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【試乗:ポルシェ・パナメーラ・ターボ】「サルーン界のメートル原器」足り得るか?

2017/03/27


ポルシェ・パナメーラ・ターボ(2327万円)に試乗。
550馬力を発生する4リッターV8ガソリンエンジンを搭載し、0-100キロ加速は3.6秒(スポーツクロノ装着時)とランボルギーニ・ガヤルドLP560-4並みの加速を誇り、最高速度は実に時速306キロ、トランスミッションは8速PDK、駆動方式は4WD。

試乗記は長くなるので先に言っておくと、「メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのサルーンを買おうと考えている人はちょっと待った」とアドバイスしたくなる車で、新型パナメーラを乗らずして他メーカーのサルーンを買うという判断を下すべきではない、と断言できます。

新型パナメーラはポルシェがこれまで培ってきた高いシャシー性能に加え、現在考えうる最高レベルの先進性やデザイン性を持つと言ってよく、ポルシェがこれまで「劣る」とされてきたインターフェースに関する高級感や装備の充実度合いについても”一気に巻き返したどころかトップに躍り出た”と言えるレベルを持っており、正直新型パナメーラがこれからのサルーンのスタンダードになるんじゃないか、と思えるほど。

新型パナメーラは全長5049、全幅1937、全高1427ミリという大柄なボディを持つものの、911同様のデザインを持つリアエンドを採用したことで引き締まった印象を受けます。
ルーフは先代に比較して20ミリ低くなっており、フロントタイヤは前方に移動してフロントオーバーハングが短く。
サイズ的な変化は全体的に大きくはありませんが、細かい調整によって「大きな変化」に見せるのはポルシェならでは、と言えます。

試乗はいつものポルシェセンター北大阪さんですが(ありがとうございます)、偶然先代パナメーラも並んでおり、見比べるとフロント、リア共に新型パナメーラの方がぐっとシェイプされ、スマートになったと思います。
特に横から見るとルーフ以降に「相当な差異」があるようですね。

細かい部分を見ても非常に良くできており、前後バンパーの造形、前後ランプの形状や内部構造に至るまで高いデザイン性を持つのも新型パナメーラの特徴。
ポルシェは991/981世代でデザイン性を大きく向上させましたが、991.2/718世代においてそれはさらに進化しており、パナメーラはそれらよりも「進んだ」デザインを持っているとも言えます。
正直、「ポルシェがこんなにオシャレになるとは」という驚きを隠せないという印象ですね。

なお外観以上に変化したのがメカニズムで、3チャンバー・テクノロジーを採用したアダプティブ・エアサスペンション、ポルシェ・トルクベクタリング・プラス(PTV Plus)と電制ステアリングシステムを含むポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール・スポーツ(PDCCスポーツ)など盛りだくさん。

さらには市街地での扱いやすさと旋回性能を向上させるリアアクスル・ステアリングなど、およそ「現在考え得る全て」が盛り込まれていると言って良さそうです。

驚くのは「ポルシェ・イノドライブ」で、これはナビゲーションデータを活用し、車両の前方にある道路状況を解析し、最適な加速度と減速度、ギアを自動でコントロール(おそらく将来的にはコーナリング時の速度もコントロールすると思われる)。

その他メルセデス・ベンツやBMWのサルーンに負けない安全装備、例えばナイトビジョン・アシスタント、レンデパチャー・ウォーニングも装備し、インフォテイメントシステムにおいてはパナメーラから開始される「ポルシェ・カーコネクト」、ポルシェ・アドバンスト・コックピットによる快適な操作性など、こちらも「まさかポルシェがこんなに便利な車になるとは」という驚きも禁じえません。

細かいことはポルシェ・ジャパンのホームページをご覧いただくとして、とりあえず車に乗り込むことに。

ドアハンドルには金属調の加飾が施され、メルセデス・ベンツやBMWのサルーンに負けない高級感がありますね。
室内は現行ポルシェの持つデザインから大きく変わっていますが、思えば現在のマカン、カイエン、ボクスター、911といったラインアップに採用されるデザインは「先代パナメーラ」が採用したのが始まりで、そして今回の新型パナメーラで「新世代」のデザインを採用してきたということは、ポルシェにとって「常にパナメーラが新しい時代を切り開く役目」を持っている、そしてその責任があると考えて良さそうです。

