| クーペ・フィアットは今見ても十分にカッコイイ |
さて、一部では「伝説の」クルマとなりつつあるクーペ・フィアット。
1994年から2000年まで生産されていたスポーツクーペですが、その人気の理由は「スタイリング」。
前後フェンダーに反復される尻上がりのライン、そしてダブルバブル形状を持つヘッドライトカバー、ドアスキンにインテグレートされたドアハンドルなど、隅々まで隙のない、そしてこだわりぬいたデザインを持っています。
クーペ・フィアットのデザインは若き日のクリス・バングル
そしてこの特徴的なデザインを行なったのはフィアットに在籍していたクリス・バングル。
同氏はのちにBMWに移籍し、そこでZ9(コンセプトカー)やZ4など次々と個性的なデザイン手法を見せ、中でも「バングル・アス」と呼ばれるリアフェンダーとトランクリッドとの位置関係における新しいデザインを行なっています。
なお、このバングル・アスについては「自動車デザイン史上最大の発明」だとぼくは考えていて、その後多くの自動車メーカーが競って取り入れることに。
通常、セダンの場合はトランク容量を増やしたり、スポーティーに見せるためにリアにかけてのベルトラインを上げてゆきますが、そうなるとリアフェンダーの天地が分厚くなってしまい、それによって腰高感が出たり、タイヤ(ホイールハウス)とのバランスが悪くなったりするわけですね。
しかしながら、バングル・アスだと、ボディを薄く見せて相対的にタイヤを大きく見せ、しかもウエッジシェイプにしてスポーティー、かつトランク容量も確保できるというソリューションを提供しています。
これは当時そうとうなな衝撃であり、BMWはセダンだけではなく、6シリーズなどクーペにもこれを採用することになり、いかに優れたデザインであったかがわかります。
そんなクリス・バングルがフィアット在籍時にデザインしたのがクーペ・フィアットということになりますが、このクーペ・フィアット開発時、フィアットはピニンファリーナとフィアットのデザインスタジオとの間でコンペを開催。
そしてピニンファリーナに競り勝ち、見事採用となったのが「クリス・バングル案」だったということですね(インテリアについてはピニンファリーナ案が採用されている)。
そんなクーペフィアットですが、数々のカスタム/チューニングパーツが発売されていることでわかるとおり、当時はかなり人気があって(72,000台が売れたらしい)、ちょっと車高を落としてホイールを大きめのサイズへ交換してツライチにし、下回りのエアロを装着すればかなりカッコいいクルマに。
時々そういったカスタムを行なったクーペフィアットを見かけることがありますが、今見ても古臭さを全く感じさせない、とも思います。
「新型」クーペフィアットのデザインを見てみよう
そしてこちらが、今回デザイナーのガスパール・コンティチェリ氏によって作成された「新型クーペフィアット」のレンダリング。
ヘッドライトの「ダブルバブル」は健在で、さらにはライティングによってそれを際立たせているようにも感じます。
fウロントグリルのデザインも初代クーペフィアットを踏襲し、サイドの特徴的なラインも再現されていますね。
リアもまた初代同様のテールランプを持ちますが、リアディフューザーが追加されて近代的な印象に。
こちらはグリーン、ホワイト、レッドのイタリアントリコローレ。
なお、イタリア車はけっこう単純な名称が多く、「クーペフィアット」だと「フィアットのクーペ」。
そのほかあ、マセラティ「クワトロポルテ」は「クワトロ=4」「ポルテ=ドア」、つまり「マセラティの4ドア」。
意味がわかるとこんな安直なネーミングはほかにないという感じですが、なぜかイタリア語にすると格好良く感じられますね。
アルファロメオ「アルファロメオ・ティーポ33ストラダーレ」の現代版も
そしてこちらは同じデザイナーが公開した「33オマージュ」。
言わずと知れたアルファロメオ・ティーポ33ストラダーレの現代版であり、ティーポ33ストラダーレはレーシングカーである「ティーポ33」の公道(ストラダーレ)バージョン。
「ティーポ33/2」は1967年に登場し、2000cc(2500cc版もある)のV8エンジンを搭載し、出力は270-315馬力、車体重量はわずか580キロ、とされています。
そしてティーポ33ストラダーレもまた2000cc/V8エンジンを持ち、しかし出力はデチューンされて230馬力、トランスミッションは6速MT。
しかしレブリミット1万回転という市販車ばなれしたエンジン特性を持ち、0-100キロ加速は5.5秒、最高速度は時速260キロという、現代の基準から見ても一級の性能をもつ車に仕上がっています。
ボディワークはカロッツェアリア・マラッツィで18台のみが製造された、という記録が残っていますね。