽くブレーキを踏んで停止した状態からだとアクセルを踏まずとも動き出すようだ)といった感じです。※ただしクリープで動く速度は意外に速く、ここはV12エンジンのトルクを感じさせるところである
さらには非常に視界が良く、長いステーによって横方向に伸びたドアミラーによって容易に後方を確認でき(ほぼこれだけで広報の確認ができる)、かつBピラーが非常に細い(というかBピラーというものが存在せず、Bピラーのように見えるフレームがウインドウを保持するために設けられているようにも見える)ためにグラスエリアが広いので、目視による周囲の確認も不安なく行えます。※ダッシュボードも低く、前方も確認しやすい
ホイールベースは2,850ミリとかなり長く、全長は4,850ミリというクルマですが、ある意味ではフェラーリ ローマよりもその長さを意識せずに扱うことができ、その数字以上よりもはるかに車体がコンパクトであるように感じます。
ドライブモードは「GT」「SPORT」「SPORT+」の三種類を備え、「GT」ではまさに快適そのもの、そして一般道での凸凹、高速道路での継ぎ目を超える際のショックを全く感じさせず、「どっしりとした重厚な」乗り味です(このあたり、ヴァンテージの”軽快さ”とは味付けを大きく変えていて、モデルごとのキャラクターが明確になっている)。
さらにGTモードだと時速80キロでもエンジン回転数は1,000RPMくらいにとどまり、これはおそらく排ガス規制を考慮したためだと思われますが、この「低回転」もあって車内は非常に静か。
ピレリのノイズキャンセリングシステム(PNCS)を搭載するということもあってロードノイズも非常に小さく、車内だと「通常のトーンで」会話ができるほどですが、これは歴代のアストンV12モデルからすると「驚き」かもしれません。
さらに驚かされるのは「ブレーキング、加速、コーナリング時」の姿勢変化がほぼゼロに抑えられているとうことで、実際に撮影した動画を見ても停止時の「前後」、カーブを(交差点でも高速道路でも)曲がる際の「横方向」の揺れがまったくないことがわかります。
参考までに、ビルシュタイン製のDTXダンパーを核としたアダプティブダンピングシステム (ADS)を備え、サスペンション形式はフロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク、ホイールサイズは前後21インチ、タイヤはフロントが275/35/ZR21、リアが325/30/ZR21。
こういった要素が折り重なって「安心感」を与えるのが新型ヴァンキッシュということになりますが、ちょっと走っただけでも「自分の手足のように」感じられるように思われ、ここまで”しっくり”来るスポーツカーはそうそうないかもしれません。
この時点ではもう「不安」は消し飛んでしまい、このクルマの「楽しさ」しか感じない状況になっているのですが、そうなると試したくなるのが「ドライブモードの変更」。
試乗前には「ここまでハイパワー、かつ後輪駆動で大きく重い(1,910kgもある)クルマであれば慎重に運転せざるを得ず、よって公道試乗ではドライブモードを変更する機会はないであろう」と考えていたものの、試乗中にはあっさりその考えが変わってしまい、新型ヴァンキッシュの可能性を探ってみたくなったわけですね。
そこでまずは「SPORT」へと変更(センターコンソールのダイヤルを回して行う。ただしこの操作感はけっこう重く、それはまるでクルマがその覚悟を「ドライバーに”本当にいいんだな?”と問うて」いるかのようで、明確な意思をもってしっかり回さねばならない)するのですが、ここではメーター表示(カラーテーマ)が変わって視覚的に変更をアピールするとともに、足回りが引き締まり、スロットルレスポンスとエンジンマネジメントが変更されて「よりシフトチェンジのタイミングを上の回転数に」引き上げるとともにエキゾーストサウンドが大きく変わります。
このモードだと「重厚」よりも「軽快」という印象に変化しますが、けっこうエンジンブレーキを強く感じる場面もあり、何から何までもが「ダイレクト」そして強く「内燃機関」を感じさせるキャラクターへと変化することに。
なお、この上の「SPORT+」ではいっそうその獰猛さが強調されるものの、この真価を知るにはサーキットへと持ち込む必要があるのかも。
そのほか試乗にて感じたのは「ギア比がオープン」ということで、これはフェラーリ 12チリンドリよりも0−100km/h加速が0.3秒遅く、しかし最高速が5km/h高いことからも見て取ることができ、とにかく通常走行時のエンジン回転数が低く抑えられていて、これがGTカーという印象をいっそう強めています。
そしてその回転数の低さは「即時性」にも影響しているようで、そのためドライブモードをデフォルトの「GT」のままクルージングしている際に車線変更を行おうと「急加速」を試みても思い通りの加速を示さないことがあり(その回転数ではおそらく加給がうまくかからないものと推測)、よって意のままに操ろうとすると「SPORT」に入れて走ったほうがいいのかもしれません。
おそらく、このあたりは同じV12でも「自然吸気」エンジンを積むフェラーリ 12チリンドリとは性格が大きく異なるのだとは思われますが、このヴァンキッシュはよく12チリンドリと比較されるものの、実は全く違うクルマなのでは、と考えています(アストンマーティン自身もいまでは自社特有の強みを理解しており、それを伸ばす方向性を採用したブランディングを行っているので、直接競合するクルマではなく、実際にキャラクターも客層も異なるものと思われる)。
実際のところ、このヴァンキッシュが持つ世界観、そして精緻極まりないディティールはアストンマーティン以外「持ち得ない」ものであり、他のメーカーが一朝一夕に真似できるものではなく、そしてほかライバルの多くは「モータースポーツ」をバックボーンに持つため、ある意味では「高級感」という要素は畑違い。
しかしそこはアストンマーティンが本領を発揮できる分野でもあり、これこそがアストンマーティンを選ぶ意味なのかもしれません。
新型アストンマーティン ヴァンキッシュに試乗してきた際の動画はこちら
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