ドアはアストンマーティンのように(何段階かのラッチではなく)「好きなところで止まる」仕様に。
パナメーラは大きな車ですが、これによって乗降性も向上していると言えますね。

シートポジションは低く、これはサルーンというより「スポーツカー」。
センターコンソールやダッシュボードも大きく分厚く、囲まれ感が強いのもその雰囲気を強調。

スイッチ類も一新され、ほとんどが表面が真っ黒いガラスのような光沢のあるパネルで覆われた「タッチ式」に置き換えられています。
中には物理的なタッチが必要なスイッチもありますが、それらも見た目はタッチ式のようなフィニッシュとなり、車両の電源が落ちている時ではそれらのパネルは「真っ黒」。
電源を入れる、もしくはエンジンをスタートさせると透過照明によってそれが何のスイッチかわかるようになる、という感じですね。

この「ガラスパネル風仕上げ」はあちこちに用いられており、面白いのはウインカーレバーなどステアリングコラムから生えるレバーまで平面かつ光沢仕上げとなっていること。
これらによって内装は先進性溢れる印象となり(画像よりも肉眼で見たときのほうがインパクトが大きい)、とにかくスタイリッシュ。

そのほかメーターパネル内のカバーと呼ぶべきかサラウンドのようなものも美しい仕上げを持ち、そしてこれらは機能的には何の意味も持たないのですが、質実剛健で知られるポルシェがこういった部分(見た目しか意味をなさない部分)にまでお金をかけるようになったのか、というのは相当な衝撃。

なおぼくの感じたパナメーラにおけるインテリアのデザイン的雰囲気は「ポルシェデザイン」の家電で、ポルシェデザインの家電というと「平面で、つるんとした」ガラスとアルミで構成された印象がありますが、新型パナメーラの内装各部もまさにそんな感じ、という印象です。

ポルシェというと、「見えない部分(エンジンやサスペンション、シャシーなど)には異常にお金がかかっているけれど、目に見える部分にはお金がほとんどかかっていない」車として有名で、しかし今はこうやって視覚的要素にもこだわり、最大限のコストをかけるようになった、ということですね(特にパナメーラはメルセデス・ベンツSクラスやBMW 7シリーズ等に対抗する必要がある)。

ただしこれはポルシェの存在意義をむしろ強める「いいこと」だとぼくは考えていて、もともと優れた車体を持つポルシェがこういった「デザイン」についてもこだわるようになれば「鬼に金棒」だと考えており、まさに無敵の存在になるんじゃないかと考えているのです。

そのほか内装で気づいた点といえばメーターの変化。
5連メーターはそのままですが、センターのみがアナログに、そしてほかがデジタルに。
ただし液晶は非常に高精細なもので「くっきりと」見えます。
センターのアナログメーターのインデックスは立体かつ別パーツとなり、このインデックス自体が透過光にて光る複雑な仕様(レンジローバー・イヴォークの前期モデルのメーターのような感じ)。
針も機械式腕時計のような、高級さを感じさせる仕様となっていますね。

全体的なスイッチ類、各種操作系、シートベルトを引っ張った時の抵抗力、ペダルの操作感など全てが「マイルド」で、ここはポルシェが「タッチ」という感覚についてまで相当に研究を重ねたんだろうな、ということがわかります。
一方キーはコンベンショナルな「捻って始動」のままですが、これはポルシェのこだわりなのでしょうね。

室内からはほぼ振動や音を感じさせずにエンジンが目覚め、セレクターレバー(形状がSFっぽい)をDレンジに入れてパーキングブレーキをリリースして車をスタート。
とにかく静かで快適というのが第一印象ですが、このレベルはメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのサルーンと比べても「上」(Sクラス、7シリーズ、A8との比較において)かもしれません。

これに近いものだとベントレーあたりとなりますが、ミュルザンヌと比較してもパナメーラの方が安定性に優れ、足回りもしっかりしている、という印象があります。
開発時期も異なり、ブランドの目指すところも異なるので単純比較はできませんが(ベントレーにはパナメーラにない重厚さ、エレガントさがあるものの、ロールとピッチが大きい)、新型パナメーラは今までとはちょっと違う次元に行ってしまった、と感じさせるものがありますね。

もともとボディ剛性がしっかりしているポルシェであり、しかもポルシェは足回りのセッティングにおいても他社の追随を許さないものを持っていますが、それらが新型パナメーラにはいかんなく発揮されている模様。
911、ボクスター/ケイマンはスポーツカーの性能の高さはもちろん、スポーツカーとしては望外に乗り心地が良く、それはメルセデスAMGやBMWのMモデルと比べてもずっと快適だと言えますが、「スポーツカーでも快適な乗り心地」を実現できるポルシェがサルーンにおいても乗り心地を損なうわけはなく、これは他社も自社の製品を再考せねばならない品質かも、というレベル。

加速においては0-100キロ加速3.8秒が示す通り「相当な俊足」ですが、ターボエンジンは低回転時においてややラグがあり、ゆったり流している速度から急加速する場合は2000回転以上にならないと過給が十分にできない模様。

普通に走っていると燃費対策ということもあって回転数はかなり低く(1000回転ちょっと)、しかし最大トルクが発生するのは1950回転なので、この「差」が急加速の場合は「ラグ」として感じられるのでしょうね。
ただ、実際にそんな急加速を試みる場面はほぼないと思われますし、過給が十分かからなくともパワフルなエンジンなのでこれは懸念とは言えなさそうです。

なお排気音はよほど踏み込まないと室内までは入ってこないようになっていますが、外から聞いているとV8っぽい、意外と「ドロドロという」音。
これはポルシェとしてはちょっと意外な演出で、サウンドにおいては高い評価を受けているAMGを意識したのかもしれません(AMGほど大きな音ではないけれど)。

ホイールベースは2950ミリと3メートルに迫ろうという長さですが乗っていて取り回しに困る場面はなく、これはおそらく後輪操舵システム「リアアクスル・ステア」の恩恵が大きそう。
後方からの車両接近はドアミラー内側にて大きな赤いライトで知らせるようになっており、ドライバーズアシストも充実(この辺りポルシェは今まで遅れていましたが、ようやく追いついたと言える)。

ミラーを使用しての後方確認、目視での後方確認ともに良好で、加速、減速、コーナリングとも「意のままに動く」スポーツカー的感覚、そしてサルーンとしても申し分のない乗り心地を持っており、とにかくストレスなく運転できる車だと思います。

スポーツ性と快適性というのは「相反する要素」と考えられることが多いのですが、ポルシェは991/981世代からそれらを両立させることに成功しており、それらの現時点での集大成がこの新型パナメーラと言えるかもしれません。

多くのメーカーが「どちらかに寄せると」どちらかが犠牲になる傾向にあり、それはドライブモードを駆使したとしてもカバーできない部分も。
ですがポルシェの場合、スポーツ性と快適性が「イコール」とも言える次元でバランスしており、これは試乗前にある程度予想していたものの、実際に体験すると驚くべきレベルです。

なお現在ポルシェには911、ボクスター、ケイマン、カイエン、マカンといったラインアップがありますが、ポルシェが独自に設計しているのは「911、ボクスター、ケイマン」と「パナメーラ」のみ。
カイエン、マカンは他ブランドとの共同開発となっており(パナメーラの場合はポルシェが開発したものを他ブランドが使用する)、その点でもパナメーラはポルシェとしても「威信をかけた」モデルとも考えられます。

そう考えると911が「スポーツカーのメートル原器」と言われ、多くのスポーツカーが911を目指すように、サルーンにおいてもパナメーラは後発にもかかわらず「メートル原器」となり、他メーカーが「追いつき、追い越すべき」存在となり得るのかも、と思います(ポルシェはこれまでのコンセプトカーを見てもわかる通り、かなり以前からサルーンに対して興味を示しており、決してパナメーラでサルーンを始めて手がけたというわけではない)。

余談ではありますが、先日レクサスLC500に乗った時にも「LC500はスポーツクーペの新基準たりうる」と感じたのですが、その意味ではLC500と多くを共有する新型LSがポルシェ・パナメーラにとって「最大の」ライバルになるんじゃないかとも予想(なおレクサスブランドが発足し初代LSが発売された際、ポルシェのエンジニアがLSに乗った時に「これが我々の作りたかった車だ」と言ったのは有名)。

こちらはパナメーラ・ターボのリアウイングの展開と格納。
そのスピードがかなり早く、かつ動作音が非常に静か。
その上、複雑な動作を行っているにもかかわらず左右の動きに寸分の狂いがなく、展開完了時、格納時の「チリ」がドンピシャなのも驚きです。

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